A Challenge To Fate

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【私の地下ジャズ愛好癖】激情のパワフルテナーマン、片山広明『EQUATOR』『DREI SHERRY』

2018年11月22日 02時11分05秒 | 素晴らしき変態音楽


11月13日に肝臓がんで亡くなったサックス奏者片山広明。副島輝人著『日本フリージャズ史』によれば70年代前半に藤川義明や翠川敬基らのナウ・ミュージック・アンサンブルに参加し、ハプニングを取り入れた奇矯なパフォーマンスを行なっていた片山は、70年末に梅津和時と共に生活向上委員会やドクドル梅津バンド(D.U.B)で活動し、RCサクセション/忌野清志郎とのコラボを通してジャズ文脈を超えて著名度を得た。藤川義明&イースタシア・オーケストラや渋さ知らズといった破格のジャズアンサンブルに重要なソリストとして参加、アーバン・サックスやベルリン・コンテンポラリー・オーケストラの日本公演に参加するなどし「片山の経歴を追っていけば日本のフリージャズ史の重要なポイントに幾つも出会うことになる」と副島に言わしめた存在。

筆者は80年代生向委かドク梅のどちらかで片山のことを知った。ラジオか雑誌で「ステージで“サックスの掛け合い“と称してサックスのベルの中に水を入れてお互いにかけ合う破天荒なパフォーマンスをする」と聴いたのが梅津と片山のことだったのはたぶん間違いないだろう。そうは言っても実際に片山のライヴを観たことがあるかどうか。渋さ知らズで観たことは数回あるのは確かだが、リーダーグループを観たかどうか記憶がすっかり飛んでしまっている。筆者がアルト派だからかもしれないが、寧ろ片山の実力が評価されたのが他人のユニットやビッグバンドや歌手のバックだったことも大きな理由だろう。

片山が80年代にリリースした2枚のLPは「激情のパワフルテナーマン」というキャッチフレーズに違わぬ豪快なブロウと、その逆の繊細な感性と叙情性に満ちたいぶし銀の佳作である。

●KATAYAMA HIROAKI『EQUATOR』

Music Box MB-1001 / SHODOKU-2(1983)
片山広明(as,ts,bs)

サックス・ソロ・アルバム。ドクトル梅津バンドの『Doku Ume Band Plays Deluxe At Sagae』(81)をリリースした片山のレーベル消毒レコードの第二弾。アルバムタイトルは「赤道」で、レコードはA面=北極サイド、B面=南極サイドとなっており、各面共に収録曲名は「Spring(春)」「Summer(夏)」「Autumn(秋)」「Winter(冬)」。 82年9月13日 府中zelkova hallにて録音。メインのテナーを中心に、バリトンとアルトも使ったソロ演奏は、トレードマークの骨太の咆哮は勿論、哀愁のメロディのバラードや多重録音の独り集団即興など、多才なプレイが満載。地下ジャズに留まらぬメジャーなポップ感覚は、RCサクセションをはじめとするロック/ポップスとのコラボが片山の望むところであったことを証明している。

●KATAYAMA HIROAKI『DRE SHERRY』

No Trunks Records NT2502(1987)
片山広明(ts)、早川岳晴(b)、角田健(ds)

生活向上委員会大管弦楽団以来の気心の知れたパートナー早川岳晴と、独自の活動で日本地下ジャズを支えるドラマー、つの犬こと角田健とのトリオで1987年8月5,6日 目黒YAMAHA 1stスタジオで録音された作品。アルバムタイトルは「三つのシェリー酒」でありドライシェリーと引っ掛けている。酒好きな片山らしい。やはりパワフルなテナーのプレイがたっぷり聴ける。早川のエレキベースが80年代的な軽快なポップセンスを醸し出す。綿密な曲構造は片山がストレートアヘッドなジャズを完全に消化した上で、破天荒なプレイや変態的な作風を発展させたことを物語る。ソニー・ロリンズっぽい、と言っても許されるだろうか。

吉田哲治×早川岳晴×片山広明 2018.7.10 No8 Hallelujah


テナーマン
記憶に残る
パワープレイ

パワーだけでなくエモーションに満ちた実直なテナーマンの若き日の記録である。

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