僕は良くも悪くも 自分は『プロ』だと思っている.
だからプロフェッショナルと言われる立場にある人に厳しい.
ここでいうプロというのは,
単にある職業により金を稼ぐ人ではなくて,もう少し狭い,
『その立場にある者だけが,それをすることを許されている者』である.
だから,いわゆる聖職者と言われる政治家や教師,宗教家はもちろん,
国が認可して人にものを食わせる料理人や飲食店の経営者,
人にものを伝えるメディアなどが,しょうもない仕事をしていると無性に腹が立つ.
ちなみに,高級官僚は別として一庶民の代表であるような公務員はあまり対象にならない.
医者にもいろいろなバカがいるが,
普通に病院にかかった患者さんや,上っ面と世間受けしか考えていないメディアが 見ることのできないバカ医者の姿がある.
医局というのは普通,病院に勤務する医者の机やロッカーが並んでいる部屋のことをいう.
昔は下級医師なんぞに与えられる机などなくて,
僕が研修医の時は,『研修医室』という病室を改築しただけの狭い部屋に
十数人からのロッカーと二人ほどが雑魚寝できる古びたソファだけが置かれたスペースを皆で共有していた.
最近,勤務医の減少によってたいていの病院でキャリアにかかわらず一人一人に机が与えられている.
今の僕の机の上には,古い実験データが入っている年代物のMacと これまでの手術記録やそれぞれの患者さんに向けて作成した『同意書』が入ったノートパソコン.
あと学会発表のポスターを作る時以外は黒インクしか減らないプリンタが置かれている.
実はもっとスペースをとっているのが,業者に頼んで貰った論文のコピーや薬の文献.
毎月いくつかの学会から送られてくる月刊誌,自分で購入する手術書ほか医学書が積み上がっている.
積み上がるペースより読むペースの方が遅いから,いつまでたっても整理されない書籍や文献が地層のように積み重なっている.
僕の隣りに座るヤツは,僕より5つも若いが,
最近二人目の子供ができるとのことで広い家に引っ越した.
最近,コイツの机の上にはインテリアやガーデニングの本が置いてある.
それまでは流行のファッション誌や,飲食店の情報誌であった.
パソコンで一生懸命に何かを見ていることが多いのだが,だいたいはどこかから仕入れてきたマンガである.
机の上にも本棚にも医学書はほとんど置いてなくて,
新しい手術や治療にチャレンジしたいと言ってきたことはない.
ホンモノのバカである...
斜め向かいの5つほど年上の内科医は,
昼の決まった時間帯になると,パソコンから脳天気なミュージックとともにテレビ番組が垂れ流しとなり,
お決まりのように自宅に電話して,やはり庭の芝生や子供の学校話をする.
この時間帯に院内PHSが鳴っても,それは後回しらしい.
ま,ちょっとバカだったらこんなもんだろう..
僕の正面に座るのは,四つばかり年下だが,机の上は院内LANに繋がったパソコンと,
ほとんどが英語の医学書や文献しかない.
僕は彼のことを心の中で『人間字引』と呼んでいて,
なにか分からないことがあった時,下手に文献やネットを調べるより彼に聞いた方が断然早くて実践的.
彼は本当は外科医になりたかったそうだが内科を選んだ.
外科医は所詮,年配の者には,それがバカであっても経験で敵わないが,
内科医なら,自分が人の数倍勉強すれば,年配の者と対等以上の仕事ができる,というのが理由だと語っていた.
ホンモノのプロフェッショナルである.
残念ながらこういう人材だから,今月退職して更に高みを目指すこととなる.
この週末.
僕にとって初めてのエリアで飲む.
連れて行ってくれた人は,いつも世の中を斜に構えて見ていて.
その人が,ある意味で『プロ』と認める人が作ったという店だ.
連れて行ってくれた彼女は,あるジャンルでは確かにプロである.
しかし酒飲みのプロとしては,僕の足下に遙かに及ばない(^m^)
酒を飲むための良い店というものは,
座ってすぐに出てくる『付きだし』と,ロック酒の『氷』の質で決まる.
だからオーナーに『うちは焼酎を160種ほど置いていますが,いかがでしたか?』
ときかれて,なんともコメントのしようがなかった.
酒を何百種類置こうとも,全部を一回行っただけで飲みきるヤツはいない.
しかし付きだしと氷は,訪れた客が必ず味わうものである.
彼は,店のロケーション,ネーミング,内装,価格設定などにおいて,
確かに経営のプロではあった.
ただ,酒飲みのプロでは無いような気がしたから,
僕がコメントをすることに気が引けたのだ.
かつて僕が大好きであった人が言ったいくつかの言葉で,僕の中に残る一言.
わたしは『大統領のように働き,王様のように遊ぶ』.そんな風に行きたい.
良い言葉だと思った.
タイトルの医局の机の話..
『お前だって医局で株をやってるバカ医者だろう!』
と指摘されそうだが..事実である.
だから先に挙げたバカ医者から見れば,僕だってどうしようもないバカに見えているだろう.
しかし僕は,あからさまにプライベートを職場でひけらかすような醜いマネはしない.
それも僕のプロとしての美学だ.
嬉しいことにいつからか,僕の机のあまりの乱雑ぶりに呆れた外科担当のナースが,
半年毎に僕の机を掃除してくれている.
プロは独りでは成り立たない(^^)