私が独立して、初めて私の施主になってくれた方が、脳梗塞を再発して1ヶ月余の入院生活のうえで、天に還ってしまいました。 見ず知らずの私が、初めて事務所へお伺いし、二つ返事で計画の実行を同意してくれた方でした。
その計画が実施された以降は、親戚や知人に対して、側面的にフォローをしてくれ、私の生活地盤を作ってくれたのです。
独立した当時は、ゼロからのスタートでした。 8年間の事務所生活をしただけで、何の地盤・看板もなく独立しました。
仕事の目途もないのに、あえて精神的な余裕を持つために、テニスを朝早くから3時間ぐらい、へとへとになるまで、コートで知り合った今は心の友と、プレイしておりました。
小学校に通う通り道になっていたコート。 2人の子供はいつも、そんな私を見ながら学校に通っていました。
6月ごろに初めて計画の提案を持ち込んで、そのスポーツ施設が複数ある施設を見に、夏休みを利用して家族で見学に行きました。 提案の結果を早く聞きたいのですが、ぐっと我慢して、あえてゆっくりと施主を訪問しました。
結果的には、ふたつ返事で計画が遂行されました。 私の普段の姿を側面的に、それとなく聞いたところ、あの方は信用できますということに、なったそうです。
私は、当時、設計事務所に勤めながら、地域にあって、まちづくりのお手伝いをしていたのです。 建物作りでまちをつくるのではなく、人と人の結びつきをつくる街づくりをするんだ、という気持ちが強かったように思い出されます。
自分が自らそうしようと思ったわけではないのですが、周りがそうするように動いてしまい、結果的に私が、そのラインに乗ってしまうという感じでした。
何かとお世話になった施主が、天に還ってしまい、改めていま、その当時を思い出すのでした。
素直に表現するということは、作為を持たないことです。 座禅を通して、改めて、いつも自然体でいることの大切さ、素直な表現の大切さを、感じるのです。
龍之介さんは、建築士さんなのですね。それは、少し驚きです。もう少しゆったりしたお仕事をされているのかなとイメージしていました。姉が建築士でしたので、忙しいイメージがあります。忙しくてもいいお仕事ですね。人と人をつなぐ街づくり…とは、今、とても必要なことだと思います。