偽装・仮装・・・・フォラム: forum の語義が問われる

2009-11-22 18:11:03 | 「学」「科学」「研究」のありかた
[註記追加 23日 7.45][追記 追加 24日21.16]
この記事へと思われるコメントが2007年の記事に入っていましたので、末尾にコピーし転載しました。

20日の記事末尾に「最新情報」と名づけて「付録」を載せました。以下に再掲します。
それには理由があります。

   写真は、自然の理に生きる野鳥たち:ツグミ(昨年の写真)

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最新情報   

ブログを読まれている方から、11月19日の参議院・国土交通委員会で行われた、建築基準法の「伝統工法」の扱いに関する質疑の内容をお教えいただきました(審議の模様のビデオ)。

副大臣答弁で、現在の国土交通省内の「伝統木造に関する委員会」に中立性を疑われる委員がいる、構成を見直す必要がある、との注目すべき発言がありました。
正式な議事録は10日ほどかかるそうですが、聞いた内容の概要は下記。

  馬淵国土交通副大臣:
   伝統工法の実大実験を進めている委員会のメンバー構成の
   中立性には疑問があります。
   10月10日のシンポジウムで、委員から
   「絶対に、伝統工法は耐震性が劣る」
   「伝統工法を建てる施主には、死ぬかもしれませんよと説明する必要がある」(*1)
   という発言がありました。
   委員会のメンバー変更も含めて検討したいと考えています。

なお、*1は、坂本功氏の発言とのこと。
このニュースをご教示いただいた方は、同シンポジウムに出席し、直かに耳にしています。
氏のメールにその間の事情が書かれていますので、差し支えない範囲で、以下にコピーします。

  10月10日のフォーラム(上記のシンポジウムのこと)には私も参加しました。
  ・・・・・・・
  フォーラムでは、設計法に関し、「実務者」から「方向が違う」との発言が再三なされていました。
  大橋(好光)氏(木を活かす建築推進協議会 代表理事)は「のらりくらり」と言う回答イメージでした。
  最後に、まとめと言うことで、坂本(功)氏が登場し、それまでの議論にはまったく出てこなった内容で、
  「伝統的木造構法は、安全性が低い、死ぬかもしれませんよ、ということを建築主に説明してから、
  やるしかありませんね」
  と言いました。
  私は、「何これ?」でした。「安全性が低い」との議論は皆無であったにも関わらず、
  議論とは関係なしに《まとめ》を持ってくる御用学者の姿を目の当たりにしました。
  ・・・・・・・
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シンポジウム、フォーラム、というと、誰もが「公共」「公開」「オープン」というイメージを抱くと思います。
なぜなら、その語の意味を、大方の人は知っているからです。
その語の意味は、手元の辞書では下記のようになります。

  symposium:同じ問題についての意見や研究結果の発表会。討論会。
  forum   :公共的な議論(討論、意見交換)の場、公開討論会。

おそらく、その会に出席した副大臣も、当然ながら、このような意味と理解していただろう、と思います。

ただ、私は腑に落ちなかったので、そのフォラムに参加した情報をいただいた方に、主催者はどこだったのか、問い合わせました。
主催者として、三者の名が出ていますが、主体は「木の建築フォラム」というNPO法人であることは明らかです。
それを教えていただいて、すっかり納得しました。疑問が氷解したのです。

「NPO法人 木の建築フォラム」は数年前につくられ、その代表理事、理事は、ネットで調べればすぐ分りますが、代表が坂本功氏、以下先ずほとんどは例の倒壊実験を主宰した 「実験主催者御一統」様です。名前を挙げれば、大橋好光氏、安藤邦広氏(茅葺に詳しい。先年耐力壁扱いを認められた「落し込み板壁」工法の推進者)、三井所清典氏、河合直人氏・・・・・。

一般の方々は(副大臣を含めて)、語義の通りの「公共的な議論(討論、意見交換)の場」と思って参加されたかもしれませんが、実は「NPO法人 木の建築フォラム」の、いわば単なる「例会」に過ぎなかったのです。
ですから
   「絶対に、伝統工法は耐震性が劣る」
   「伝統工法を建てる施主には、死ぬかもしれませんよと説明する必要がある」
という発言が出ても、少しもおかしくないのです。彼らがその「思想」から脱することは、今後とも不可能でしょう。

   註  [註記追加 「例会」と何故言うか 23日 7.45]
      多くの方は、「フォラム」の名から、第三者的、中立的な機関の主催する
      中立的・公正な会議を想像するでしょう。
      「10月10日の《フォラム》」開催にあたっては、「国交省 木造住宅推進室」
      「(財)日本住宅・木造センター」の「強い支援」があります。     
      「国交省 木造住宅推進室」そして公益法人「(財)日本住宅・木造センター」は、
      かねてより「木の建築フォラム」と深い関係にあります。
      つまり、一身同体・一心同体の「なかよしクラブ」。
      今は「木を活かす建築推進協議会」も「なかよしクラブ」に加わっています。
      ゆえに、この「会議」「会合」は、「なかよしクラブ」の「例会」なのです。

      中立性、透明性は、はじめから存在し得ない、「為にする」会議。
      それをして「フォラム」の名を付ける。偽装です。

      考えると、この「悪知恵」には怖くなります。
      そこまでして「日本の木造建築」を衰退させたいのは、
      「文化」を死滅させたいのは、何故?動機は何?         

   註 「伝統工法を建てる施主には、死ぬかもしれませんよと説明する必要がある」との発言を、
      国交省・木造住宅振興室長は「単なる私的な発言」だから問題視するのはおかしい
      と語っているとのこと。
      この方は、現在50代のはじめ、東京大学出、どのような経歴の方か調べています。

ところが、「公共的な議論(討論、意見交換)の場」と思ってその会に出られた方々:おそらく大部分はあたりまえの感覚をお持ちの方だと思われます:は、この発言に違和感を感じ、「何それ?」、「この人たちは何?」ということになるのです。

フォラムのような普通名詞を会の名称にするのはもとより、自分たちがいわば「勝手に」開く会合にもその普通名詞を付け、あたかも「公共的な議論(討論、意見交換)の場」の如きを装うのは、道理・条理をわきまえない行動だ、と考えざるを得ません。  

会の理事の大半は、皆さん建築関係の「研究者」。このような語の使い方をして平然としていられる、などというのは、私には理解不能です。
以前、ブログを読まれている方が「建築の研究者は、理系ではなく利系である」と喝破されたことを紹介しましたが、まさにそれがここに具現していると言えるでしょう。
科学を装って、人をだましてはいけません。


お断りしますが、私は、こういう同人的NPOの存在や(名称は?ですが)、あるいは「研究者」個々人の存在や人格を非難、否定しているのではありません。
私はただ、筋道・条理は通しましょう、理系なら理系らしく、「利」に走らず「理を究め」ましょう、と言っているに過ぎません。
「理を究めること」、これが science なのです。

なお、「10月10日の《フォラム》」では、「伝統工法の設計指針(案)」が配られているそうです。簡単に言えば、日本の木造建築の「総《在来工法》化」策の指針です。
この資料もいただいていますので、おって逐一、その不条理を解き明かすことにします。

しかし、誰がそんなもの:「伝統工法の設計指針」:の作成を、選りに選って彼らに頼んだのでしょうね。
しかも、歴史という「壮大な実験室」の存在を忘れ、たった10回程度の震動台実験でつくってしまう。拙速を絵に描いたような話です。なぜそんなに急ぐのか?

「国交省」が、日本の木造建築の研究を、なぜ、このような人たちのみに依頼しているのか、この点をも問われなければなりません。
たとえば、日本の木造技術に詳しい建築史の人間が一人も係わっていない、などというのは、片手落ちもいいところです。
「国交省」の「文化観」が問われるでしょう。

そして、「国交省」、「(財)日本住宅・木材センター」、「NPO 木の建築フォラム」「一般社団法人 木を活かす建築推進協議会」の「微妙な関係」は、会計検査院の調査対象、あるいは「事業仕分け」の対象になり得る「資格」が十分にあると言ってよいでしょう。「NPO 木の建築フォラム」「一般社団法人 木を活かす建築推進協議会」のメンバーを見たら呆れるはずです。

あちらこちらから「この半世紀、日本の木造建築は理解されてこなかった」という声を挙げなければなりません。
歴史を正常に戻しましょう。
それは私たち普通の人間の仕事なのです。
是非そういう声を、たくさんお寄せください。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

[追記 追加24日21.16] 

おそらくこの記事をお読みになって書かれたと思われる丁重なコメントが、大分前2007年の記事に寄せられていましたので、以下にコピーいたします。なお、このコメントへの私のコメントもコピーしてあります。
いずれも、原文のままですが、読みやすいように段落は変えてあります。

「伝統工法を知る旅」=箱木千年家・いの一 (気仙大工) 2009-11-24 06:16:29

   下山眞司先生。岩手の大工菅野と申します。
   このたび11月2日付けブログにコメントを戴きありがとうございました。
   時々先生のブログを読ませていただいております。先生の奥深い説明に常に酔っているものです。
   多くの木造建築を語る研究者先生がおられますが、
   現場人間としてはあくまでも野球の外野スタンドの話が大半です。

   自分は多くの研究者先生のご教示も受けました。
   木造建築研究フォラムにも発足当時から参加しました。現在は発足当時の趣旨からかけ離れ、
   NPO設立時点で安藤邦弘先生に発起人依願されましたが脱会しました。
   現場人間として先生方の姿勢に何時も疑問を感じ、辛い批評で「ブログ」発信しています。
   今回「伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験検討委員会」下部「分類TT」にも参加しておりますが、
   余にも詭弁が多く将来の伝統工法を考えると大きな疑路に経っていると常々感じているのですが、

   此処で短気を起こし多くの現場の声が届かないのではと考えるのです。
   下山先生のように現場人間が理解できる分析に感謝しておりますので今後ともよろしくお願いもうし上げます。

権威に臆せず、権威に媚びず (筆者)  2009-11-24 08:24:40

   多くの現場の方々が、日本の木造建築が良い方向に向うのではないか、と期待して、
   「フォラム」に賛同・出席し、また「実験」に協力されていることは、かねてから知っています。

   しかし、私は、それに常々危惧をいだいてきました。
   建築がらみの《学者たち》の「習性」として、
   菅野さんが言われるように、現場の声を詭弁でごまかすのが目に見えているからです。

   あなたがたは「フォラム」に参加し、「実験」に協力したのだから、
   「フォラム」の「結論」や、「実験結果の分析」とそれに基づく「指針」に反論するのはおかしい、として、
   「現場の声」あるいは「異議」は、封じ込められるられるのが明々白々だからです。
   現に今回の「指針」の一件がそれを示しています。

   長い歴史を継承してきた日本の木造建築を、
   たった半世紀足らずの《学者たち》の「研究」で反古にされてはなりません。
   営々と築かれてきた田畑は、一日で壊すことができます。しかし元に戻すには、また長い時間がかかります。
   今からでも遅くはありません。多分、かなりの時間がかかるかと思います が、
   長期戦で何とか食い止めたいと思っています。

   そして、そのためには、現場の方々が、
   権威に臆することなく、そして権威に媚びることなく、
   異議を発し続けなければならない、
   本物をつくり続けなければならない、と考えています。
   皆で、各地域から、大きな声を出しあいましょう。

追伸:権威に臆せず、権威に媚びず (筆者)   2009-11-24 08:59:06

   多くの方々は、学者さんたちは、学者なんだから、
   公正・公平なものの見かたができる人たちだ、と思っています。
   でもそれは大きな誤解です。
   私がこれまで見てきたかぎり、「名を売る」ことに励まれる方が結構多いのです。
   一言で言えば、「狡すからい」。特に建築がらみの人は・・・。つまり「利系」ということ。
   お気をつけください。
コメント (2)
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