GOODLUCK'S WORLD

<共感>を大切に、一人の男のスタンスをニュース・映画・本・音楽を通して綴っていきたい

「トライやる・ウィーク」

2008年06月03日 | Weblog
 毎年この時期(5月から6月にかけて)になると、N市の中学校では「トライやる・ウィーク」を実施します。この「トライやる・ウィーク」では、以前小学校や中学校で発生した凄惨な事件を踏まえ、二度とあのような事件が起こらないように、多感な時期を迎える中学生達に社会の現場ではどんな仕事が行われ、またどのような人たちがどのような汗をかいているのか、一緒に働くことによって彼ら(今年は全員が男性)が体験し、見聞を広めることが目的です。

 今年も近隣中学からまず6名(5/16~23)が自社にやってきました。明日からは2校目の3名がやってきます。私の料飲部でも彼らを毎年受け入れ、午前中(10:00-12:00)は、厨房やフロアー・イス・テーブルの清掃の後、自分たちが食べるラーメンやうどんを彼ら自身に作らせます。これは私の部下が担当します。

 午後(13:00-15:00)は私自ら彼らと接します。行うことは毎年同じ事を実施しています。それは「挨拶・お辞儀の仕方」と「スマイル・テスト」と呼んでいるものです。「スマイル・テスト」というのは、まず、全員の前で「ありがとうございました!」と満面の笑顔で挨拶します。「わたしの笑顔が良かったと思う人は、手を挙げて下さい」と尋ねます。すると全員が挙手してくれます。さてこれからです。

「では、次はあなた方の番です」といって一人だけをみんなの前に立たせ、同じように「ありがとうどざいました!」と笑顔で挨拶させます。そして挨拶した彼は後ろを向き、残りの全員が挙手するまで続けます。これがスマイル・テストです。

 挨拶・辞儀の仕方も初めはほとんど出来ないので、しっかりと教えます。背筋を伸ばして30度のお辞儀を教えます。これだけで30分は要します。最初は照れくさがってお辞儀もスマイルもまったくできませんが、だんだんと様になってきます。茶道の「形きまれば自ずと心決まる」これが元になっています。

 笑顔の「ありがとうございました!」の中には、サービス業だけではなく、人生で忘れてはならない大切な気持ちが含まれています。数年前まで子供達はトンボの頭を落としたり、蝉を捕まえて糸をつけ自室で飛ばして弄び、カエルを捕まえて壁にぶつけたり、ピンポンダッシュをしていたのです。そんな彼らに笑顔の挨拶は、周囲の人と共に生きている、そして感謝している気持ちがこもっていると伝えたくても至難の技かもしれません。

 私もまた笑顔の大切さなど、若い頃は気づきもしませんでした。就職して自分の笑顔を初めて鏡の前で確かめました。当然中学生の彼らも同じでしょう。せいぜい写真に写る自分の「チーズスマイル」くらいでしょう。しかし、その笑顔が周囲にどんな影響を与えるのか、考えたこともないでしょう。当然ながら心がこもった笑顔にもほどんど気づかないでしょう。

 今年の6名の中学1年生はとても優秀でした。初めは顔を引きつらせ、額に汗を浮かべながら、その必死さを他の仲間がフォローしていたからです。5名が手を挙げても私はOKしない場合もありますが、「もう許してあげて…」的な表情を見るとさすがに続行もできなくなります。笑顔が乏しい中学生の横に行き、人差し指で脇腹を突っつき、何とか自然の笑顔を呼び戻させます。「そうだ、その笑顔だ。みんなもそう思うだろ?」と周囲にも確認させます。
そこですぐ、その笑顔のまま「いらっしゃいませ!」をやらせ、何とか終了させます。

 人前で面白くないのに「笑顔を出せ」と云われることなど、彼らの今までの人生では、きっとなかった事でしょう。しかし、今回の経験を経て、今後買い物に行き担当の人や、レジ係の人の笑顔に接したとき、何かを感じて欲しいと願っています。親や兄弟と挨拶するときの笑顔がどんなに大切かを学んで欲しいのです。

 そして、2時間足らずの私の「スマイルテスト」ではありますが、<共に生きる>このことを気づくきっかけになって欲しい心から願っています。


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