A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【Disc Review】橋本孝之+内田静男/UH Takayuki Hashimoto + Shizuo Uchida

2018年03月07日 03時09分07秒 | 素晴らしき変態音楽


UH Takayuki Hashimoto + Shizuo Uchida
CD ltd to 250 Free Wind Mood series
Label : An’archives Réf : [An’13]
7 inch silkscreened jacket with obi (drak blue or grey), insert and postcard Printed by Alan Sherry
Liner notes by Michel Henritzi
release date : March 3, 2018

消失する残響の往方(ゆくえ)を求めて

ブッ壊れサイケデリックアシッドブルースバンド「kito-mizukumi rouber」のメンバーでもある橋本孝之(sax,hca)と内田静男(b)のデュオユニット「UH」の1stアルバムが、フランスのAn’archivesレーベルからリリースされた。10インチLP情趣演歌シリーズをはじめ、日本の地下音楽の作品を多数リリースするこのレーベルらしく、帯付美麗シルクスクリーン7インチジャケットの中にポストカードとライナーノーツ紙片が挿入された瀟洒な作りは、鄙びた観光地の土産物屋に並ぶ手作りの工芸品の香りがする。ドーナツ盤やコンパクトEPではなく、黒封筒に入った銀色のコンパクトディスクなのが21世紀的ではある。


工藤冬里/à qui avec Gabriel/Reiko.A@大久保ひかりのうま 2015.4.11(sat)
【ビビッと☆演歌ジャックなう!】JOJO広重/白石民夫/À Qui Avec Gabriel/工藤冬里/灰野敬二
Michel Henritzi + à qui/Junko+Sachiko/Mickey Guitar@Yellow Vision 2014.5.27(tue)

内田は90年代にPSFの『Tokyo Flashback』や海外のコンピに参加したユニット「おんなこども」や、灰野敬二の「滲有無」のメンバーとして活動、21世紀以降はあぶらだこの長谷川ヒロトモとの「長谷川静男」やアシッドフォークユニット「Le Son De L'os」、またソロやセッションで活動、「猫猫商会」名義でグラフィックデザイナーとしても活動している。その歩みは東京地下音楽の裏街道と言ってもいい。橋本とは2013年にPSFから.esが『Void』をリリースした頃からの付き合いで、橋本が東京に移ってからはしばしば共演を重ねている。世代的にもよほど気が合うのかもしれない。

二人の頭文字をとって「UH」と名乗り始めたのがいつ頃かは分からないが、名前を付けることで一過性のセッションではなく、永続性を求めるひとつのユニットとして成長・進化してきた。筆者がUHを初めて観たのは2017年3月20日大久保ひかりのうまだった。ハーモニカを舐め回す妖艶な橋本とストイックな内田の対比が面白かった。内田の参加する長谷川静男に通じる音響(〜系ではなく文字通り「音」の「響き」)を主眼とする演奏形態ではあるが、否応無しに「歌心」を想起させる長谷川に対して、橋本のアンチヴォーカリズム/無人格性/物音主義/植物味が加味されたUTにおいて、「響く音」は演奏の場に出現し時間と共に通過する風景・情景に他ならない。それは列車の窓から眺める風景ではなく、演奏者と聴取者が共に存在する今この瞬間であり、外から眺められるものではなく、我々を内包する空間全体として律動する「SCENE」である。それが現出するのはライヴ空間だけではなく記録された録音媒体に於いても同様である。そこに演奏者の肉体は必要としない。なぜなら演奏者自身も情景のひとつとして消失し非在となるからである。このCDを再生すると一瞬にして巻き込まれる深い残響、そこには演者も聴者も編者も存在しない情景描写としての「音」だけが響き合う。その有様を外から眺める者がいたならば「FREAK SCENE」と名付けるかもしれない。


工藤冬里/Reiko.A/UH(内田静男+橋本孝之)@大久保ひかりのうま 2017.3.20 (mon)
フローリアン・ヴァルター/橋本孝之/内田静男/川島誠/増渕顕史/SNH@高円寺Fourth Floor 2017.12.2(sat)

ライナーノーツでミッシェル・アンリッツィはランボーの詩の一節「ある日の夜、私は膝の上に美を乗せて座った。彼女は苦痛になった。私は彼女をののしった」 を引用して、美が消失し魂が燃え尽きたあとの沈黙がこのレコードの本質だと語っている。そして筆者は沈黙の先の往方知れずの徒然に思いを馳せながら眠りの中に消えて逝くばかりである。

響き合う
管と弦の
摩擦熱

The Freak Scene Psychedelic Psoul
コメント
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