A Challenge To Fate

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【私の地下ジャズ愛好癖】フリー・ミュージック不死鳥伝説!来日するシュリッぺンバッハ・トリオのパンク・スピリット。

2018年10月11日 01時43分47秒 | 素晴らしき変態音楽


フリージャズや即興音楽のことを筆者はいつ頃知ったのか。最初はポップ・グループやジェームス・チャンスやラウンジ・リザーズといったニューウェイヴ系、さらにキャプテン・ビーフハートやフランク・ザッパで、彼らがオーネット・コールマンやアルバート・アイラー、サン・ラと言ったアメリカの黒人ジャズメンへの入り口になったのは確かである。だが、ヨーロッパのフリー・ミュージックを知ったのきっかけは?思い返してみると、70年代後半愛読していたパンク雑誌『ZOO』(のちの『DOLL』)に、何故かヨーロッパ・フリー・ミュージックの紹介記事が載っていたことを思い出した。79年発行、DEVOが表紙のNo.21に「パンクとフリー・ミュージック」、PILが表紙のNo.22に「80年代の音楽『即興』」と題して飛田俊英というライターがコラムを書いていた。当時高校2年生で音楽欲が旺盛だった筆者にとって未知のジャンルはとても魅力的だったし、パンクと同様に古い音楽を破壊する存在としてフリー・ミュージックを説く文章に共感を覚えた。



とは言っても高校生の小遣いで買えるレコード枚数は限られていて、当時ビクターから「フリー&プログレッシヴ・ミュージック」シリーズとして日本盤が出たカンパニーやデレク・ベイリーやスティーヴ・レイシーなどLPを聴けるはずもなかった。実際に観たり聴したりするようになったのは、82年のICPオーケストラの来日以降だったと思う。『ZOO』の他に『Fool's Mate』や『MARQUEE』と言ったプログレ誌にも掲載されたフリー・ミュージックの記事から、極度にストイックでシリアス一辺倒の求道者のイメージを持っていた即興演奏家たちが、ワルツで踊ったり、音楽でずっこけギャグをかましたり、犬の遠吠えを真似したり、ユーモアたっぷりのエンターテイメントを見せつけたICPオーケストラを目の当たりにして、フリー・ミュージックで笑ってもいいんだ、と目から鱗の体験だった。

Kwela (live) MISHA MENGELBERG and ICP ORCHESTRA (1982 aud)


筆者の印象では、ヨーロピアン・フリー・ミュージックの二大巨頭がデレク・ベイリーとエヴァン・パーカーだった。両者にハン・ベニンクを加えたトリオによる『トポグラフィ・オブ・ラングス』は筆者が最初に買ったフリー・ミュージックのLPであり、今でも聴く度に背筋が正される思いがする。しかしながら、ドイツのFMP、オランダのICP、イギリスのINCUSという三大レーベルの作品は殆どが、ソロやセッションやワークショップ的集団即興ばかりで、所謂コンスタントなグループは少ない。フリー・ミュージックの演奏家はみんな特定のグループに属すことを良しとしない一匹狼、というイメージがあるのは確かだろう。実際ジャズの場合はロックと違って「○○トリオ」などと名乗っても、リーダー以外は流動的なのが普通である。いわんやフリー・ミュージックをや、という訳だ。

Evan Parker / Derek Bailey / Han Bennink - The Topography Of The Lungs (FULL ALBUM)


そう考えると70年代初頭から同じメンバーで現在まで活動しているシュリッペンバッハ・トリオは極めて異例である。アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ(p)、エヴァン・パーカー(sax)、パウル・ローフェンス(ds)という山下洋輔トリオと同じ編成で、「音の一回性」というフリー・ミュージック精神を貫き通すトリオの在り方は、積み重ねた学習・経験や、同じ相手と四十年以上付き合う馴れ合いや慣習を、一旦ゼロにリセットしてから再スタートする気構えが無ければ成り立たないに違いない。特定の音楽集団が、因習に支配されない、つまり既存の音楽語法に依らない(デレク・ベイリー流に言えば「ノンイディオマティック」、灰野敬二の言を借りれば「なぞらない」)演奏行為を、いつまでやり続ける、即ちインプロヴィゼーションの理想形を保ち続けることが可能なのか、という挑戦である。それは恰も「一度失った無垢の魂を、学習により多数のイディオムを身につけた後で取り戻すことが出来るか[1]」という、筆者が演奏者に期待する命題を身を以て実践してくれているような気がする。なんてパンクな3人組であろうか。

Alexander von Schlippenbach Trio ‎- Pakistani Pomade (1973) FULL ALBUM


それを確かめる為にも、11月に予定されているシュリッペンバッハ・トリオの来日公演は大きな意義がある。来日するドラマーはローフェンスではなくポール・リットンだが、フリー・ミュージック・ドラマー界の”二大PAUL”の片割れで2歳年上のリットンならば完全に同志と考えていい。5回(うち1回は講演会)予定されている来日公演の中でも、2年前に「生活向上委員会大管弦楽団2016」として原田依幸(p)、梅津和時(sax)、ドン・モイエ(ds)が奇跡の熱演を繰り広げた座・高円寺2に同じ編成のシュリッペンバッハ・トリオが出演する11月23日は、生向委の「フリージャズ不死鳥伝説[2]」に続いて「フリー・ミュージック不死鳥伝説」の奇跡が起こるに違いない。ぜひ多くの愛好家に体験していただきたいものである。

Schlippenbach Trio Live @ Area Sismica


参考文献
1) 剛田武 Cross Review:ピーター・エヴァンス@Jazz Art せんがわ2018 at JazzTokyo Live Report #1033
2) 剛田武 生活向上委員会大管弦楽団2016 at JazzTokyo Live Report #922

不死鳥は
何回死んでも
ぶっ生き返す



シュリッペンバッハ・トリオ+高瀬アキ「冬の旅:日本編」
Schlippenbach Trio + Aki Takase “Winterreise in Japan”




伝説ではない!
ヨーロッパ・フリーのパイオニアでドイツを代表するジャズ/フリージャズ・ピアニスト、作編曲家のアレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハが、1970年代初めより活動を続けているトリオで遂に来日!メンバーは、サックスの革新者エヴァン・パーカー、オリジナル・メンバーであるパウル・ローフェンスに変わって近年トリオのドラマーを務めることが多いポール・リットン。 また、座・高円寺2では高瀬アキとシュリッペンバッハそれぞれのソロとピアノ・デュオ(連弾)も。

シュリッペンバッハ・トリオ:
アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ(ピアノ)
エヴァン・パーカー(サックス)
ポール・リットン(ドラムス)

高瀬 アキ(ピアノ)

詳細なスケジュール⇒JazzTokyo 11/23〜27 シュリッペンバッハ・トリオ+高瀬アキ「冬の旅:日本編」
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