A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【盤魔殿アマルガム Vol.40】Yoonkee Kim/黒天紀/音羽 信/Iro(Ra Orchestra)/天井桟敷/ジ・オウム

2022年09月21日 00時04分56秒 | 素晴らしき変態音楽


●DJ BEKATAROU a.k.a. 伊藤元


Yoonkee Kim / Cust Must Dover Tape
相変わらずbandcamp上で数多くの楽曲をアップロードし続けているYonkee氏
(昨年、前作”JUNALISを”盤魔殿AMALGAMで取り上げさせていただきました。)であるが、この度紹介する本作は50部限定のカセットテープでのフィジカルリリースである。
ロウファイに更にまたロウファイを重ね、、、狭間からゆっくりと流れ出すふにゃふにゃとした柔らかな蒸気が鼻腔を通り身体が腑抜ける…電車の走行音のサンプリングの増幅やマシンビートが放つ奇妙な信号がズブズブと皮膚に滲み入り脳髄を刺激し続け、感覚を震わせ、酩酊へと誘う…
後半ではキャッチーなシンセポップ(?)もあり、氏の多様な表現力を垣間見ることができる。
また、最初に述べたように日常的に楽曲を制作しアップロードしていて、フォーキーだったり、ブッダマシーンを用いていたりと一括りにできない実に多彩な表現とユーモアで聴く者を楽しませてくれるのでそちらも是非!
他愛無い日常の連なりを異様なまでの心地よさに浸してしまうミュージックビデオも必見だ!


●DJ Necronomicon a.k.a. 剛田武


黒天紀(小山景子)/黒天紀(2022)
80年代初頭、日本のチェンバーロックの草分け「ラクリモーザ」のヴォーカリストとして活動しつつ、シンガーソングライターとしてフォーク/トラッド色豊かな音楽を生み出した小山景子。日本のアシッドフォークの裏名盤として知られる94年のソロ・アルバム『記憶の水の運河』(1994年。2012年に『記憶の運河』としてCD再発)以来、28年ぶりのオリジナル作品集。黒い封筒に手刷りのカバーカードが附された装丁は、単なる自主制作盤ではなく手工業アーート作品と呼びたい。80年代からの盟友・工藤冬里のピアノや、ヴァイオリン、ヴィオラ、コントラバス等によるノスタルジックな室内楽をバックに、幻想的なポエトリーをクリスタルな歌声で歌う。30年前の無垢な精神性はそのままに、凄みと深みを増した表現力に陶酔する27分間。アシッドフォーク、ユーロトラッド、ジャズロック、プログレ、ネオクラシカルといったジャンルを超越した地下音楽の創造の極致と言えよう。先日下北沢pianola recordsで観たミニライヴでは、親子ほど年の差がある分水嶺の桜井晴紀と親友のように談笑しながらコラボする姿に、生涯現役夢想音楽家の矜持を感じた。いつか盤魔殿にお呼びしたいものである。


●DJ Vaby a.k.a. 大場弘規


音羽 信 / わすれがたみ
伝説が伝説を呼び日本のデヴィッド・アレンと称されている音羽信の幻アシッド名作(久保田麻琴と夕焼け楽団が全面参加)「わすれがたみ」(オリジナルリリースは1974年) が48年振りに最新リマスターされ発売!しかもオリジナル盤に即しジャケットはミューズコットン紙、またインナーのトレーシングペーパーによる2つ折り歌詞カードも再現されているんです。個人的に名前だけは知っていましたが、なにせヤフオクで出品されても¥200,000近い価格なんでほぼ諦めてたんですけど狂喜乱舞しつつ(笑)GET! 12弦ギターを駆使し、ほぼプロデュースを手掛けたといってもいいほど全体のサウンドに貢献した久保田麻琴をはじめ夕焼け楽団のメンバーが全面的に演奏を務めており、簡素ではあるが意識を“向こう側”に遥かに拡がる世界へ誘いつつも不思議な安らぎを与えてくれるアシッド・フォークの傑作でなので、機会があれば是非是非触れて頂きたい作品なのです。
  

●DJ Bothis a.k.a. 山田遼


Iro(Ra Orchestra) - マブリ ヘノコ 2010 CD Innerside Records
「ぽっから!ぽっから!ぽっから!木よ!水よ!森の精霊たちよ!出ておいでよ!」
Heidrun Holzfeind監督による「いろ」のドキュメンタリー映画「the time is now」の冒頭、織茂静子氏が森に向い奉じた祝詞が木霊する。80年代から活動する織茂敏夫・織茂静子の両氏によるシャーマニック・インプロヴィゼーションデュオ「いろ」を私が知ったのは、恥ずかしながらも2016年頃になってからであった。そのきっかけはもちろん盤魔殿主催の宇田川岳夫氏の紹介によるものであり、初めて「いろ」のライブを観た日の衝撃は今でも忘れることはない。織茂敏夫氏により打ち鳴らされる団扇太鼓に合わせ織茂静子氏が「マブリヘノコ」と祝詞を唱える。電気を用いないアコースティックな構成ではあるが、音の強靭さというのだろうか、とにかく織茂静子氏のボーカリゼーションに宿る霊力は圧倒的な本物であった。会場に居たモダーンミュージックオーナの故・生悦住英夫氏曰く、「いろの凄いところは怒りと祈りが交錯しているところだ」と言って感嘆していた。いかに親しい間柄でも滅多なことではアーティストを褒めない辛口の生悦住氏がそうのように言うのだから、これはよほどのことである。事実、「いろ」の後に出てきた3人組のバンドを1分程観た生悦住氏は「このバンドはあまりにもつまらないから帰る」と、隣にいた私に言い残し、マジギレして帰ってしまった。
さて、今回紹介する『マブリ ヘノコ』は2010年に「いろ」の活動拠点である音の家月見堂にてライブ録音されたものである。織茂敏夫氏によるピアノのナチュラルな残響音と、辺野古の少女が憑依した織茂静子氏のポエトリーリーディングにより発生した霊的蜃気楼の中には、偽りのない、本物のスピリチュアリティーが宿っている。


●DJ Athmodeus a.k.a. 持田保


今月の一冊:"ジ・オウム サブカルチャーとオウム真理教" 太田出版1995年
Dommune"村崎百郎特集"でも紹介されたコレ。現在話題の某カルト教団がカルチャー的に語るべきことナッシングなクソっぶりに対してコレではオウムを「サブカル・カルト教団」と定義。豪華絢爛な執筆陣による独自過ぎる解読が最高の一冊。なかでも宇川直宏氏によるカルト団体音楽特集は個人的にガチ影響受けましたね。何かを信じるという愚かさと愛しさ、そして人類の誰もが「信じる」ことから逃れられないというカルマを溝に刻んだレコードの数々を君にも確認してほしい。


●DJ Qliphoth a.k.a. 宇田川岳夫


天井桟敷『呪術音楽劇 邪宗門』FJLP1016
天井桟敷の『呪術音楽劇 邪宗門』アナログでの再発は、寺山修司の死後追悼盤として『身毒丸』とカップリングされて2枚組でオリジナルと全く違うデザインのジャケットで再発されて以来、39年ぶりである。来年が寺山修司没後40年にあたるのだ。ついこの前のことのように思えるが、歳月の立つのは早いものだ。長時間に及ぶ劇を1枚のレコードに収録することは不可能で、当初は2枚組にする予定もあったそうだが、1枚ものになって発売された。1998年にブルースインターアクションズから再発されたCDブックは、私と井上誠氏、とうじ魔とうじ氏の監修によるものだが、その際にLPに未収録の40分以上におよぶ和太鼓の土俗的なリズムと琵琶やシタールの奏でるドローンを完全収録し、三上寛の絶唱『犯されたら泣けばいい』を収録した。その後BELLANTIQUEレーベルから1枚もののCDが当初のLPと同じ収録で何度か再発されている。さらにDISKUNIONのレーベルFUJIからシーザーボックスが再発された際に、新しいオープンリールテープが大量に発見され、井上氏の自宅兼スタジオで、古くなったテープの乾燥、カビ取り、オープンリールデッキでの再生とデジタル化が行われ、棺桶風呂のシーンの音質などが格段に改善されたものが収録され、多くのファンの耳にクリアな形で聴くことができるようになり、シーザーの活動の再燃や、シーザー再評価が訪れた。まあ、オープンリールテープ関連の作業は井上氏のミュージシャンとしての技術がなしたもので、私は傍らで眺めていたにすぎない。いままでシーザー関係のレコードが再発された時と同様、私のコレクションから貸し出したジャケット(今は亡き森岳史さんから譲り受けたものだ)をデータ化し、経年劣化を修正した画像をもとにLPジャケットを作成しているのだが、このあたりの技術も素晴らしい。フランス公園の直前に作曲されたこの作品には、シーザーが当時愛聴したディープパープルやピンクフロイドの影響はもちろんのこと、マグマやカール・オルフの影響もうかがえ、日本の土俗的な和讃の影響も伺える。そしてその背後にはシーザーがヨーロッパで巡り合ったサイケデリックな体験もあるが、このあたりは拙著には書けなかった部分だ。70年代の初期に欧米に勝るとも劣らない独自のロックシーンが存在したことは、今はもう周知の事実であるが、これはその証拠となる記念碑ともいうべきアルバムである。すでに音源はいろいろな形で正規に聞けるのだが、レコードで聴くということは、あの熱い時代の空気を感じ取るためには必要なものだ。是非購入してほしい。


<―――――――――――----EVENT INFORMATION――――――――――――――>


【次回の盤魔殿】
盤魔殿 Disque Daemonium 圓盤を廻す會 vol.43
2022.10.29 sat 阿佐ヶ谷TABASA
18:00 Open/Start Charge 1,000YEN + 1 drink
Live:BEKATAROU a.k.a.伊藤元(モジュラー・シンセ)
Guest DJ:Reiko.A
+盤魔殿DJ‘s



【DJ Athmodeus a.k.a. 持田保】


The Third Mind vol.6
9/24(土)渋谷 頭BAR
19時-23時 1st drink 1000円
出演:DJ 脳Brain、DJ TKD、LIVE Rie_Fukuda+ケロッピー前田、恐山Vibration(持田保)

狂気音楽 a.k.a. クレイジーミュージック探訪
~ マーク・スチュワートとマーク・フィッシャー パンク、ダンス、アナキズムと資本主義リアリズム (トークイベント)
10/6 (水) @TABASA_asagaya
OPEN 19:00 START 19:30 チャージ1000円 ドリンク(キャッシュオン)
ケロッピー前田&持田保


【DJ Necronomicon a.k.a. 剛田武】


爆団バンド『初爆裂』
9月28日(水) 大久保水族館
19:00 Open 19:30 start 2500円+1D
ゲスト:センチメンタル思春期
O.A. PRINCE & ROMY
サプライズゲスト有
予約は下記に名前(ニックネーム)、枚数、お目当てをお願いします。
burstband.info@gmail.com

MOGRE MOGRU今後のライヴ・スケジュール
10/8(土) 『DIVE DEEP vol.3~モグモグとゆかいな仲間たち(仮)」@阿佐ヶ谷TABASA
10/27(木) 40分スリーマン@吉祥寺NEPO
11/6(日) 国立市民祭り(園田游さんと共に)@国立通り
11/17(木) 『DIVE DEEP vol.4』@吉祥寺NEPO


【DJ Bothis a.k.a. 山田 遼】


第59回国分寺市民文化祭 古典尺八演奏会
2022年11月20日(日曜日)
午後1時30分~(開場=1時)
会場:いずみホール 
〒185-0024 東京都国分寺市泉町3-36-12
入場料:無料




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