A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

FREE ZINE『盤魔殿アマルガム』最新号公開~岩本清顕/Meitei/Linekraft/IAN McCULLOCH/Nu Creative Methods/蠱的態/聖みろくさんぶ

2020年09月25日 00時25分15秒 | 素晴らしき変態音楽


盤魔殿DJ 今月の1枚  
盤魔殿DJ陣が毎月お気に入りの音源をご紹介。こだわりの選盤からどんな世界が広がるかお楽しみください。

●DJ Athmodeus a.k.a. 持田保
岩本清顕 / SOUGI (EM RECORDS) 2020


「愛はまた僕らを引き裂く!」。そもそもは2019年の盤魔殿でmoppy氏が岩本清顕 7EP”Love Will Tear Us Apart”をDJプレイしたことから話はスタート。その時&その場に居合わせた僕がこの7EPの「あまりにもあまりな」衝撃をブログで発信し、その余波がエム・レコード総帥の江村氏に伝播。結果38年の時を経て2020年の今日の世界に復刻されたという、まあ言うなれば「われらが盤魔殿がトリガーとなり作品化された」作品(ここマジで大事だから!!!)。問題の”Love Will Tear Us Apart”は言わずもがなジョイ・デヴィジョン、そして70’sポスト・パンクを代表する歴史的アンセムのカバーなのだが、ほらよくあるじゃないですか「いやー僕らこの曲メッチャ影響受けてて超リスペクトの意味込めてカバーしましたNo Music No Life」的なアレ。そんなアレとは全く真逆の「なんかここにゴルフクラブが落ちてるけどコレ今からあいつを撲殺するのに便利そうだから拾っておくか」的なノリでジョイ・デヴィジョン(というかイアン・カーティス)を使用しアレを殺しにかかる真摯さが何度聴いても本当衝撃だ。かつてパンク、ポスト・パンクにあった「引き算の美学」・・・・・いかに装飾をそぎ落とすか&ソリッドになるかがテーマな美学において、最終的にむき出しとなる「自己」といかに対峙するのか。その覚悟ととまどいの狭間で痙攣し続けた岩本清顕のこの活動の記録は、その後の彼の生き様を鑑みてもズシリとくるし、人間の持つ「業」をキメて遊ぶしかない「残された」僕らへのレクイエムでもある。


●DJ Vaby a.k.a. 大場弘規
Meitei ・ 冥丁 / Komachi (Special 2020 Edition)


オリジナルは2019年リリース。広島在住の作曲家Meitei ・ 冥丁のデビューアルバム『Komachi』の限定500部Special 2020 Edition(new sleeve design, beautiful 140gm cream vinyl and a 12 page booklet with words in Japanese & English from Meitei)。今作は彼の99歳で亡くなった祖母に捧げられた作品で、Komachiはつまり小野小町な訳で和のムードを導入し、よりアンビエントやニュー・エイジへと向かっていると思われます。彼の作品は「The Lost Japanese Mood」がコンセプトであり、本人の説明では「闇の中に眠っている魂を蘇らせる」という思いがあるそうだが、曲名も全て日本の地名や場所に人の名前などコンセプトは一貫しています。水が湧出するフィールド・レコーディングを用いた自然主義的なアンビエントの"Seto"や、グリッチ的なリズムとヒスノイズ混じりの音響と、お化けのような奇怪な声を被せて微睡わせるアブストラクトな"Maboroshi"等、アルバムからイメージ出来るのは日本各所を巡るサウンド・スケープだろうが、プレスリリースにもある通り横田進や竹村延和の牧歌的な雰囲気を思い起こさせるアンビエント性は、敢えて強調しない繊細な叙情性に満ちている傑作と言えるであろう。ヤフオクなどで¥10,000を余裕で超えるハイプライスで取引されているが、多くの人に聴いてもらいたい...いや、日本人なら絶対聴くべき作品ではないか!と思う今日この頃なのです。


●DJ Bothis a.k.a. 山田遼
Linekraft - The Man Who Was Plugged In (2008) CDr Three Plugs Records


1999年から2007年までの活動が記録されている日本の金属ジャンク・ノイズ・インダストリアルバンド「MOTHRA」か活動停止後、中心メンバーの大久保正彦氏が新たに始動したソロ・プロジェクトである「Linekraft」が2008年に自身のレーベル「Three Plugs Records」から出版したファーストアルバムが、今回紹介する『The Man Who Was Plugged In』。なぜ私がこの作品を紹介したいのかと言うと、とにかく一曲目の「War Emblem」が、ノイズ愛好家である筆者の心の名曲と言える、この世に存在するノイズ作品の中でも屈指の衝撃作だからです。冒頭にサンプリングされた「ワルシャワ労働歌」が高らかに歌われるなか、突如挿入される喧ましい金属打撃音、そして歪な電子音に並置される人間たちの阿鼻叫喚。これを名曲と言わずしてなんと言うのでしょうか。近年ではポル・ポトをテーマにしたデス・インダストリアル作品など、人間の負の側面に焦点を当てた作品が多く出版されているのですが、そういった死に言及した作品のはずなのに、なぜか私は「War Emblem」を聴くと「頑張って生きよう」と背中を押されるからなんとも不思議です。自分もこういった素晴らしい作品を作らなければならないと考えています。


●DJ Ipetam a.k.a. Rie fukuda
CANDLELAND / IAN McCULLOCH


1989年リリース、Echo&The Bunnymenフロントマン・イアンの最初のソロ作品。
大手チェーンレコード屋のワゴンセールで輸入盤を何気なく購入したところ、程よい刺激と浮遊感の混ざり具合が絶妙で、全く飽きずに長期間に渡る愛聴版となった。実はエコバニって真面目に聴いていないので、焦って一枚目"Crocodiles"からサブスクでDL、ヒットしたのは"Rescue"かな。
来日公演は友人から誘われていたが、聴いていないので行かなかった。。行けばよかった。当時のバイト先の先輩が行っていて、感想を聞かせて貰ったのをよく覚えている。
少し前のベスト盤は定価で購入したが、それも愛聴盤である。
いつ聴いても、イアンは素晴らしいボーカリストだと思う。普段の好みは図太いとかゴリ押しな感じだけど、彼の情緒不安定気味なシャウトは心に響く。この頃のイギリスのネオサイケバンドにありがちなスタイルだが、芯があると言うのか、こちらまで不安になる程ではなく。
このソロは、彼が自身のお子さんを得た後、そしてバンドメンバーの事故死の後にリリースされたものである。繊細さを保ちつつ、円熟味を感じる大層良質なポップスになっている。徹底した美意識もかわりなく。
いくら、彼が昔の西欧コンプレックスに満ちた少女漫画に出て来る様な美青年で、フールズメイトの投稿欄に似顔絵沢山投稿されてて変な先入観持ってても、バニーズを聴くべきだったのだ。
と言っても、彼イギリスの人っぽく、口悪いんだけどね。             


●DJ BEKATAROU a.k.a. 伊藤元
Nu Creative Methods / Superstitions


Pierre BastienとBernard Pruvostが結成した
フリーミュージックユニット、その名も”Nu Creative Methods"。

本作は1984年にイタリアのADNレーベルからリリースしたカセット作品にして宅録。
民族楽器や自作楽器等を用いている上に楽曲毎に非常に富んだ表現を魅せているので聴いていてとても楽しい。
しかし、この作品の魅力はそれのみならず、奇天烈の中にも
怪光を迸らせながら突き抜ける鍵盤音や空気を斬るような弦の衝撃音等...
生き生きと動いていて、彼らの相当真剣な発音の記録でもある。

けたたましく響き、四散する”サワリ”に胸は晴れ、プリミティブな音と音との間に舞う熱に幻惑される…
あたかも異次元の世界の未開の大地に住む民族が僕には聞き取ることができない言語でうたうかのように不定形に振動する音々に意識が閉じ込められ、スピードに呑み込まれては酩酊し、頭と脚が入れ替わり、内臓が裏返りそうだ…
そんな不思議な感覚が何度も降り立つユニークな作品だ。
因みにPierre Bastienは後に自作の自動演奏楽団”メカニウム"を創設する。


●DJ Necronomicon a.k.a. 剛田武
KOTEKITAI 蠱的態 / 山谷(やま)- やられたら やりかえせ オリジナルサウンドトラック


拙著『地下音楽への招待』の園田佐登志のインタビューで80年代中旬に、音楽評論家の平井玄が中心となって、吉祥寺マイナー周辺の地下音楽家たちが政治活動に関係を持ち始めたことが語られている。平井と共に音楽誌『同時代音楽』を刊行した竹田賢一が主宰する音楽ユニットA-Musikは世界の反戦歌や労働歌を演奏し、アイヌや在日問題に言及した。劇団・風の旅団の音楽制作を担当し、A-Musikにも参加した工藤冬里は朝鮮語でプロテストソング歌うなど、より直截的な活動に転じた。
もうひとり、絶対零度~ルナパーク・アンサンブルの大熊ワタルは、東アジア反日武装戦線の救援イベントや寄せ場の支援活動を通じて、山谷の労働者解放組織に接近し、日雇い労働者と山谷を支配する右翼暴力団との闘争を描いたドキュメンタリー映画の音楽制作を担当した。大熊(p,cl)が、篠田昌已(sax)、中尾勘二(sax,ds)、風巻隆(perc)、西村卓也(b)等、A-Musik、PUNGO、Che-shizu、マヘルシャラルハシュバズ、ルナパーク・アンサンブルといったバンドのメンバーを集めて録音したサントラ音源が正規CD再発された。オリジナルは86年のカセット。管楽器をメインとしたブレヒト演劇や戦前の軍楽隊を思わせる哀感のあるブラスバンドにフリージャズや現代音楽が乱入するサウンドは、否応なしに政治闘争の悲愴を感じさせる。映画の方は、ふたりの監督が右翼により殺害されるという大波乱の上に完成。学生運動や過激派の活動が衰退し、平和ボケが始まる80年代の日本の裏側で斯様な悲惨な闘争があったことは忘れてはならない。
これを境に地下音楽と政治運動の関係は薄れていくが、音楽性は大熊と篠田が結成したシカラムータに引き継がれることとなる。35年経っても古臭さを感じさせない文字通り蠱惑的な地下音楽ドキュメントである。


●DJ Qliphoth a.k.a. 宇田川岳夫
『聖みろくさんぶ』[ First Edition to 100 : Includes - Picture Innerbag with Biography ]
- V. A... ( LP/12") : 定価3,500円(税抜) . .... 2020年09月15日 発売 -



これは静岡市弥勒にある特殊おでん屋『 みろくさんぶ 』監修の記念的なコンピレーションアルバムである。野田篤経営の同店は、静岡の繁華街に多いおでん屋でありながらライブスペースと録音スタジオならびに中古レコード屋を兼ねた、静岡独自の場所である。
このアルバムは同店発行のサブカルフリーペーパーMultiplex Magazine『 MilkyWay 』(※同店が2012年冬から発行。2013年夏の3号を最後に中断 望月治孝 編集 )の流れを受けた最終完結盤。店主である野田篤が創業時の音楽貸スタジオ→おでん屋→ライブスペース→民泊→中古レコード屋と多業務に常に変貌を遂げてきた最終章とされている。
静岡インディーロックシーンにおいて、本アルバム参加ミュージシャン達は同店主の野田篤がかねてから互いに影響し合った、独特で希少な表現者達である。
その筆頭は80年代から静岡アンダーグラウンド演劇の女王として活躍した鷹匠訓子ことKonori。アングラ劇団熾天使舘(死天使館)を経て現在は水銀座看板女優であり、Current93のDavid TibetやNurth With WoundのStevenStapleton、WhitehouseのWilliam Benettなどとの交流も深く、1989年のCurrent93来日公演の際にはスーパーナチュラルオーガニゼーションの不誠実な対応に路頭に迷ったCurrent93のメンバーたちを温かく迎え、自らのバンドMagick Lantern Cycle との共演で録音した音源はCurrent93のアルバムに収録されている。このアルバムには現在Konoriが率いるバンドKonori spの新曲2曲が収録されている。Konoriのロリータから魔女まで変幻自在なボイスと魔術的な歌詞、野田篤のサイケでアグレッシブなギターを聞くことができるのも大きな魅力だ。野田はほとんどすべてのバンドに参加し変幻自在なギターを聞かせてくれる。
このアルバムは、静岡独自のアンダーグラウンド・ミュージックの魔力に触れようと思ったら買い逃せない1枚である。注文は以下のアドレスを参照されたい。
http://fuzainoisu.html.xdomain.jp/mirokusunbu.html?fbclid=IwAR12ynxwE8hXr2kne5j2qFIW1KSWsj_1Fh2IYkuBBlELkrYa2qMzuwkthoo

収録曲
A1 Power of pleco / Kevin
A2 ソナー/ ユー・メイ・ドリーム
A3 Konori sp / Hotel 熾天使舘
A4 ソナー / 天国への階段
B1 望月治孝 / ミューズに
B2 Konori sp / 母への手紙
B3 ソナー / スタンド・バイ・三―
B4 power of pleco / F.O.S.
B5 ソナー / くじら12号

オタのします
クラウド盤魔殿
公開中



--------------------------------EVENT INFORMATION---------------------------------------
盤魔殿 presents
NEO UNDERGROUND

異端DJ イベント『盤魔殿 』が贈るライヴ+ DJ イベント『 NEO UNDERGROUND 』スタート。新時代のアンダーグラウンド・ミュージックの現在を詳らかにして、来るべきコンピレーション『 Tokyo Flashback 2020( 仮 』への布石とする。


盤魔殿 presents
NEO UNDERGROUND vol.1

2020/9/27 sun
渋谷DJ Bar EdgeEnd
19:00 open/start
¥1000 (+ 1drink 別
*定員に達したため予約終了

Live Act :
Marc Lowe
UH(内田静男+橋本孝之)+剛田武
Lower Than God (Marc Lowe + Takeshi Goda)

DJ's :
DJ Qliphoth a.k.a. 宇田川岳夫
DJ Ipetam a.k.a. Rie Fukuda
DJ Bothis a.k.a. 山田遼


盤魔殿 presents
NEO UNDERGROUND vol.2

2020/10/31 sat
阿佐ヶ谷TABASA
19:00 Open/Start
¥1,000 + 1 drink 別 Live 投げ銭制

Live Act:
モリモトアリオミ(vo, g)
Risaripa (vo, electronics)
*スペシャル・コラボ有

DJ's:
DJ Athmodeus a.k.a. 持田保
DJ Vaby a.k.a.大場弘則

Talk "Underground Now"
宇田川岳夫×剛田武
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