A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

『Jazz Artせんがわ2018』その2:ルネ・リュシエ/原田節/坂田明/ピーター・エヴァンス/藤山裕子/レジー・ニコルソンetc.@調布せんがわ劇場 2018.9.16(sun)

2018年09月17日 12時53分58秒 | 素晴らしき変態音楽


第11回 JAZZ ART せんがわ2018
@せんがわ劇場、仙川駅前公園 ほか

Jazz Artせんがわ2018最終日の日曜日は夏に戻ったような快晴。昨日は雨で出来なかったJAZZ屏風や公演ライブが行われ、市民を巻き込んだ盛り上がりを見せた。自然発生的に子供たちのドラムと出演ミュージシャンの即興セッションがはじまった。これほど作為のない(ノンイディオマティックな)ドラミングは聴いたことが無い。いつまでも観ていたかったが、劇場プログラムの時間になったので離脱。



9月16日(日)16:30-18:00
Quebec/Japanプログラム
ルネ・リュシエクインテット/原田節×巻上公一 Alive Painting:中山晃子



今年から始まったカナダ・ケベック州のヴィクトリアヴィル・フェスティバルとの交流プログラム。まず今年5月のヴィクトリアヴィルに日本からPHEW、SAICOBAB、アフリランポが出演。そしてせんがわにカナダ・ケベック出身のギタリスト、ルネ・リュシエのクインテットが来日。さらにオンド・マルトノの原田節と巻上公一のテルミンの共演、ライティングはAlive Paintingの中山晃子というせんがわらしい布陣。

ルネ・リュシエクインテット RENÉ LUSSIER – Quintette [ルネ・リュシエ(ギター、ダクソフォン)、ルジオ・アルトベッリ(アコーディオン)、ジュリー・ウル(チューバ、ユーフォニウム)、マートン・マデルスパック(パーカッション)、ロビー・キュスター(パーカッション)]、原田節(オンド・マルトノ)、巻上公一(テルミン)、中山晃子(映像)

●原田節×巻上公一


35年前にメシアンの『トゥランガリーラ交響曲』で知ったオンドマルトノは、テルミンやルイジ・ルッソロのイントナルモーリと並ぶ幻の電子楽器として憧れの存在だった。その後テルミンは復活して何処でも使われるようになったが、オンドマルトノは演奏はおろか、現物を見ることも殆どない。一度『トゥランガリーラ』のオーケストラのコンサートで観たことはあるが、至近距離で観るのは初めて。骨董品のような格調ある外観が印象的。出てくる音が想像以上にバラエティに富んだエフェクト効果があり、テルミンの奇怪音とモノクロームの映像照明と相俟って、昔のSF映画を思わせる懐かしくも新鮮なイメージを喚起した。

●ルネ・リュシエクインテット


何の予備知識なしに観たので、リュシエがフェンダー・ジャズマスターを持って出て来たのに驚いた。名前に「JAZZ」と入っているにもかかわらず、このギターを見ると、マイブラをはじめとするシューゲイザーや、テレヴィジョンやソニック・ユース等NY系ノイズロックをイメージしてしまう。その印象に違わず、ジャズというよりアヴァンロック色の強い演奏を繰り広げた。ツイン・ドラム、アコーディオン、チューバというユニークな編成を活かした異形のサウンドは、シャンソン/タンゴ/ニューオリンズ/ブルース/現代音楽/フリージャズ等多様なスタイルのアマルガムといえる。カナダ地下音楽シーンの奥深さを想像させるステージだった。最後は原田と巻上も参加し、変態ロック+変態エレクトロの共演となった。




9月16日(日)19:30-21:00
藤原清登ディレクション
坂田明×ピーター・エヴァンス×藤原清登×レジー・ニコルソン×藤山裕子


*この回の看板の写真を撮り忘れたため、Twitterの拾い画像を掲載しました。


Jazz Artせんがわ2018の最後を飾るプログラムは、日米の精鋭が集合する「ジャズ」色の強いラインナップ。ピーター・エヴァンスに加え、二人のニューヨークのミュージシャンが参加し、進化するジャズの現在形を見せてくれるに違いない。「ジャズの落ちこぼれとしてその先を目指す」などと嘯いている筆者だが、結局のところジャズに憧れるいち愛好家(アマチュア)に過ぎないのだから。

坂田明(サックス)、ピーター・エヴァンス Peter Evans(トランペット)、藤原清登(ベース)、レジー・ニコルソン Reggie Nicholson(ドラム)、藤山裕子(ピアノ)

●ピーター・エヴァンス


20分の完全ソロ演奏。筆者の周りではエヴァンスのソロ・アルバムを高く評価する人が少なくないが、正直言ってアルバム一枚聴き通すのはしんどいと感じる。しかしライヴで観るのは面白い。どんな音をどうやって出しているのか、演奏法の秘密が分かっても、やっぱり謎に満ちたエヴァンスの異形の音楽ワールドに興味が尽きない。

●レジー・ニコルソン×藤山裕子


NYをベースに活動する藤山のことは今回初めて知った。ステージ上遠目に観る風貌は小学校時代の担任教師を思わせる。力強いピアノの音に惹き付けられる。フリージャズのドシャメシャな要素はあるが、クラシック/現代音楽風の冷静なアプローチと、谷川俊太郎の『繰り返す』を朗読する凛とした声は、やはり教師のイメージに合致する。ニコルソンの70年代ロフトジャズを彷彿させる有機的なドラミングも素晴らしかった。

●坂田明×ピーター・エヴァンス×藤原清登×レジー・ニコルソン×藤山裕子


坂田・エヴァンス・藤原のトリオ演奏でスタート。のっけからフルスロットルで吹き捲くる坂田とエヴァンスのインタープレイに、ベースに覆い被さって弦を弾く藤原。藤山とニコルソンが加わり、ジャズの熱量を絵に描いたような演奏が繰り広げられる。ある意味で古典的フリージャズの在るべき姿とも言えるが、分かっていても昂奮せずにはいられない。目新しいもの、今までになかったものを追求することは必要だが、今あるものをとことん楽しみ尽くすことも必要不可欠な挑戦である。「フリージャズは死んだ」などとしたり顔で現実逃避するよりも、「フリージャズで何処まで行けるか」という命題に挑むことこそ正しい道ではなかろうか。



フェスティバル
続けることに
希望がある

せんがわ劇場が指定管理者制度になり、11年間続いたJazz Artせんがわが中断される可能性があるという。現在調布市議会で審議中とのことだが、世界でも希有なファスティバルを存続させる為に何か出来ないだろうか。アイデア求む。




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