閑話・・・・西欧の軸組工法-1

2007-02-21 00:40:53 | 建物づくり一般

 上の写真と図は、スイスの現存する18世紀の木造建物群とその軸組分解図。ドイツの建物に類似している。
 「筋かい」を導入するとき、これらの事例を参考にすれば、現在のような事態にはならなかったのではないか。
 しかし、近代化=西欧化を使命とした人たちは、西欧を訪れても、こういう「無名の」建物は見向きもしなかったのだ。自国にあっても、それは変らない。昨年12月26日に、日本の実情を皮肉交じりに論評した遠藤新の言葉を紹介した。要所を再掲する。

 「・・・かつてブルーノ・タウトは桂の離宮を絶賛したと聞いております。そして日本人は、今さらのように桂の離宮を見直して、タウトのひそみに倣うて遅れざらんとしたようです。しかし私は深く信じます。タウトは桂離宮に驚く前にまず所在の日本の百姓家に驚けばよかったのです。そしたら日本に滔々として百姓家を見直すということが風靡したかもしれませぬ。従来とても我々の間に『民家』の研究という種類のことはありました。しかし、この研究には何か『取り残されたもの』に対する態度、『亡び去らんとするもの』に対する態度、したがって、ある特殊の趣味の問題として扱われているのが現状です。・・・」
 もしかして、(法令規定以前の)日本の木造技術(いわゆる伝統工法)は「たぐい稀な技術だ」と異国の偉い人に褒められると、少しは考え直すのかも・・・。

 ところで、スイスの工人たちは、あたりまえだが、日本の工人と同じようなことを考えている。
 要点は、柱や斜め材を、何段もの横材で縫うこと。これは、日本の差物や貫の考え方と同じ。違うのは、彼の地では日本ほど開放的にする必要がないこと(だから、壁が多く、そこにはすべて斜め材が入れられる)、そして、材料が針葉樹か広葉樹かという点だけだろう(広葉樹は堅木のため、短い枘でも込み栓が打てている)。軸組も基礎に据え置くだけだ。
 日本の「耐力壁依存工法」(柱を横材で縫うことを考えていない)の理論家たちは、このような共通点をどう見るのだろうか。
 聞いた話だが、上の図のように、「筋かい」の途中を横材でつないだところ、「筋かい」の効き目がなくなるからダメ、と言われたという。

 私は実物を観たことはない。書物で観るだけである。
 上の写真、図は“Fachwerk in der Schweiz”(Birkhauser刊)からの転載。 

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