上の写真と図は、1900年代初め、ライトが設計した住宅。
この頃のライトの住宅としては「ロビー邸」が有名だが、これはその前の設計で、ロビー邸の構想は、この建物で醸成されたらしい。
1900年代前半のライトの建物:住宅で目に付くのが、壁面や天井を走る化粧縁:付け縁である。trimと呼ぶようだ。平坦な面が、それによって表情が一変する。
この建物ではそれ程でもないが、ときに「付長押」を思わせる例もある。
この建物は、いわゆる「2×4」工法。したがって、表面に表われる部材は、すべて「張り物」であることが、下の詳細図で分かる。
日本の建物の場合、いわば張り物にあたるのは「付長押」ぐらい、あとは大半が構造部材であるから、その点、ライトのつくり方とは異なる(昨日の「光浄院」の室内写真参照)。
なお、ライトは、煉瓦造でもtrimを多用した例をつくっている。
註 最近、重要文化財に指定された「自由学園・明日館」(1927年)も、
2×4工法である。
山手線の目白駅から歩いて直ぐ。公開されている。
ライトの協働者、遠藤新の設計した講堂も観ることができる。
しかし、ライトが帝国ホテルをつくって以来(1923年)、ライトの建物が日本人に好まれているのは、この見かけの上の「趣き」のせいではないだろうか。この頃の建物に、ライト風の建物が多い(旧・官邸など)。
そしていまなお、ライトもどきは、住宅メーカーの建物でも見ることができる。もっとも、空間はライトのつくる空間に似ているとは言いがたい。
単なる形体の模倣に終ってしまうのは、おそらく、ライトは trimの線の持つ意味を十分に考え(ということは、空間の意味を考えることなのだが)、 trimの幅や面からの出、形状を決めているのに対し、いわば《ライト様式》として捉えているからではなかろうか。
写真と図は、FRANK LLOYD WRIGHT MONOGRAPH 1907-1913より