A Challenge To Fate

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【地下ジャズDisc Review】ラリー・オークス+ジェラルド・クリーヴァー『野性洞窟の歌(Songs of the Wild Cave)』

2019年01月13日 01時24分25秒 | 素晴らしき変態音楽


『Larry Ochs- Gerald Cleaver / Songs of the Wild Cave』

CD: Rogueart ‎– ROG-0084

Larry Ochs : ts, ss
Gerald Cleaver : ds, perc

1. First steps
2. Into the Air
3. Deeper
4. Down
5. Ringing It In
6. Rooted in Clay
7. Light from the Shadows

Recorded by Vincent Mahey (assistant: Morgan Beaulieu) on October 1st 2016 in the southwest of France, in a wild cave in absolute silence and darkness.
Mixing: Vincent Mahey
Mastering: Raphaël Jonin
Liner notes: Ludovic Florin
Photograph: Alban Jacques
Cover design: Max Schoendorff
Cover realization: David Bourguignon
Executive producer: Michel Dorbon


<即興>対<沈黙>のフィールド・レコーディング。

ロヴァ・サクソフォン・カルテットの創立メンバーとして、またソロ演奏家としてアメリカ・ウェストコースト即興シーンの中核で活動するマルチリード奏者ラリー・オークスと、デトロイト生まれのドラマー、ジェラルド・クリーヴァーは、2016年秋にフランス南西部にある自然の洞窟を訪れた。後期旧石器時代(17000年前~12000年前頃)にマドレーヌ文化と呼ばれる旧人類の文化が花開いたこの地方は、ラスコーやアルタミラなどの洞窟壁画で有名である。二人が訪れたポルテ洞窟も鮮やかな壁画で彩られていた。壁画保護の為に閉鎖されている洞窟に入ることを許されたのは一生に一度の機会だった。翌日、形が似ていて壁画の描かれていない洞窟で、二人のレコーディングが行われた。絶対的な闇と静寂の中、最小限の機材とスタッフで記録された、前夜の壁画の神秘体験の余韻の残る二人のセッションは、短くも濃厚なものだった。

地下洞窟内には素晴らしい「大気」があり、ラリーによればこれまで吸ったうちで最も質のいい「空気」に満ちていた。湿気は飽和状態だったが、地下深いので臭いも汚染も全くなかった。 洞窟は死んでおらず、生きている証に、頭上の地層から水が小さな波紋となってが滲み出ていた。 セッションを始めてから約15分経つと鼻腔から肺までのすべての気柱が大きく開いていることに気付いたという。これまででもっと自由に呼吸することができて、肺活量が増大し4時間に亘るセッションは順調に進んだ。しかし4時間に亘るレコーディングが終わり洞窟を出ると30分も経たないうちに、彼らの身体は元の「正常な」状態に戻ってしまったという。洞窟内のレコーディングは、生命回復作用をもたらす特別な体験だった。

この体験から分かるように、このアルバムのキーワードが<生命>にあることは確かである。即興演奏とは<生>と<生>、<命>と<命>の相互作用と呼べるだろう。生きる証として演奏行為で生じた音を他者に伝えることは、<命>あるもの特権である。それに対して音で呼応することも<命>がなければ出来ない。そんな<生命>の営みを、非生命体に解放する過程を記録した60分の音のドキュメントが『野性の洞窟の歌(Songs of the Wild Cave)』と題されたこのアルバムである。

楽器はラリーのサックスとジェラルドのパーカッションしかないはずだが、明らかにもうひとつの音が存在している。それは<沈黙>或は<闇>と呼んでもいい。洞窟の壁を形作る鉱物が呼吸する音。耳に聴こえる二つの楽器の反響、それが一旦途切れたとき、洞窟の壁が一斉に<沈黙>の歌をうたい出す、というより常にある<沈黙>が聴こえ出すのである。<沈黙を聴く>というと難しそうに思われるかもしれないが、このCDを聴くことは<沈黙>を聴くことでもある。その証拠に、どんなに激しい即興プレイも洞窟の<沈黙>のオブラートに包まれて、夢の中で鳴る雷鳴のように形而上的な現実ではないか。


Photo by Alban Jacques

ここに収録された音響には二人の即興演奏家の交歓では収まらない霊性と妖気が渦巻いている。何処で反響しているか判別不能の木霊、サックスのブロウに呼応するヒステリックな咽び泣き、ドラムの連打に呪文を唱える岩石のヒスノイズ。それらは幻聴ではなく、耳に聴こえないはずの古代人の亡霊の演奏かもしれない。聴こえてしまったからといって呪われることはないと保証するが、それでも心の中で塩をまいて清めてから聴きたいならば止めはしない。しかしそれは<沈黙>への無条件降伏であることもまた確かである。

沈黙ノ
巨人ト艦隊
爆裂セヨ

Gerald Cleaver & Larry Ochs @ 19PaulFort 9-29-16
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