読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

政府は必ず嘘をつく アメリカの「失われた10年」が私たちに 警告すること  堤 未果   角川マガジンズ

2012-03-15 10:30:35 | 読書


「ルポ 貧困大国アメリカ」の著者、堤未果氏の最新レポート。
震災後の日本と、911以後のアメリカを重ねて眺めた。

アメリカはこの十年で貧困層を3倍に拡大させた。資金力をつけ
た企業が政府に癒着し(コーポラティズム)、彼らに都合のいい
政治を行わせたためだ。


911後、アメリカはどのような道をたどったのか。日本の
現在と照らし合わせて見ると。

・原発事故について

911の折、救助作業に当たった人たちに健康被害が生じている。
周辺住人にも症状が出た。主に呼吸器系の病気である。政府は当
時「安全だ、ただちに影響はない」と言っていたはずなのだが。

倒壊したビルの粉塵に、アスベストなどの有害物質が含まれてい
た。政府は絶対に本当のことを言わない。生じた健康被害にも、
補償を行うことはない。大変珍しい鼻のがんでも、911の粉塵
と「因果関係はない」と言い切られてしまう。

日本人にも、政府とはうそをつくものだと伝えたい。

原子力村と呼ばれる利権の集まりは、大きな力を持っている。国
際機関への影響力も決して小さくはない。WHOにも民間資金が流れ
こんでいることを忘れるべからず。

(チェルノブイリの被害が過小評価されている理由がそれだ。)

・市場化の動き、TPP

ハリケーンカトリーナで被害を受けたルイジアナ州。ここでは
「過激な市場化」が行われたのだという。復興特区の名の下に、
大資本の参入を容易にした。地元企業の復興は遅れ、地元民の雇
用が大幅に失われた。

日本でも、仙台の漁港で同じ動きを見ることができる。「地元漁
師を七名含む」民間会社に、漁業権が与えられようとしている。

アメリカではまた、教育においても大きな改革がなされた。「落
ちこぼれゼロ法」によって、無能とみなされた教師は解雇される
ことになった。

ルイジアナでは、災害後公立高校が機能しなくなり、かえって就
学率の低下につながった。

TPPについては、アメリカの労働者はかつてのNAFTAの影
を見、日本人に警戒するよう呼びかけている。

NAFTAとはアメリカ、カナダ、メキシコの三カ国で結ばれた
自由貿易協定のことだ。締結以前は、安い輸入品が買えて、暮ら
しが楽になると言われていた。

だがふたをあければ、企業はこぞって賃金の安いメキシコに工場
を移し、アメリカ人の雇用は大幅に減ってしまった。

儲けるのはいつも企業だけ。

日本全国でがれきを受け入れようという声があがっている。だが
それは、助け合いなどという美しいものではなくて、産廃利権に
からむものだと気づいているのだろうか。

東京都が真っ先に手を上げたわけは、東京電力の関連会社がその
仕事を請け負ったためである。



ウォール街デモに参加した若者がこう述べている。「格差のよう
な単純な問題じゃないんだ。1パーセントの超富裕層が、99パー
セントに負担を押し付けて利益を得ている、そんな狂った現実に
反抗しているんだよ」



グローバリズムによって、世界はどんどん狭くなる。企業の活動
は多国籍に及び、国家の枠を超えて利益を得、権力を得ている。