RC・・・reinforced concrete の意味を考える-2:補足

2006-11-17 16:48:06 | RC造
 
 RC・・・reinforced concrete-2の図面が見にくくなってしまいました。
 実施設計図から、多目的ホール2階平面、同断面図のコピーを載せます(編集加筆なし)。

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RC・・・reinforced concrete の意味を考える-2

2006-11-17 13:07:12 | RC造

 先のM小学校の児童玄関(1階)・図書室(2階)の北側に、2階分吹抜けの多目的ホールがある(2階は吹抜けを挟んで両側にギャラリー:図面)。

 この建物の断面は、幅7200㎜の本体(上屋)の両側に、幅2400㎜の下屋を付けた形で、棟全体は切妻形になっている(外観写真)。これは、[上屋(身舎・母屋)+下屋(庇)]という伝統的な架構方式の応用である(この方式は、洋の東西を問わず、古来各地にある)。

 下屋の高さは、本体:上屋より、一段低く、その段違い部分を採光・通風のための欄間として利用。
 上屋、下屋それぞれにRCの深い軒を設ける。軒は、軒先の立上がり部を含めた全体が構造体である(梁と逆梁を併用)。それがそのまま建物の外観に表れる。
 写真は妻側の正面(児童玄関・ポーチが1階、図書室・バルコニーが2階)。

 多目的ホールの大きさは、長手方向は[5400+8100+5400]計18900mm、短手は[2400+7200+2400]計12000㎜。児童玄関・図書室にならえば、1階の長手方向の上屋柱列に、上記スパンごとに柱型が並ぶことになるが、ホールの性質上、それを除きたい。
 そこで、2階ギャラリーの手すり部分を利用して18900㎜を跳ばし、1階の中間の柱型を取り去ることにした。
 手すり分をRCでⅠ型断面の梁の一部と考え、梁の中途を側柱からの片持ち梁で受け、さらに、手すりの中途の360mm角の補助柱と、両端部1800㎜の補強柱付きの壁で屋根梁と床梁とをつなぐ。
 つまり、ギャラリーを構成する床スラブ(厚180㎜)、屋根(=天井)スラブ(厚120㎜)、柱、上下の梁、下屋柱からの片持ち梁、手すり・・これら各部の一体的な協力によって、言い換えれば、いわば筒状の立体で、ギャラリー部分を支えよう、という考えである。これは、『鉄筋により補強されたコンクリート』だからこそできることと言ってよい。
 断面図のように、上屋柱の上部には、上屋の梁と下屋の梁と、梁が2段設けられるが、下段の梁は、木造の「差鴨居」様の働きをすると考えられるかもしれない。

 なお、2階のコンクリートの打設は、先ず下屋の梁の天端までを打ち(柱に打ち継ぎ目地がある)、次いで、その上の上屋部分(上屋内側の360mm角の補助柱も含む)を打つ、という工程をとった。

 腰壁部分をRCにしたのはギャラリーの手すり部だけ。
 360mm厚の壁をくり抜いた構造体の開口部分、あるいは腰壁は、主にレンガ1枚積(場所によってはコンクリートブロック積)で開口の大きさを調節している。
 要は、「必要のないところまでRCにする必要はない」という考え。ゆえに、《耐震スリット》の出番もない。
 また、2階床スラブは、外部に面する箇所では、「水切」のために、梁外面より外に120㎜:柱外面まで出している(「水切」は、壁面の汚れを防ぐ手段として有効である)。

 なお、構造解析・計算は、竹園東小、江東図書館と同じく増田一眞氏にお願いしている。

 図は、実施設計図(手描き)のコピーを編集したもの。
 断面図上の[1FSL]とは、[1階床スラブレベル]の意。
 実施設計図の基本寸法は、すべて構造躯体の位置で指示し、仕上げ位置は、躯体からの寸法で指示している(そのため、実施設計図だけでも施工が可能)。
 写真は、竣工写真より(正面は筆者撮影)。
 ハンチ型の壁と手すり部の配筋、基礎地業については、あらためて紹介します。
 また、M小学校では、体育館の屋根に、山形鋼(アングル)によるトラス・アーチ梁を使ったので、これもいずれ紹介します。
 
コメント (7)
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