A Challenge To Fate

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90'sアメリカン・ロックの芳醇な薫り。音響庭園復活~サウンドガーデン「キング・アニマル」

2012年11月18日 02時23分42秒 | ロッケンロール万歳!


1990年代海外ロック・シーンには象徴的なふたつのムーヴメントがあった。90年代頭に米国から「グランジ」というロック本来の攻撃性を現代に取り戻す現象が勃興し、その反動として英国から「ブリットポップ」という明解なメロディとギターポップの復権運動が起こった。アメリカン・ロックに関しては80年代から活動するR.E.M.やソニック・ユース等のオルタナティヴ・ロックは愛聴していたが、90年代にシアトルから登場したグランジ勢には今一つ乗り切れなかった。特にニルヴァーナはMTVや洋楽音楽誌で大きく取り上げられたが、ファッション的には興味深かったが、音楽的にはそんなに大したものとは感じられなかった。捻くれ者なので、グランジ御三家と言われたニルヴァーナ、パール・ジャム、サウンドガーデンの中では最もマイナーでマニアックなサウンドガーデンが好きだった。

サウンドガーデンに心惹かれた理由は引き摺るようなヘヴィ・ロック・サウンドと恐ろしく上手いクリス・コーネルのヴォーカルにある。カート・コバーンもエディ・ヴェダー(パール・ジャム)も歌は下手ではないが歪んだギター・サウンドの強烈さに比べ添え物っぽいイメージがあり、クリスのバンド・サウンドをリードする歌の存在感は格別だった。重量爆撃のうねるビート、レッド・ツェッペリン風の変拍子のリフとブラック・サバス的な脅迫ファズ・ギター、その壁を突き抜けて響きわたるヴォーカル。グランジはハードロック/ヘヴィメタルの文脈からは無視されがちだが、サウンドガーデンのスタイルは新世代ハードロックと呼んでも間違いではない。キッス、エアロスミス等のハードロックからロックに入った世代には突然変異的なニルヴァーナよりもサウンドガーデンの方が取っ付きやすいのではなかろうか。

サウンドガーデンは1984年にシアトルで結成、5枚のアルバムを発表し、1997年に「やれることをやり遂げた」と解散、グランジ・ムーヴメントの終焉を告げた。クリス・コーネルはソロやレイジ・アゲンスト・ザ・マシーンのメンバーと結成したオーディオスレイヴで活躍。他のメンバーも他のバンドやプロジェクトで活動していたが、2010年にオリジナル・メンバーで再結成、アメリカ最大のロック・フェス、ロラパルーザのヘッドライナーを務め注目を集めた。今年遂に16年ぶりとなるニュー・アルバム「キング・アニマル」をリリースした。

先行公開されたリード曲「ビーン・アウェイ・トゥー・ロング」のイントロを聴いただけで"これはサウンドガーデンでしかあり得ない"と感動した。18年前に発表された最高傑作「スーパーアンノウン」を彷彿させる堂々とした変拍子ヘヴィ・ロック。16年間の空白を微塵も感じさせない現役感。別々に活動している間、各メンバーがテクニックと感性をさらに磨き上げたことを証明する完成度の高さとベテランならではの音の深み。完成したアルバム全編を聴くと畳み掛けるようなハードロックの波状攻撃に圧倒される。特に4曲目「ア・サウザンド・デイズ・ビフォア」以降のクリスのヴォーカルの素晴らしさは単なる過激ロックではない芳醇な音響の荒野を描き出す。様々なバンドが群雄割拠したグランジ・ムーヴメントを総括する孤高のアルバムの登場である。

1995年の来日公演を今は無き新宿厚生年金会館で観た。アルバムを遥かに超えるテンションの高い演奏と聴き手を天空の高みに誘うスケールの大きなヴォーカルにグランジやオルタナに収まりきれないアメリカン・ロックのひとつの到達点を見た気がした。ライヴのエンディングでクリスがマイク・スタンドを床に叩きつけて破壊した。「グランジ」の世界に閉じ込められている自分たちの状況への欲求不満の発露だったのかもしれない。それから15年以上経ち新世代に向けて再始動した音響庭園にはもはや何と呼ばれようと動じない風格が備わっている。若手バンドに気合いを入れてロックの復興を促して欲しい。






風化する
ロックに喝を
入れとくれ

来年の夏フェスにヘッドライナーとして来日するのは確実であろう。



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