A Challenge To Fate

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【私的回想録:プログレと私】プログレ盤魔殿~盤外地プログレ不法集会 vol.1@阿佐ヶ谷TABASA 2023.10.20 fri

2023年10月26日 01時27分14秒 | 素晴らしき変態音楽


盤魔殿 Disque Daemonium presents
プログレ盤魔殿~盤外地プログレ不法集会 vol.1

場所 阿佐ヶ谷TABASA 
開場・開演 2023年10月20日(金曜日)19時 

出演者 
●盤魔殿レギュラーDJ 
 DJ Manticore(剛田武)
 DJ Silence(宇田川岳夫)
●ゲストDJ
 DJ角(Tsunoda Toshiya)
●スペシャルゲストDJ
 Genet(AUTO-MOD)

プログレと私①
70年代半ば中学生の時洋楽に目覚めた筆者はまず映画(洋画)のシングル盤を買い始めた。特に勇猛な西部劇のテーマ曲が好きだったが、ある時レコード店で流れていた不思議なメロディが気に入って買ったのが当時話題になっていたホラー映画「エクソシスト」のシングル盤だった。美しい音が奏でる旋律が折り重なる何とも言えず物悲しいムードが新鮮で何度も繰り返し聴いていた。作曲はマイク・オールドフィールド。元のアルバムが『チューブラー・ベルズ』だと知った。また、解説に彼が姉のサリーと一緒にやっていたバンド名がサリアンジーと書いてあり、その名前の美しい響きだけで恋に似た憧れを抱いた。
ほどなくポップスやロックに興味が移り、初めはジョン・デンバーやビーチ・ボーイズなどのアメリカンポップス、続いてキッス、エアロスミスといったハードロックを聴いた。ある日レコード店(金沢山畜片町店)のフィルムコンサートでディープ・パープルのリッチー・ブラックモアがギターを叩き壊すシーンを見てショックを受け「こんな暴力的な音楽はもう聴かない」と決心。その足で買って帰ったのが冨田勲のシンセサイザーの『火の鳥』だった。もともと好きだったクラシックの曲をシンセの電子音で再現した未来的なサウンドに心酔した。
次第にリッチー・ショックも癒えてラジオの洋楽番組を聴くようになった頃、ジェネシスかイエスかELPか覚えていないが、シンセサイザーを使ったロックが流れてきて「これは何?ロックにも冨田勲のようなバンドがいるんだ」と興味をひかれた。それがプログレと呼ばれるジャンルであることを知っていたかどうかは覚えていないが、情報を求めて音楽雑誌やレコード店で探すようになった。当時はサブスクやYouTubeはもちろん貸レコード屋もない時代。ロック好きな友達や知り合いもなく一人で好みの音楽を探求する筆者にとっては、雑誌の記事やジャケットのイメージが大きな判断基準だった。探すうちにジャケットが一番気に入ったのがジェネシス。ヨーロッパの童話のようなファンタジックなイラストが、空想好きの筆者の心を魅了した。とはいっても小遣いで買えるLPレコードは2~3カ月に1枚くらい。金沢に1軒しかない輸入レコード店で買ったのは2枚組の『The Lamb Lies Down on Broadway(邦題:幻惑のブロードウェイ)』だった。ジャケットはイラストではないが、2枚組でたっぷり聴ける(確か値段も安めだった)のが決め手になったと記憶している。複雑で難解なストーリーのコンセプト・アルバムだということは後で知ったが、音楽として楽しむ分には歌詞がわからなくても問題はなかった(当然ながら中学生の英語力で理解しようと思っても無理だっただろう)。その後ギタリストのスティーヴ・ハケットのソロ・アルバム『侍祭の旅(Voyage of the Acolyte)』を廉価盤(1500円)で購入、ジェネシスよりも気に入って愛聴していた。美しい女性ヴォーカルがマイク・オールドフィールドの姉のサリー・オールドフィールドだと知って恋心も再燃した。
しかし同時期(1977年)にパンクロックがラジオや雑誌で紹介され、セックス・ピストルズやザ・クラッシュのシンプルでパワフルなサウンドにすっかり魅了され、長大で装飾過剰なプログレは時代遅れに感じられてほとんど聴かなくなってしまった。

●DJ Silence(宇田川岳夫)


1 Älgarnas Trädgård (run Sage of the Elks) / Tristans Klangen ( Framtiden Är Ett Svävande Skepp, Förankrat I Forntiden B1)
2 Frantz / Peut-être Aux Yeux-Silence (Peut-être Aux Yeux-Silence B1)
3 Irolt / De Gudrun Sêge (De Gudrun Sêge B1)
4 Neuronium / Quasar 2C361 ( Quasar 2C361 A1)
5 Iron Butterfly / Possesion (Heavy A1)
6 Triana / Hijos Del Agobio (Hijos Del Agobio A1)
7 New Trolls / Studio (UT A1)
8 Mandrágora / La Gruta De Las Mandragoras Del Bosque (Mandragora A1)
9 Aquelarre / Cruzando La Calle (Candiles A1)
10 Arco Iris / Epilogo Susamerica,O El Regresso A La Aurora (Sudamerica D10)
11 Aphrodite’s Child / Seven Trumpets (666 C1)
12 Aphrodite’s Child / Altamont (666 C2)
13 Aphrodite’s Child / The Wedding Of The Lamb (666 C3)



プログレと私②
1978年に高校に進学。ブラスバンド部でバリトンサックスを吹きながら、家ではエレキギターを練習していた(主にザ・フーのピート・タウンゼンドのジャンプや風車奏法の練習)。高2に上がる春休みにヨーロッパ旅行をして、ロンドンのパンクな雰囲気(すでにパンク・ブームは去り本当のパンクスはいなかったが、ロンドンの街並がパンクに感じられた)に感化されて帰国。同級生を誘ってパンクのカバーバンドを結成したり、東京ロッカーズ系のバンドを観に吉祥寺マイナーや荻窪ロフトなどのライヴハウスに通うようになる。海外からは当時オルタネイティヴロックと呼ばれたポストパンクが登場し、ザ・レジデンツやポップ・グループなど前衛的なロックにショックを受け、そのルーツとしてアルバート・アイラーやサン・ラなどフリージャズや、メシアンやヴァレーズなど現代音楽を知り、フランク・ザッパやキャプテン・ビーフハート、ヘンリー・カウをはじめとするR.I.O.(反対派ロック)に興味を持つようになる。特に『フールズ・メイト』『マーキームーン』といったコアなプログレ雑誌の影響で、メジャーなバンドよりもあまり知られていないマイナーなバンドのレコードを熱心に探す癖がついてしまった。だからイエス、ELP、ピンク・フロイドといったメジャーなバンドのレコードはほとんど聴かないままだった(ジェネシスとキング・クリムゾンは一部のアルバムだけは聴いた)。

●DJ Maniticore(剛田武)


1. Genesis / Lilywhite Lilith from "The Lamb Lies Down on Broadway" (1974)
2. King Crimson / Larks' Tongues in Aspic, Part Two from "Larks' Tongues in Aspic" (1973)
3. Emerson, Lake Palmer / Jerusalem from "Brain Salad Surgery" (1973)
4. Yes / Roundabout from "Fragile" (1971)
5. Camel / Rhayader from "Snow Goose" (1975)
6. Gentle Giant / Juest The Same from "Free Hand" (1975)
7. Premiata Forneria Marconi / Mr.9 'til 5 from "Photos of Ghosts" (1973)
8. Steve Hackett / Ace of Wands from "Voyage of the Acolyte" (1975)
9. Peter Hammill / Happy from "Fool's Mate" (1971)
10. Steve Hillage / Hurdy Gurdy Man from "L" (1976)
11. Slapp Happy / Casablanca Moon from "Casablanca Moon" (1974)



プログレと私③
1982年に大学へ入学し音楽サークルに所属。自分のニューウェイヴ・バンドの他に、先輩のプログレ・バンド(ジェネシスの曲名からとったKNIFEというバンド)にギターで参加。初めてカバーした曲がキング・クリムゾンの「太陽と戦慄パート2」。耳コピーしたが、楽譜に書けないので「ギャツツ、ギャツツ、ギャツギャツ」と覚えた。他にはクリムゾンの「21世紀の精神異常者」「レッド」、ジェネシス、スティーヴ・ハケット、UK、ブラッフォード、フォーカスなどをカバー。複雑な展開や変拍子を演奏するのはパンクやニューウェイヴのシンプルな演奏とは違う楽しみがあった。同時期に再始動したキング・クリムゾンのニューウェイヴ的なアプローチと、エイドリアン・ブリューのトリッキーなプレイに影響を受け、自分のニューウェイヴ・バンドにも変拍子やプログレぽいギターサウンドを導入した。
大学卒業後にサークルの先輩と結成したバンドFlower Tripではサイケデリックロックを志向した。個人的にはジェファーソン・エアプレインやグレイトフル・デッドのようなアメリカン・アシッドロックを目指したかったが、徐々にメンバーのヘヴィロック&プログレ趣味が強くなり、ブラック・サバスとキング・クリムゾンと頭脳警察をごった煮にしたようなサウンドに変わっていった。筆者はゴングのスティーヴ・ヒレッジを真似てディレイたっぷりのギタープレイをするようになった。1989年~1993年に当時のビートパンク中心のバンドブームから外れた音楽性を志向するバンドを集めて、企画ライヴ「アートロック宣言」を主宰した。主にサイケやフォークロックやゴシックパンクだった。お客で観に来たプログレバンドのメンバーと仲良くなり、彼のバンド、シンデレラ・サーチを吉祥寺Silver Elephantに観に行った。ピーター・ガブリエル張りにメイクした完成度の高いサウンドは素晴らしかったが、自分たちが求める「アートロック」とは相容れない気がしてイベントに誘うことはなかった。1994年にはメンバーの結婚や転勤がありバンドは解散。音楽演奏から遠ざかることになった。

●DJ角(Tsunoda Toshiya)


1-Grobshnitt(West Germany)<Synphony:introduction-Modulation>
2-Monica Törnell (Sweden)<Öje Brudmarsch>
3-Emil (Burgaria)<The Lunar Girl>
4- ВИА-75(Georgia/USSR)<Оровела>
5-Zoo (France)-<Endless Words>
6-Indexi (Yugoslavia)-<Da Sam Ja Netko>
7-Kostas Tournas (Greece)<Ana>
8-Lutajuca Srca(Yugoslavia)<Starac i More>
9-Axis (France/Greece)-<Bad Times Go>
10-Flamengo (Czechoslovakia)<Stale Dal>
11-Savoy(Romania)<Fata Mării>



プログレと私④
音楽関係の仕事をしていたので好きなヨーロピアン・ロックや前衛ジャズのCD再発などに関わる機会はあったが、特にプログレ好きを公言していたわけではない。2000年代に日本の地下音楽のライヴに足を運ぶようになると、テクニック至上主義や頭でっかちなアレンジが鼻につくようになり、所謂プログレとは真逆のエクストリームな表現を求めるようになった。その頃往年のプログレバンドが再結成され来日公演を行うようになったが、あまり心を惹かれることはなかった。2012年にR.I.O.の中心的チェンバーロックバンド、ユニヴェル・ゼロが来日。演奏は頭晴らしかったが、客層が「ロックコンサートというより法事の弔問客」(中原昌也談)のようで、何とも言えない疎外感を抱いたのも事実。
2013年頃から地下アイドル界に足を踏み入れ、何でもありの音楽性に深みにハマっていった。プログレを取り入れたアイドル・グループも存在しており、初めはプログレハード系の夢幻レジーナ、続いて正統派プログレのキスエクことXOXO EXTREAMにハマった。キスエクのファン層も年齢は高いが、アイドルヲタクの熱量は、プログレマニアとは違って筆者が共感できる親和性がある。キスエクにはフルートが入っている曲が多く、筆者が小学生時代に習っていたフルートを再開するきっかけになった。また、アイドルにハマる前に通っていたガールズガレージ系ライヴで観たサロメの唇で妖艶なメイクでフルートを吹いていたかずみんぐこと鈴木和美が最近まで参加していたプログレバンド、キクラテメンシスを聴いて、彼女が好きなフォーカスやジェスロ・タルなどフルート入りプログレバンドを聴くようになった。キャメルやジェネシスでもフルートが聴ける。2年前にバイオリンを始めてからはキング・クリムゾンのデヴィッド・クロスのプレイを参考にしたりもしている。30年前は聴こうともしなかったELPやイエスを聴きなおして、濃厚な世界観と熱狂的な演奏に圧倒されることも多い。かつて辺境(マイナー)志向だったおかげで、まだ聴いたことがない王道系プログレバンドがたくさんいるので当分飽きることはないだろう。そのうちチャンスがあったらプログレバンドもやってみたい、などと妄想する日々である。

●ゲストDJ Genet(AUTO-MOD)


Emerson, Lake & Palmer "Emerson, Lake & Palmer"
Soft Machine "Third"
Third Ear Band "Third Ear Band"
Auto-Mod "Auto-Mod"



プログレバンドはメンバーがいないと無理だが、プログレDJならばいつでもできる。というわけで第1回プログレ盤魔殿は最高に楽しいイベントだった。第2回も必ずやるので少しでも興味のある方は心待ちにしていてほしい。

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