A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

コロボックルズ@渋谷BURROW 2014.3.1(sat)~メロディー中枢の快楽

2014年03月03日 02時10分43秒 | ロッケンロール万歳!


[第五回小人独演会~TOKYO POP channel Special~]
コロボックルズ ワンマンライブ




そもそも音楽はどのように始まったのか。サルから類人猿を経て進化してきたヒューマンビーイング(以下HB)に神がお与えになった音の出る器官は声帯だけであった。初めはグルウゥゥルァァイィとかガギィゴォゲェェブルゥエァァゲガァとか唸り声しか出せなかったHBの一個体が(おそらく同時発生的に)、喉ちんこの奥の筋肉を弛緩収縮することで、今までにない珍妙なトーン=音(声という概念が生まれるのは数世紀後と言われている)が生じることを発見した。面白さのあまり彼は睡眠と食事を忘れて自らの口内から頭蓋へと伝わるトーンの振動を変化させることに没頭し、睡眠不足と栄養不足と喉の炎症で、命を落とすこととなった。


(写真の撮影・掲載については出演者の許可を得ています。以下同)

彼の息子たちは同じ愚を繰り返すことなく、喉の筋肉の調整方法を体得しようとした。三代目になって遂にトーンの高低をある程度コントロール出来るようになった。四代目(仮にHB四世とする)は、先祖代々伝わるこの魔術的技術を体系化し、喉のトーンのコントロールにより肉体的・精神的快感を得る方法を完成させた。今となっては検証のしようは無いが、間違いなくそれは十二音とかリディアンモードとかヨナ抜き旋律といった、現在知られている音楽理論とは無関係である。HB四世及び彼の周りのHBにとって気持ちのいい一連のトーンの連続体、それこそメロディーという概念の誕生の瞬間だった。たいへん紛らわしいが、概念とは理論・学説という意味では無く、それまで存在しなかった事象が確固たる実在として生じたことを、人類に限らず何者かが意識し得た、という現象・^フェノメノンを意味している。それは集合的無意識にも当てはまるし、当然ながら文書化はおろか、言葉が生まれる遥か前の出来事である。



HB四世が世に問うたメロディーという概念は、同時期に概念化された、足元の石を掴んで頭上へ掲げ、そのまま万有引力に逆らわず下方へ高速で移動させる、すなわち振り下ろすことで、獲物の骨を砕くことが出来る(石と骨が逆でも可)ことに象徴される「道具」の副産物として発生するゴツン&ガーンというサウンド=音に気づいた好奇心旺盛なHBの誰か(単数とは限らない)が、その行為を連続的に繰り返した際に生じるサウンドの連続体が、心臓の鼓動に近いせいか(当然彼の意識の中に心臓という概念は無かったが)、何だか肉体的・精神的快感を得られることを発見し、結果的に「リズム」の概念を打ち立てた(最初のリズム発見者はメロディー発見者と同じ末路を辿ったことは言うまでもなかろう)ことと結びつき、「メロディー」+「リズム」によるより高度な表現へと進化する。さらに後年概念化された「ハーモニー」が加わることになるが、それを解説していると、睡眠不足と栄養不良と腱鞘炎で命を落とすことになるのでここでは割愛する。すなわち、メロディーこそ音楽の源流といえるのである。



上記のように人間の心の中心には本能的に「メロディー」への希求が内包されているはずだが、近年の音楽の動向をみると、あまりにもメロディーを軽視し、リズムやハーモニー、さらにトーンやサウンド自体へ傾斜し過ぎている傾向が伺える。メロディーは勿論、リズムやハーモニーを含む全ての約束事から解放されたフリーミュージックを志向したデレク・ベイリーの生涯を描いた『デレク・ベイリー:インプロヴィゼーションの物語』という伝記本が出版され話題になっている。二段組で580ページ、総重量約1kgというヴォリュームに圧倒されて未だ読み始めてもいないが、ベイリーが「解放」を目指したことは、翻って考えれば「メロディー」が如何に強く人間性の根源に座を占めているかの証明に他ならない。自由になる為には、不自由の根源を知る必要がある。ベイリーの音楽活動の原点にはメロディーへの徹底的な探究があったのではなかろうか。

  

現在アメリカツアー中の下山(GEAZAN)が最新アルバム『凸-DECO-』でど真ん中のROCKを鳴らした。FUCK YOUアティテュードで如何に破壊的なサウンドを繰り出しても、核にはそれに負けない圧倒的なメロディーが頑として存在する。下山(GEZAN)がトラッシュやジャンクの罠に陥らないのはメロディーへの確信に他ならない。裸一貫で挑んだ言葉も通じないアメリカで、彼らが日に日に支持者を増やしている理由はメロディーの神通力にあるに違いない。

  

時を同じくして、奇遇にも同じ大阪から登場した3人組がコロボックルズである。下山(GEAZAN)が世代的にも些か捻くれた態度を纏うのに対して、この小人トリオは最初から迷うことなく一直線にメロディーのパワーを放射する。友人の結婚式の余興のために集まった寺田恵子(vo.g)、いしもんこと石本幸景(b.cho)、ぬまこことrina(ds.cho)の3人が最初に作った曲が「HAPPY DAYS」と「手紙」。祝福の歌であるが故に圧倒的にポジティヴなパワーに溢れたこの2曲で、彼らの道は定められたと言えよう。「祝福」という言葉はコロボックルズの世界を表すのに最適かもしれない。「楽しんで行きましょう(Have Fun!)」「踊って下さい(Let's Dance!)」というお馴染みのMCは言葉通りライヴの祝福空間を言い表している。

  

何の衒いも無い心の底からの祝福の歌が奔流となって溢れ出る。その核心には力強いメロディーへの信頼がある。しかし彼らはむやみやたらに妄信しているわけではない。逆に人生や世界への疑問と戸惑いに満ちた苦悩を潔く認めた上で、それでも勇気を振り絞って前向きなメロディーに希望を託しているのだ。その証拠に演奏を聴いてみたまえ。空気を切り裂くカミソリギター、下半身を痙攣させる饒舌なベース、脳髄を叩き割るハイピッチのスネアが相俟って、まるでメロディーを破壊するかのように威嚇する。それ故に、突進する暴力サウンドのど真ん中を貫通するメロディーの強力さは、想像を絶するものであることが判るだろう。

  

強いメロディーと真っ直ぐな言葉。メロディーと歌への信頼に支えられたコロボックルズの希望の光が、カオスに満ちた世の中を少し明るく照らし出し、道に迷った我々を導いてくれるに違いない。満場の観客が熱狂的に祝福を謳歌した初の東京ワンマンライヴは、原初以来人間の心の底に刻み込まれたメロディー快感中枢の復権を告げる奇跡的な100分間だった。

  

Set List
1. Twinkle Rollers



2. てんじんさん
3. 赤いスカートとワルツ
4. カーテンコール
5. 手紙
6. 虹の向こう
7. かざぐるま
8. 満月ロックンロール
9. 夕焼け
10. 響いているなら
11. ディスコード



12. ろくでなしに咲いた花
13. 約束
14. ディスコティックジャパン
15. HAPPY DAYS
16. チカリ



17. ダ・カーポ
18. 初恋
-encore 1-
19. 花ごころ
20. 向日葵
-encore 2-
21. 真夏の夢

つきぬけてもつきぬけても
いつもとおなじ
メロディーがきこえる

コメント
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