A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

「絶滅動物記」第十九章~ライヴ活動開始30周年記念マリア観音ワンマン公演@新大久保アースダム 2018.4.15 (sun)

2018年04月20日 10時49分05秒 | 素晴らしき変態音楽


4月15日(日・昼)@新大久保アースダム
「絶滅動物記」第十九章~ライヴ活動開始30周年記念マリア観音ワンマン公演
開演12時
3千円+D代



86年に就職した筆者は大学時代から続く「Rajio」というニューウェイヴ・バンドを続けていた。リーダーであるヴォーカル/ギタリストのオリジナル曲を中心に、在学中から渋谷屋根裏やラママに出演しパパイアパラノイアやTheピーズと対バンした。下北沢に移転した屋根裏でほんの少し気に入られたがリーダーの一身上の都合で解散。残ったメンバーと大学時代の先輩とで89年にサイケデリック・ロック・バンド「Flower Trip」を結成した。その年に放映が始まったテレビのアマチュアバンドコンテスト「三宅裕司のいかすバンド天国(イカ天)」が徐々に話題になっていた。実力派もいたが、バンドブームで生まれた初心者や色物バンドも多く、これなら俺たち出れるんじゃね?と思いライヴビデオで応募したところ合格通知が来た。1989年11月に日比谷シャンテのいかにもテレビという感じの明るいスタジオで演奏を収録した。緊張はしなかったが、本気にもなれず気が抜けたまま終わった気がする。12月23日の深夜赤坂のTBSスタジオで生放送に出演。当日筆者は38℃の熱があり、頭がぼうっとして一言も話せなかった。完奏は出来ず、審査員からはサイケを舐めるんじゃないと酷評されたが、ヴォーカルがベスト・キャラクター賞を受賞した。



マリア観音というけったいな名前のバンドを初めて観たのも『イカ天』だった。出演時の動画はYouTubeで観られるが、色物揃いの脳天気な平成元禄にヤクザが紛れ込んだようなヤバイ異物感は今観ても伝わらないかもしれない。テレビというマスメディアの魔物に霊気や毒気が吸い取られて、覚悟も本気もネタにされかねないなか、マリア観音が放った異臭はTVセットに映し出された空虚な平和に寝惚けた脳髄に見えない傷跡を残した。

マリア観音-別れたその夜 1989


90年代にFlower Trip主催でサイケ/アングラ風味のあるバンドを集めて企画ライヴ『アートロック宣言』をスタートした。ライブハウスに面白そうなバンドを探しにいった。リーダーのベーシストがマリア観音を観に行き、イベントに誘ったらいい反応だったと言っていた覚えがあるが実現しなかった。筆者は彼らのライヴを観た覚えはないが、灰野敬二やPSF系地下ロックの対バンでマリア観音やヴォーカル木幡東介の名前を見ることは多かった。PSF所属アーティストではないが、明大前モダーンミュージックには特設コーナーがあった記憶がある。そんなマリア観音のライヴを初めてガッツリ観たのは昨年6月町田康の新バンド「汝、我が民に非ズ」のデビューライヴの対バンだった。昔のイメージ以上の全身肉体派パフォーマンスに衝撃を受けた。


汝、我が民に非ズ(町田康 新プロジェクト) / マリア観音 / アープンクッカ@秋葉原 club Goodman 2017.6.11(sun)

それ以来10ヶ月ぶりにマリア観音ワンマンライヴに参戦。土曜日昼間の新大久保は韓国ファンの女子の観光スポットとしてあちこちに行列が出来る賑わい。まさかその地下で日本アンダーグラウンドカルチャー史を継承するエクストリームな演奏会が開かれているとは誰も想像できないだろう。トレードマークの銅鑼と手書きの効能書きが設置された呪術的な雰囲気がただようステージで繰り広げられたパフォーマンスは、音楽演奏であると共に木幡の半生をかけた人生訓の辻説法でもあった。「野獣中高年のふれあい広場」「反逆の民族ロック音楽」「音のない部分を演奏する」など饒舌な言葉の奔流は、かつて都知事選やと参議院選に出馬した有象無象の泡沫候補やキワモノ政党を想起させる。しかし、命をかけてやり続けている木幡とマリア観音は、フリンジカルチャーの一部かも知れないが、バブルやムースのように消え去るものではなく、錆びたナイフのように触れるものすべてに傷跡を残す、重量オーバーの意志の塊に違いない。



「行き過ぎることを恐れないことが地下音楽の本質である」と筆者は定義したが、その言葉通りの世界を体現するマリア観音の生き方は「過剰」の二文字に他ならない。土着の舞踏の舞を思わせる木幡はもちろん、クールにベースを弾き倒す長身美女の伊藤明子(b)、JAシーザーの片腕として悪魔の家を率いるa_Kira(g,kb)、フリードラミングの権化平野勇(ds)、メンバー全員がエクストリームなスタイルを貫くマリア観音の魅力は動画や音源や言葉では伝え切れない。毎月数回行われるライヴ現場で体験することをお勧めする。



マリア観音のことを調べていたら、前日に高円寺グッドマンで観たベースの河崎純が90年代後半マリア観音のメンバーだったことを知った。河崎のある種過剰なプレイも行き過ぎることを恐れない地下音楽家の血が成す業なのであろう。
川島誠+河崎純@高円寺グッドマン 2018.4.14 (sat)

地下水流
マリアの泉
観音温泉

無機質な狂気 第5夜|マリア観音
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