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仁術と算術

現役外科医,株を語る.たまに手術も語る.

命は地球より重い

2007-04-04 | 僕のブログが出版されるなら
もうかれこれ20年も.こんな言葉は聞いていないような気がする.

僕が子供の頃,それは当たり前のようにテレビ広告で放映され.
『命を大切にしましょう』と学校の先生から諭されていくうちに.
虫一匹など平気で殺していた幼児であった僕が,いつしかゴキブリすら殺すことを躊躇うようになっていた.

しかし,あの頃からなんとなく違和感を感じながら考えていたこと.
ひと一人の命が地球より重いのならば,何十億という人が住んでいる地球ってのは,
その重力に耐えられなくなって,とっくにブラックホールになってしまってるんじゃないかってこと.

大人になるにつれ,
あんな言葉は,なにかの意図をもって垂れ流されたプロパガンダだったのだと思うようになった.
少なくとも『言葉』自体は,
誰か,ある人のある意図をもって,
あたかも崇高で,侵しがたい神の言葉であるかのように,作られ,多くの人に受け入れられた.
それが人間が遠く及ばない存在から,届いたシグナルであるかのように.



僕はガラにもなく,宮崎駿アニメが大好きで.
他にも,スーパーでパック詰めで売っている餃子が好きだったり,売れない居酒屋の香りの抜けた生ビールや,何年も着古した首周りが弛んだTシャツで寝るのが好きだったりする.

宮崎駿が言う,

作品は,テーマが分かった途端に嘘くさくなるものです.
僕は作品を作る時,テーマなんて込めたくない,と...

そして彼は映画作りの最初の段階で,シナリオを考えるのではなく,
まず『絵』を書くのだそうだ.

1枚の絵.
それを,あーでもないこーでもないと,書き殴りながら.
気に入った絵を壁に貼り付ける.
そこにやってきたスタッフが,『いい絵ですね』と言って,
それからみんなで作品作りを始めるらしい.

他人の言うことには,あまり心を動かさない僕は,
その言葉を聞いて,なんか分かんないけどホッとした.

作品作りに行き詰まって機嫌の悪い彼が,
つきっきりで取材をするテレビ局のスタッフに吐き捨てるように言った言葉.
『僕は本来,いつも不機嫌で居たい人間なんです.そんな僕だって世の中と上手くやっていこうと思って,いつもはいろいろと気分の良さそうな言葉を吐くんです.  本当はそんなことはどうでもいいんです.』
あー,なるほど.
こういうセリフをカメラに吐ける,ってのは良いものだな.と素直に思った.

ま,そんな感じ.
命の重さと地球の重さは,どっちも人間には量れないのだ.