日々礼讃日日是好日!

三輪の里は移ろいの季節

 寒かったきざらぎの日々も晦日となり、明日からはもう三月弥生の草木萌え動く季節だ。この月はじめは日中が澄んで晴れたぶん、夜が冷え込んで厳しかった。日本海側とくに北陸地方は、例年以上の大雪が降り続いていた。故郷の空き家になってしまった実家、その屋根の積雪がひどく気になっていたら、近所の方がその様子を連絡をくださったので、あわてて雪下ろしの作業を手配してもらった。

 昨晩の帰り、頭上の夜空には、全体の七割くらいに満ちてきた上弦の月が微笑んでいる。その右隣に目を凝らすと、オリオン座三連星がみえた。もう天空は、冬から春に向けての星座配置へと移りかわりつつあるなあ。
 ちかくの散歩道や庭に咲く花も、可憐で芳しく揺れる水仙、清楚で馥郁とした香りの梅と咲いてきて、いまはマンサクやサンシュユの霞のような黄色、早咲きサクラの濃い桜色が主役となりつつあるころ。

 この中旬は、ひさしぶりにまほろ郊外は三輪の里へとでかける。このあたりは武蔵と相模の境にあたり、小田急線が近いというのに、まだのどかな里山風景が遺されていてほっとする。
 車でこどもの国手前から鶴川へと向かう道をのぼり、右手にTBS緑山スタジオを見ながらいくと、岡上営農団地から一気に眺めがひらけて爽快な気分になれる。それにしても、全国放送のドラマの数々が、いまは高級住宅地ともなった、この里山に忽然と出現するスタジオで制作されているなんて、なんとも不思議な感じがしてならない。大学生時代の春休みだったか、ここでアルバイトをしていたことがあって、本社のある赤坂とを往復していたのが、ほんとうに夢のように思える。
 
 高蔵寺で車をとめて、山門からこじんまりした境内をひとめぐりする。このあたりでふたつある真言宗の寺で、よく手入れされた境内には、ここを昭和のはじめに訪れた北原白秋の詩碑がたっている。ちかくに住んでいた白洲正子の散歩道でもあったという(“鶴川の周辺” 「鶴川日記」1979年 より)。寺の向かい側は、三輪の里山景観地で美しい風景がのこっている。もうじき、しだれ桜や菜の花が咲きだすとちょっとした桃源郷といった風情があって、これまでも何度も訪れてきたけれど、いつも変わらず心がなごむのは、田舎の暮らしを思い起こさせるからだろうか。
 畑地のさきにはちいさな社の七面堂が祀らていて、どことなく中世のもののあわれ、まほろばの里のような気配がだだよう。この一帯が私有地なのであまりつまびらかにはされていないが、戦国時代の沢山城址跡なのだそうだ。とにかく静かでひっそり人知れず、といった雰囲気がよい。

 グリーンのデミオのタイヤを新調したばかりなので、弥生の花のさかりの季節に訪れよう。それももうすぐだ。


 中世の山城跡にひろがる三輪の里山風景、ここは奈良三輪とつながる。


 高蔵寺境内、弧カムリ姿の七地蔵(2018/02/17 撮影)
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