2018年1月にリリースしたgooニュースアプリ。
アプリのコンセプトである「大好きをもっとそばに」の実現に向けて、ニュースの閲覧傾向を可視化する機能「インフォグラフ」、音声ニュース「皆藤愛子のgoo Today!ニュース」といった機能を追加してきました。さらに7月5日にはAndroid版のUIを大幅リニューアル(iOS版は8月実施予定)。ニュースアプリが乱立している中で、担当ディレクターの松本さんは「gooらしく尖った方法で目立ちたい」と語ります。今回のUIリニューアルの背景と効果、さらにgooニュースアプリの今後についてインタビューしました。
メディア事業部 ポータルサービス部門 ニュースチーム 松本 龍
2015年にNTTレゾナントに入社。gooニュースチームでブラウザ版gooニュース
のディレクターを務め、機械学習によるニュースレコメンド「マイニュース」の導入に携わる。現在はgooニュースアプリのディレクターを兼任。
「好きなキーワードをフォローする」ことにあった落とし穴
――今回のリニューアルですが、どういった背景があったのでしょうか?
松本:
gooニュースアプリの大きな特徴として、「好きなキーワードをフォローすることで、そのキーワードに関するニュースを追い続けられる」というものがあります。例えば、ドラえもんが好きな人は、「ドラえもん」の関連ニュースが、阪神ファンなら「阪神タイガース」の関連ニュースが流れ続けるタイムラインを作るといった具合に。ですので、アプリをリリースした当初はユーザーがアプリをカスタマイズして、ユーザー自身がオリジナルのニュースアプリを作っていくことに重きを置いたデザイン設計をしていました。ただ、リリース後のユーザーレビューを見ていると、「どういうキーワードをフォローしていいかわからない」というコメントが複数あったんです。
――確かに、「好きなキーワードをフォローして」と言われても、どういうキーワードをフォローすべきなのか、すぐに思いつかないですね。
松本:
そうなんです。「好きなもの」をすぐに思いつく人って思っていたよりもいなかったんですね(笑)。ですので、キーワードをフォローしてニュースを読むという前提をまず見直すことにしました。どんなユーザーでも、まずは“ニュースを読む”という体験をできるものにしようと。
――“ニュースを読む”とは具体的にはどういった改善を行ったのでしょうか?
松本:
アプリを開いたファーストビューでブラウザ版と同じく、プロの編集が集めたニュースをアプリでも見られるようUIを調整しました。リニューアル後では、アプリを開いた瞬間に、注目ニュースがすぐに見られるようになりました。
今回のリニューアルで想定していなかった効果もあります。それは、リニューアル後のほうが1人あたりのキーワードフォロー数が高いということです。
――キーワードフォローを前提としない設計にしたのであれば、1人あたりのキーワードフォロー数が下がりそうですが?
松本:
ニュースを読むこと自体が、気になるキーワードを見つけることに繋がっているのだと思います。そして、ニュースを読むうちに、「このニュースをもっと知りたい」と思ったユーザーがキーワードをフォローしていっているんじゃないかと。つまり、「大好きをもっとそばに」を実現するためには、そもそもユーザーに自分が大好きなものが何なのかに気づいてもらう必要があったんです。急がば回れですね。
速さは正義
――UI以外での改善点はありますか?
松本:
先程の話したUIリニューアルは定性的な部分での改善ですが、定量的な改善として記事表示スピードを上げています。リニューアルしたAndroid版で3倍ほど表示スピードが上がっています。8月にリリース予定のiOS版のテストアプリでも同様のスピードが出ています。
――3倍はすごいですね!スピードの改善はどのように行ったのでしょうか?
松本:
APIの呼び出し回数を減らすことが一番大きな改善ポイントですね。以前はAPIを機能単位で呼び出していて、1つの画面を開くのに複数回のAPIを呼び出すことになっていました。リニューアル版では、このAPIの呼び出しを最小限にしています。基本的に1つの画面で1回のリクエストです。
また、アプリ内の情報はキャッシュしていくことを徹底しました。これによって、通信の無い状態でも以前に取得している情報を表示できるので、アプリ起動直後に記事が出るのをユーザーが待たないといけないという状態を無くしました。これで記事表示の体感スピードはかなり改善されたのかと思います。
――スピードの改善はユーザーにどういう影響を与えるのでしょうか?
松本:
スピードの改善は、アプリの使いやすさに直結します。特にニュースアプリは、ニュースの一覧ページと記事ページを行き来するのでページ遷移が多くなる性質です。ですので、そのスピードをどれだけ上げられるか、ニュースアプリを提供する各社が躍起になっています。
gooニュースアプリでは、リニューアル後、ユーザーの1日あたりのアプリ利用頻度が向上しました。スピードが上がることで、スキマ時間でも見てもらえるようになっていて、ニュースを小刻みに見てもらえるようになっているのではと思います。
UIリニューアル後、横ばいだった1ユーザーあたりの訪問回数が増加
他社とは違うパーソナライズを提供する
――今後、どのようにアプリを育てていきたいですか?
松本:
ニュースを通して、ユーザーが気づいていない発見を提供することができるアプリにしたいです。まだユーザーが知らないことを、ユーザーにあったかたちで伝えることをしていきたいんですよね。
各社のニュースアプリには機械学習よるパーソナライズが採用されています。今まで読んだ記事の傾向を学習して、この人はこういうニュースを読みたがっていると機械が判断して、ニュースを提示します。
gooニュースでもパーソナライズをやっていますし、今後も拡張していきたいんですが、他のニュースサービス?ニュースアプリ?とは違うgooらしいパーソナライズを考えています。
――gooらしいパーソナライズ?
松本:
はい。単にユーザーの好みだけに合わせたニュースのパーソナライズだと、芸能人の不倫騒動や炎上系のニュースばかり提示してしまうことにも繋がります。gooニュースは、メディアとして読者の世界が広がるようなファクトを伝えていけるようになりたいんです。
gooらしいパーソナライズをアプリでかたちにしたのが、インフォグラフです。自分がどういうニュースを読んだのか、そして自分がどういうニュースを読むべきなのか。それを常に確認してもらうことができるようになっています。今回のリニューアルでも、インフォグラフのUIをより使ってもらいやすいように変更しました。
インフォグラフでは自分が読んでいるニュースの傾向と、
「経営者」「スポーツ選手」などが読んでいるニュースの傾向を比較できる。
gooニュースアプリは、ニュースアプリとしては後発です。すでに市場にいくつものニュースアプリがあって、ライバルたちは手強いです。でも、後発だからこそ、そこに勝ち目があるとも考えています。後発だからこそ、既存のニュースアプリにはない、自分がどういうニュースを読むべきなのかを伝えるというユーザーへの価値を提供できるのではと。gooニュースアプリはまだまだ成長過程です。gooらしく尖ったスタンスでユーザーに面白がってもらえるようなアプリにしたいですね。
――ありがとうございました。
リニューアルして、さらに速く、わかりやすくなったgooニュースアプリ。ぜひ使ってみてください。