A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

混沌から不死への極寒の行軍〜NECRONOMIDOL(ネクロ魔)新作『DEATHLESS』曲解分析

2017年02月23日 02時55分17秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


『DEATHLESS』とは「不死の、不滅の、永遠の」という意味。背景にはネクロ魔を運営してきて何度か「殺そう」と思ったというプロデューサー、リッキー・ウィルソンの証言がある。メンバーチェンジが続き、メンバーにとっても不安な気持ちがあっただろう。しかし熟考の結果「殺すわけにはいかない」との結論に至り「ネクロノマイドルは永遠に不滅です」という宣言を高らかに鼓舞するのがこのアルバム『DEATHLESS』である。朽ちかけた寺院の階段を上がったところが不死への入口。とは言っても光の射さない祠の道が導く先は不老不死の桃源郷ではない。舌舐めずりをして待ち受けているのは五体の暗黒少女の屍体ならぬ姿態であった。



暗黒系アイドルユニットNECRONOMIDOLを産み落したのはリッキー・ウィルソンというひとりの男の頭脳だが、彼の狂信的な妄想が、即座に理想に転じた訳ではない。日本のホラー映画の世界観をヘヴィメタルの亜流的解釈で描き出すアイデアは、アイドルを目指すのが心の無い人形かアンドロイドであれば現実のものとなったかもしれない。彼の誤算はひとりひとり感情を持ち個性を持ったヒューマンビーイング、即ち生身の人間を何人も集めてしまったことである。自分の手足ですら思うように操れない人間の能力の限界を最初から思い知らされることとなった。恰も八甲田山の死の行軍のように、ひとりまたひとりと脱落して行く屍体を振り払いながら歩み続けた3年間は、嬉しいことも悲しいことも悔しいことも数え切れずあっただろう。それにも拘らず今も諦めることなく不死の姿態を手に入れようと進み続けるのは何故か?その答えがここにある。


NECRONOMIDOL、本日発売2ndアルバムに過去のワンマン映像

1 END OF DAYS(日々の終焉)
  作曲 Kei Toriki
  作詞 NECRONOMIDOL
オープニングからいきなり「終わり」の歌とは物騒極まりない。ステージでは五つの姿態がお互いを抱き合い重なり合いひとつの塊に変貌する振り付けが幻想的なナンバーだが、CDで聴くと重厚なギターと連打されるバスドラの音圧に圧倒される。音の波間に浮き上がるクリアなヴォーカルがイマジネーションを刺激する。複数のサウンドのレイヤーが暗黒系の名に恥じない密室感を醸し出す。

2 4.7L
  作曲、編曲 OKAYAN
  作詞 NECRONOMIDOL
タイトルの意味は明らかにされていない(他の曲も同様)が、ドゥーミーなコーラスにダンスビートが絡み地下の住人のディスコテークが開幕し、ファルセットヴォイスの「深夜だけのリズムで遊ぼう」との誘いに不器用なダンスを踊るうちに、気がつくと首筋に噛み付かれて命が闇夜に真っ赤に溢れ出し、暗黒少女の愛情表現に恍惚の死を遂げる。

3 SKULLS IN THE STARS(星々の中の髑髏)
  作曲 DAN TERMINUS
  作詞 NECRONOMIDOL
2015年の3rdシングルのリードトラックを新編成メンバーで再録。メタル/ドゥーム色が薄く軽快なビートに貫かれた作風はネクロ魔ナンバーでも1,2を争うメジャー感がある。とは言っても全国興行収益No.1ではなく、ミニシアター系人気投票No.1という意味でのポピュラリティである。星空を切り裂いて冥界への旅を誘うこの曲も終末の予感が濃厚である。

4 KERES THANATOIO
  作曲 岩永梓 (Karma Score)
  作詞 NECRONOMIDOL
再びメタリックなギターとツーバスドラムが炸裂。低音域のコーラスが「DEATH IS CALLING(死が呼んでいる)」と不吉に繰り返す中で、偏執狂の愛の言葉が歌われる。凱旋曲風のサビの「今夜聞かせて悲痛な叫び」とは死ぬ気で愛したい少女自身の心の断腸の叫びに通じる。終始鳴り響くハードコアなサウンドが純真な乙女の闇の世界を煽動するのだろう。ちなみに筆者の一番のお気に入りである。

5 重慶REDLINE
  作曲 ハシダカズマ(箱庭の室内楽)
  作詞 NECRONOMIDOL
打って変わってテクノビートが突進するダンスナンバー。聴き手が踊るだけでなく、演じ手(ネクロ魔)の腰振りダンスに注目したい。「重慶REDLINE」とは中国現代美術の企画展のタイトルとも考えられるが、英語まじりの散文詩的な歌詞から想像するに、死の迷路を走る鉄道の旅を歌った曲のようにも思える。

6 HEXENNACHT(魔女の夜)
  作曲 福山タク (摩天楼レコードTOKYO)
  作詞 NECRONOMIDOL
先日の暗黒教団(ファンクラブ)限定ライヴで今泉怜のピアノの伴奏だけで歌われた暗黒フォークソング。時計の秒針の音、心臓の鼓動のようなリズム、悪魔の足踏みオルガン。ヴァルプルギスの夜に異境の死者の血の味を求めて集まる邪神の鎮魂歌。「短い命の行き止まり」と言う通り、生者の間を歩き回る死者と無秩序な魂は闇の彼方に追い払われる。

7 NEPENTHE
  作曲 ハシダカズマ(箱庭の室内楽)
  作詞 NECRONOMIDOL
NEPENTHE(ネーペンテース)とは悲しみや苦痛を忘れさせると古代ギリシア人が考えた薬のこと。エイトビートのマイナー歌謡ロックの歌メロには、悲しみを忘れるどころか毎晩孤独の苦痛を味わって夜を呪う人間の性(さが)から抜け出せない奈落が描かれている。都会の夜は起源の夜であり最後の夜だという。「東京」という固有名詞に一瞬ドキッとする。

8 ITHAQUA(イタクァ またはイトハカ)
  作曲 岩永梓 (Karma Score)
  作詞 NECRONOMIDOL
NECRONOMIDOLの起源でもあるクトゥルフ神話の神の名前が冠されたアルバムのリードトラック。スピードメタルサウンドに美しくも刹那的なコーラスハーモニーが疾走する。高度なハーモニーはアイドルの領域を飛び越えて、実験演劇や現代合唱曲の範疇に侵入する。中間部のアカペラシンガロングの異教の旋律は、生命を賛美する一致団結では無く、宗教的な高揚感を煽って真冬の絶対零度の指先に薄明の火を灯す奇跡を呼び起こす。死の淵から蘇った『DEATHLESS』の生命力は、賛美しなくても自らメラメラ燃え(萌え)上がる。それ故、極寒の深雪の中で素肌を晒した薄い衣装で敢行したPV撮影から誰ひとりとして遭難することなく無事帰還できたのだろう。

NECRONOMIDOL - ITHAQUA


極寒の行軍から帰還した彼女たちは、このアルバムで何度も歌われる「終焉の予感」を乗り越えて、不死の魂と姿態を手に入れることが出来たのだろうか?それを知るにはまだ暫く彼女たちの活動の現場に足を運ぶしか無い。それによってわたし自身も失われざる存在に近づけるかもしれない。

SCREAMING FOR VENGEANCE
ONE MAN TOUR
第二夜 新宿LOFT
3/14(火)
NECRONOMIDOLと共に再び墓場へ…
ネクロ魔史上最大の暗黒が待っている



生き返る
だけじゃ足りない
生き荒び



NECRONOMIDOL 「DEATHLESS」発売記念インストアミニライブ&特典会
2月22日(水)19:30
HMV record ship 新宿ALTA

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