「手摺」考:補足・・・・「手摺」 と 「取っ手(把手)」

2015-04-09 10:02:05 | 形の謂れ
先回触れた「手摺」の話について、誤解のないように補足します。

先回話題にしたのは、階段など歩行の場面での「手摺」についてです。普通「手摺」というとき、他の場面での「手摺」もあることに触れないと片手落ち、誤解を生む、と散歩中に気が付きました

他の場面とは、すなわち、便所のブースや浴室などの「手摺」の役割のことです。
   こういう場面に使う場合も、一般的に、「手摺」と呼んでいるのではないかと思います。
こういう場面では、先回書いたような、「手を添える(沿える)」ことができればいい、という話は通用しません。
そういう時は、「手摺」は、「掴める」ことができないと役に立たないからです。
手で「手摺」を掴み、そして「手摺」を引っ張り寄せようとすることで、逆に体を所定の位置まで動かそう、とするからなのです。
引っ張り寄せようとしても「手摺」は動きませんから、逆に「体の方が動く」わけです。

したがって、そのように使われるためには、そういう場面の「手摺」は手で掴めることが必要条件なのです。

その意味では、「手摺」という語は適切ではありません。
日本語で相応しいと思われる語を探すと、「取っ手(把手)」という語があります。「手で持つこと」「手で掴むこと」のための「部分」を指す語です。
英語では handle になります。bar も使うようです。


もちろん、こういう場面でも、単に「手を添える」ことができればいい、という人もいます。
しかし、ここでは、「容易に手で掴めること」が必須条件になるのです。具体的には、「掴みやすいこと」「滑りにくいこと」などが要件になるでしょう。
   手で掴むことの不自由な方は、こういう場所での自力だけでの行動は無理で、介護が必要になるわけです。

   私自身のリハビリ病院での体験で言えば、ステンレスパイプの「手摺」:「掴み棒」は、石鹸の付いた手が滑りやすかった記憶があります。
   また、パイプ径はなるべく細い方がいい、と思いました。そうすれば、パイプを「握る」「しっかりと掴む」ことができるからです。
   もちろん細すぎてもダメ。実際に試してみる必要があります。「握る」とはどういう様態なのか知るためです。

   鋼管の「手摺」に、竹の節のような、突起をつくりだしているアアルトの設計があったように思います。掴んだ手が滑らないようにする工夫でしょう。

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