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ドン・フェルダーの苦悩

2011-02-23 17:55:37 | Weblog
 ドン・フェルダーの自伝を読んだ。
 どんなグループにも、そのグループ内での軋轢や争いはかならずあるものだとは思うけれど、イーグルスもその例に洩れないバンドだった。ただ驚いたのは、イーグルスはデビュー後早いうちからすでに不安定な人間関係の上に成り立っていたということだ。バーニー・レドンとグレン・フライの確執から始まり、バーニーとランディ・マイズナーの相次ぐ脱退。そしてそこから頭をもたげてきたグレンとドン・ヘンリーの双頭独裁体制。「ザ・ゴッズ」と呼ばれるほどにまでなった2人の強権の前に、他のメンバーはただ彼らに従わざるをえなくなっていく過程がつぶさに語られていく。

 分断したバンドがどんどんボロボロになっていくそんななかで、『呪われた夜』『ホテル・カリフォルニア』などの傑作を生み出すフェルダー。バンドの内実とミュージシャンとしての気概の狭間で苦悶するフェルダーの姿は痛々しい。なかでも「ザ・ゴッズ」の横暴ともいえる行動と、彼の意に反して乖離していくメンバーとの関係は哀れというほかなく、解雇という屈辱に直面した彼の無力感がひしひしと伝わってくる。バンドがアメリカを代表するバンドに成長していったのはフェルダーの貢献もとても大きかったと思うが、フライとヘンリー、そしてマネージャーのアーヴィング・エイゾフの彼に対しての冷淡な仕打ちは音楽業界の暗い部分を見せつけられた思いがする。

 ただ、これはあくまでもフェルダー側の見方に過ぎない。フライ、ヘンリー側は別の見方でバンドを切り盛りしていて、フェルダーへの態度もなにかしらの理由があったのかもしれない。一方からの言い分だけではその部分がまったく見えてこないし、「ザ・ゴッズ」の言い分も聞いてみたいところだ。
 が、フェルダーの言い分で強い説得力のある箇所がある。『ホテル・カリフォルニア』のクレジットが変えられたという事実だ。発売当初は作曲のクレジットが「フェルダー・ヘンリー・フライ」だったのが、フェルダーが冷遇されてきた時期に発売された『ヘル・フリーゼズ・オーバー』では「ヘンリー・フライ・フェルダー」になっているのだ。フェルダーはクレジットの順が変わることを伝えられたわけでもなく、勝手に変えられたと主張している。これは、たとえ変えるためのなにか特別な理由があったとしても、ミュージシャンとしての自負を強くもつフェルダーなら譲れるものではないだろうし、そもそもいったん発表したクレジットを変えるなんてことはあまりに不自然だ。フェルダーの記憶違いや思い違いなどの余地が入り得ない証拠がはっきりと確認できるこの変えられたクレジットを見ると、フェルダーの証言の信憑性が高まる。

 本は全体的に冷静に書かれているが、最後になってフェルダーの感情が噴出しながら終わる。そこには被害妄想とも思える部分もあるが、彼の痛恨が拡がっていてやるせない気分になる。レドンやマイズナーのように、彼も早々に、イーグルスに見切りをつけていたらまた違ったキャリアを積み重ねていただろうことを考えると、彼の音楽に対する無垢な姿勢が悩ましくもある。
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