仁術と算術

現役外科医,株を語る.たまに手術も語る.

バーボンもいい

2007-04-23 | 繋がる人
学生の頃.
ずっと後になって,あの頃がバブルの名残りがまだ残っていた時代だと知った.
あの頃.
内装に金をかけたバーで僕がよく飲んでいたのはバーボンウィスキーのロックだった.

金のない学生でも,大学の公式な飲み会ではサントリーオールドの水割りを飲んで,『あー,俺って大人になったな』気分が味わえたあの頃.

僕が,彼女にせよ,そうではないにせよ女の子と二人でバーで飲む時は決まって,ジャックダニエルとかIWハーパーとかをロックで.
これが僕のスタイルだった.

カクテルなんて何をどう注文していいかよく分かんないし,名前だけで適当に注文しようものならグラスに花がさしてあったりして恥かいたりね(^^;
バーボンをロックで頼むのは,どんな店でも注文のフレーズが同じで済むから便利なのだ.
『東京ラブストーリー』ってドラマで江口洋介が演じる,愛媛から東京に出てきたボンボン医学生.
彼が行きつけ(学生の分際で!)のバーで決まって注文する,『ジャックダニエルを...ロックで.』
これが僕がバーでウィスキーをロックで頼む原点だ(^^)
ウィスキーのロックなんて飲めない女の子に『お酒強いんだね』と言われて,『こんなの普通だよ』って言うのがカッコよかった.

バブルがはじけて,なんでもかんでも金さえ出せば格好がつくという時代ではなくなって.
『本物』が分かる目を持ってて,本物に金をかけることが粋だと思うようになって.
30歳を過ぎた僕は,バーボンはやめてスコッチを飲むようになった.
スコッチは,なんといってもバーボンよりも遙かに歴史が古い.
なんとなく喉や鼻がイガイガする刺激があるバーボンよりも,十年,二十年かけて熟成された甘い薫りのスコッチ.
特にスペイサイドのシングルモルトを,ツマミも無しにじっくり味わうのが,もう中年とも言われかねない自分にピッタリのような気がした.


去年,そういう僕の行き方とは全く関係のない人と一緒に飲む機会があって.
その人は,どんな店で何を食べようとも酒は『カシスウーロン』.
かしすうーろん??
そんな気色悪いものを飯と一緒によく飲めるな,と思った.

あれから一年経つが,その間にカクテルなるものを色々と飲んでみた.
そして自分でも予期しなかったことだが,今では僕はバーに行くと必ずカクテルを注文する.
それまでの僕にとって,あるバーに通うかどうかは,ロケーションと雰囲気との相性が一番大事だった.
本当に行きつけにする店はそれプラス,バーテンダーの適度なトークと客との距離をどう保つか,これがピッタリ来る店.
そういう意味では,酒の味はあんまり変わらないと思っていたのかもしれない(だってロックしか頼まないから).

カクテルを頼むようになった一番の理由は..
行きつけのバーで僕がカクテルを頼んだ時,『珍しいですね』と言ったバーテンダーが,明らかにいつもと違う笑顔を見せたこと.
いつもは年代物のスコッチを丁寧に良いグラスで良い氷に注ぐという,一点集中のバーテンダーの手の動きが,
こんどは冷蔵庫から果物を取り出してカットしたり,僕が飲まないバーボンや得体のしれないリキュールを注いだり.そして僕の方をチラリと見るか見ないかの視線で明らかにこちらの感じ方を計っている.
その目とほんのわずかに上がった口角.
なるほど.カクテルというものは,こんなにバーテンダーを燃えさせるものなのかと思った.
これは『女の飲み物』にしておくのは,もったいない!ってね(^^).

ここ数日,
確実に暖かくなって.
寒がりの僕でもさすがに暖房をつけることは無くなり.
いま僕の冷蔵庫には,バーボンとカシスのリキュールが入っている.
体に優しい季節になったから,バーボンのイガイガ感も良いかもしれない.
カシスの甘ったるさも今の僕には必要なのかもしれない.

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