GOODLUCK'S WORLD

<共感>を大切に、一人の男のスタンスをニュース・映画・本・音楽を通して綴っていきたい

「一身独立」

2013年02月21日 | Weblog

 格闘技大国のフランス、柔道の競技人口は日本の3倍の60万人もいる。しかし、日本女子柔道界のような暴力問題は皆無という。
 日本には1,734の少年団、警察や企業チームを含む道場が2,322ある。フランス国内には約4,500の柔道クラブがあり、元金メダル選手が教えているクラブの会費は、年間では270ユーロ(約3,3万円)。私が通うフィットネスクラブは年間108,000円。器具やプール、風呂が付随しているとはいえ、比較するとかなりの高額だ。(今月末で退会)

 さて、暴力問題がないフランスのクラブは、すべて会費を支払う入会システムだ。日本柔道の指導の土台は学校や警察だ。選んでそのクラブに入るが、フランスのように会費で賄っているわけではない。つまりフランスでは義務化されておらず、気に入らなければすぐに辞められる環境にある。そして、勝利至上主義がない自由な気風があるという。こうした環境が日本の競技人口を遙かに凌ぐ原因となっているのだろう。

 私は上記の新聞記事を読んで、ふと中学時代のクマというあだ名が付いていた国語教師を思い出した。氏は市立中学の教師でありながら、有名受験塾の講師もしていたと噂されていた。その真偽は不明だが、とにかく国語の授業は今までにないものだった。

「が、の、を、に、へ、と、から、より、で、や…」(まだ続くが忘れてしまった)
 これがわかる人? 
 
 これはすべて格助詞で、これを強制的に丸暗記させられた。覚えていると確かに文法問題は容易く解けた。しかし、「これはないだろう」と幼い私は思ったものだ。授業中突然「これを言え!」、と指され、答えられないと教室の席の縦・横の一列に座っている仲間まで立たされることになる。斜めの席の場合もあって、これが<ゼット・クロス>と呼ばれていた。確かにゲーム方式を多用した楽しい授業だった。私は何故かこのクマに可愛がられ、初めて書いた詩集を見せて赤字でチェックまでしてもらう仲だった。しかし、心の何処かでこんな受験至上主義授業に反発を感じていた。

       

 22年後、名作映画「いまを生きる」を観たとき、その不信感の意味がようやく理解できた。アカデミー賞のオリジナル脚本賞を獲得した映画のあらすじを紹介しておこう。
 ニューイングランドのバーモントの全寮制学院ウェルトン・アカデミーの新学期に、同校のOBという英語教師ジョン・キーティング(ロビン・ウィリアムス)が赴任してきた。厳格な規則に縛られている学生たちは、大学受験のための効率のいい授業に埋没していた。新任教師のキーティングの風変わりな授業(教科書を捨てろ!)に、最初は戸惑うものの、次第に刺激されていった。一部の学生たちは「教育の目的は自立」というキーティングの新鮮な考えに目覚めてゆくのだったが……
 邦題の「いまを生きる」は劇中でキーティングが発するラテン語「Carpe Diem」の日本語訳。厳密には「いまを生きろ」ないしは「いまを掴め」といった意味になる。

「が、の、を、に、へ、と、から、より、で、は…」これを単に覚えただけでは受験には成功しても本当の意味や考える能力を構築することにはつながらない。自立への道とはつながらない。私の不信感の原因が22年を経て明確なものとなった。
 
 フランスの柔道界の話から逸脱し過ぎたかもしれないが、海外では学生時代、医者や弁護士の勉学と両立させてオリンピックでメダル獲得し、その後目指す職業についた人が多数いる。私は彼等を心から尊敬する。スポーツを糧にして自立できた人たちだからだ。福沢諭吉の「一身独立一国独立す」は私の座右の銘の一つとなっている。  



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。