A Challenge To Fate

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【Disc Review】『Otherworld Ensemble / Live at Malmitalo』〜レント・ロムスのフィンランド・プロジェクト

2018年04月03日 08時34分09秒 | 素晴らしき変態音楽


Otherworld Ensemble / Live at Malmitalo
アザーワールド・アンサンブル『ライヴ・アット・マルミタロ』

CD:Edgetone Records EDT4192

Heikki Koskinen : Co-Director, tenor recorder, e-trumpet, flutes, piano kantele
Teppo Hauta-aho : double bass
Rent Romus : Music Director, alto saxophone, kantele, flutes, bells
Mikko Innanen : alto, baritone and sopranino saxophones, flutes, percussion

1. Maahinen (Gnome) 09:22
2. Intersections 05:58
3. Summer Night 02:57
4. Hämy 06:45
5. Bark 03:13
6. Lemi 03:39
7. Waiting for the fall 03:28
8. Velkutus 03:56
9. Ode to the Ceiling Light Buzz 02:50
10. Yökyöpelit (Night Owls) 03:28
11. HaKo 01:48
12. Malmitalo 05:48

Recorded live at Malmitalo, Helsinki Cultural Center, Finland, May 21, 2017
Mixed & mastered at Music Vision by Heikki Koskinen
Photos by Joppe Auersalo
Banner photo at Malmitalo by Heikki Koskinen



フィンランドから大宇宙へ。音の天地創造をアップデートする別世界のアンサンブル

Rent Romus:移民の国であるアメリカ合衆国では、先祖伝来の遺産がミックスされて失われてしまうことが多いのです。私は、2014, 5年に作曲・演奏し、2015年にEdgetone Recordsからリリースした『Otherworld Cycle』の制作を通して自分の先祖の失われた遺産を発見しました。(中略)この作品はフィンランドの国民的叙事詩『カレワラ』にインスパイアされた組曲です。何百世代にも亘って言葉で伝承され、19世紀半ばに本に書き起こされた叙事詩で、フィンランド独特の視点による創造、冒険、愛、死についての古代の物語です。この本と物語が私を発見の道へと導いて、トランペット奏者/教育家/作曲家のHeikki “Mike” Kosiknenに繋がりました。彼がフィンランド音楽の世界と、生きた歴史を制作している人々と演奏家を紹介してくれたのです。

今年1月にJazzTokyoのインタビューでレント・ロムスが語ったフィンランドのミュージシャンとの共演音源がリリースされた。2017年5月に首都ヘルシンキのカルチャー・センターでのライヴ・アルバムである。ドラムレス3管+ベースカルテットが民俗楽器やフルートやパーカッションを多用する柔軟な演奏に流れるゆったりとした大河のような空気感が、何百年も昔から口頭伝承で伝えられてきた『カレワラ』に刻まれた月日の星霜を表している。もちろんリズムはあるが、メロディ楽器から途切れることなくあふれ出す「命の血」を邪魔することなく「生」の息吹を甘受する演奏である。おおらかなホーンの詠唱とカウンターメロディーを奏でるコントラバスの相互作用は、あたかもフィンランドの針葉樹に住む鳥たちと樹木が風を媒介に通じあうラヴ・アフェアのようだ。ロムスとコスキネンが音楽監督と作曲を担当したが、演奏面では四者平等のバランスが安定感をもたらしている。

Otherworld Ensemble at Malmitalo, Helsinki Finland performs "Velkutus"


本作を聴いて筆者の脳裏に浮かんだのはジョン・チカイの『アフロディシアカ』(1969)だった。NYで活動していたチカイが自国デンマークのミュージシャンと結成した26人編成のグループCadentia Nova Danicaを率いて69年にリリースしたアルバムで、ギリシャ神話のアフロディーテを素材としたストーリー性のあるアルバム。ドラムやパーカッションがリズムではなく効果音として他の楽器と混ざり合う演奏は、人数や音数の違いにも関わらず、ロムスたちの演奏と同じ精神性を感じさせる。またチカイが自らのルーツのデンマークに居を移したことは、ロムスのルーツ回帰のヒントになったのかもしれない。

さらに筆者なりの妄想連想を続ければ、『カレワラ』は日本の『古事記』のようなものだから、山下洋輔トリオが1969年早稲田大学バリケードの中で行った演奏記録『Dancing古事記』が浮かぶ。国や文化も時代背景も全く異なる両者の共通点は、比類のない表現欲求と創造精神の発露である。50年前の切羽詰まった空気とは真逆の、誰からも邪魔されない創造行為を謳歌できる時代だからこそロムスたちの演奏の可能性と広がりは宇宙規模で拡散される可能性を秘めている。本作と同時にリリースされたレント・ロムス・ライフス・ブラッド・アンサンブルの新作『ローグ・スター』が宇宙旅行をテーマにした作品になったの偶然ではない。自らのルーツを探るうちにロムスたちが辿り着いたのは「全人類」のルーツとしての<大宇宙>なのである。音楽の天地創造を更新する音楽探索の旅の通過点として、本作は大きなランドマークといえるだろう。
JazzTokyo Disc Review#1510 『Rent Romus’ Life’s Blood Ensemble / Rogue Star』

Otherworld Ensemble at Malmitalo, Helsinki Finland - performs "Hämy"


西海岸発
北欧経由
大宇宙

John Tchicai and Cadentia Nova Danica (Dinamarca, 1969) - Afrodisiaca


バリケードの中のジャズ 山下洋輔トリオ.flv
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