「原発停止で多額の貿易赤字が出るとしても、豊かな国土に国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失である」
これは福井地裁の樋口英明裁判長が5月21日に出した、大飯原発3、4号機の運転再開を認めない判決文に書かれていた文言でござる。
日経新聞などは以前「原発が止まったせいで燃料の輸入が増えて貿易赤字が拡大している」と申してました。
いまはさすがに大ウソと分かってそうはいってませんけどね。
事実、燃料の輸入は増えてないそうだ。
貿易赤字が増えてるのは、円安による輸入価格の上昇と、国内需要の拡大、半導体や携帯電話など企業自身が国内生産から撤退した製品の輸入の増加、これらが原因でござる。
話は戻りますが、いまも15万人もの人々が家にも帰れず「流浪の民」と化しているのが福島の現実でござる。
「豊かな国土に根を下ろして生活できなくなった」ことこそが「国富の喪失」だとしておる今回の判決、どっからどうみても、正しいのではないのかね。
さらにいえば、現役のキャリア官僚で小説「原発ホワイトアウト」の作者である若杉冽さんは、今週号の週刊現代で古賀茂明さんと対談し、こう述べておる。
「原発が全部止まったら日本は破滅だとまで言われていたのに、景気は好調で、消費税も10%に上げても大丈夫という状況になってきている」
古賀さんは「4月末にテキサスの大手電力会社FEHが破たんしました。負債規模は4兆円です。…同じ基準で考えるなら、関電や九電、北電は潰してしまった方がいい状態」。
なのにニッポンでは、こと電力会社については市場原理とは無縁でござる。
ありゃ、ニッポンは共産国家か???
経済通を標榜する日経新聞さま、市場原理に乗っ取れば、ニッポンの電力会社の実態は、存続していいほど健全かね?
我がニッポン国は資本主義国家ですから、経営状態の悪い企業はちゃんと破たん処理すべきでしょう。
社会主義国家でも共産主義国家でもないのです。
事実上債務超過の東電を、そもそも企業として存続させておること自体、アメリカなら考えられない異常事態。
この国の「電力会社は宗教法人か、いや旧ソ連のコルホーズ?ソホーズ?」か。
いや、かつて大蔵省が銀行にしておった「護送船団方式」でござる。
かつて銀行は潰せないとしておったけど、たくぎん、山一證券は破たんさせ、護送船団方式は終焉を迎えましたけど…
いまだ電力会社は護送船団方式で守られてるんだわ。
古賀さんは「東電を破たん処理して、政府が支援する条件として発電所を全部売却させていれば、とうに発送電分離はできていたはず」と語ってます。
発送電が「しっかり分離」されれば、発電コストは大きく下がります。
くどいようですが、ニッポンは資本主義社会です。
だから、儲かるとなれば、あっちでもこっちもで風力、波力、太陽光に木質バイオマスの発電業者が林立し、競争が促され、当たり前ですけど電気料金は安くなる。
ところが電力の自由化は出来るだけ阻止したいのが既得権益を持つ電力会社。
なかでも、廃棄物問題と過酷事故の危険さえ目をつぶっておれば、大いに儲かる原発はなんとしても再稼動したいということだ。
安倍総理はニッポンの原発について「世界最高水準の安全性」と大ウソをこいて、再稼動を進めようとしております。
以前も書きましたけど、欧州の最新原発には「コアキャッチャー」というものが付いております。
ようは過酷事故が発生しても、「メルトダウンはしない」のが現在の世界最高水準。
これ、とんでもないコストがかるのだといいます。
格納容器の下にあるコアキャッチャーで、融けた核燃料を受け止めるのです。放射性物質が地中深く流れ出ないのが最高水準です。
ではありますが、ニッポンにコアキャッチャーの付いた原発は1基たりともありません!!
だから、世界最高水準の安全性は単なる大ウソでござる。
しかも福島で人災ともいえる過酷事故を起こしたのが、ニッポンの電力会社のトップに君臨する東京電力なのです。
あとは推して知るべしでしょう。
砂糖にアリが群がるように、原発には経産省の官僚から清掃業者までが群がります。
電気料金を支払う国民以外は、みんなが儲かるシステムこそ原発の実態です。
しかも電力会社は、資本主義の論理を無視し、経営破たんしても存続する摩訶不思議。
そして原発は、一旦事故を起こせば、国富を失い、10万人を超える人々が流浪の民となるのです。
百歩譲って、原発は今に至るニッポン経済の発展には大きく寄与してきたけれど、もういい加減、その時代は終わったとおもいますけど、どうよそのあたり???