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受験準備期間は本当は短い方が良い

最近の中学受験の準備は3年生の3学期ぐらいからスタートすることが多いようです。

これも10年、20年前に比べると1年早くなりました。以前は4年生の3学期からで充分だったはずです。

ではどうしてこうなったのだろうか?と考えてみると、これは塾がそうした面が大きいのです。確かに受験競争も激しくなった部分はありますが、それよりも塾間の競争で生徒を囲い込む競争が厳しくなった、と見た方がわかりやすい。早くから塾に来てもらうためには、カリキュラムが必要になります。実際にゆとり教育が進んでいた時期には、子どもの計算力や読解力が以前に比べて低下した可能性があったので、その分、塾で勉強してもらう部分があったかもしれません。しかし、どちらかといえば、「早く来てもらう」ためにそのカリキュラムが生まれ、やがて早く仕上げるためにカリキュラムは前倒しされるようになりました。

結果として子どもの受験準備期間は長くなったのです。

で、ここには2つの弊害が存在します。

1つは過度の刺激を受けること。本来、子どもたちの成長は勉強ばかりではなく、遊びや自分の得意な習い事をすることによって多方面の力が伸びます。社会との関係、あるいは人との関係の創り方もそういうところから得られる。しかし、受験勉強という単一の刺激ばかりが強くなっていくと、子どもの成長にアンバランスをきたすことがあり得るのです。しかも今は塾の中で競争が演出されている面が強い。毎月の試験でクラスや席が決まるということが、子どもにとって妥当な刺激であるか、と考えるとそれはやはり否定せざるを得ません。

一方で、この過度の刺激に耐えて上位に上りつめた子どもたちは、ある種「分」をわきまえない子どもたちになっていく可能性があります。本来、小さい時の教育の主眼は2つあって、子どもの長所を長い時間かけてじっくり見つけ出し、それを伸ばすことと、もうひとつはとはいってもやはり一人ができることには限界があるので、その中で自分が社会に対して持つ存在価値を決めていくことにあるのです。

例えば野球をやっている子はすべてダルビッシュのような力が備わっているわけではないので、その練習する過程からやがて「野球を楽しむ」ということの方に中心が移り、他の分野の才能を伸ばして自分が社会の中で果たす役割が時間の経過とともに決まっていけば自然です。

しかし、小さい時の競争に勝ち残り、中学受験でもトップ校に合格し、という中で「何でもできる」という錯覚に陥ってしまう場合があります。以前、開成の校長先生が「部活で他の学校に手痛く負けることは、子どもの成長にとって大変なプラス」と語っておられましたが、負けることはある意味「分」を知ることであり、そこからまた自分の価値が見いだされていく面もあるのです。

この2つの弊害を取り除き、子どもの心身の成長のバランスを保つためには、本来、受験準備期間はなるべく短い方が良いのです。

しかし、みんながそうだから、あるいは塾がそうなっているから、というので早く塾に入り、長い間過度の刺激を受けてしまって、自信を失う子どもたちも少なくありません。意欲がなくなってくるのは、非常に危険なことです。

その意味では、敢えてスタートを遅くするということも大事なことではないかと思います。勉強をすること自体は問題ではありません。家庭で計算をやったり、本を読んだり、文章を書いたり、という練習ができていればいいのです。

そしてある意味、力がついてから競争に入って行った方が子どもが刺激に対してある程度耐性を持てる分、バランスを失う可能性を少なくすることができるでしょう。

この辺は子どもの成長の様子を見ながら、親がしっかり判断していくべきことです。今は通信教材も、参考書や問題集もいくらでもあります。まずはパパママ塾でスタートして、やがてある程度自分で勉強できるようになってから塾に行くという方法もあながち、悪い方法ではありません。

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