GOODLUCK'S WORLD

<共感>を大切に、一人の男のスタンスをニュース・映画・本・音楽を通して綴っていきたい

「出会い」を考察する(3)<父と子>

2011年12月21日 | Weblog
 人として最初の出会いは、やはり親になるでしょう。時として、その大切な出会いを味わえない人がいることはとても残念なことです。母との出会い、父との出会い。人それぞれに得られるものが違うかもしれません。私は母から「愛情」を刷り込まれたように思います。そして、父からは「男としての生き方」を刷り込まれたように思います。若い頃は刷り込まれている分、気がつかずにいたように思いますが、半世紀以上も生きてくると二人から何を授かったのか考える時間も豊富になりました。こんなことを考えたのは最近見た映画のお陰です。今私の中で一番のお奨め俳優、ヒュー・ジャックマン主演の映画「リアル・スティール」がその映画です。

               

ストーリーは父の子の絆の話です。
 近未来、人類は格闘技に興味を失い『リアル・スティール』と呼ばれるロボット同士の死闘を繰り広げる最高の舞台に狂乱するようになっていました。(この発想がとてもいい) ボクシングに全てを捧げてきた男チャーリー(ヒュー・ジャックマン)は、プライドも生きる目的も失っていました。しかし、格闘技の世界から足を洗うことができず、妻子を捨てて場末のロボット格闘技大会で、食い扶持を稼ぐというどん底の生活を送っていました。ある日、母が亡くなったことで11歳の息子マックスが現われます。そんな彼らが偶然ゴミ置き場でスクラップ同然の旧式ロボット“ATOM”を発見します。小さくてオンボロの“ATOM”でしたが、彼には特別な能力が備わっていました……。

 ロボットの“ATOM”を通して、父と子の絆を再確認していく単純なストーリーですが、とても良くできていました。トム・クルーズ主演の大作「ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル」より、感情移入できて、まるでロッキー映画のような出来映えに、予想以上に喜びました。映画館を出るときはとても清々しい気持ちになりました。お奨め映画です。

 母親はお腹の中で10ヶ月も我が子を抱き、生まれてからは乳を与え、衣食住をしっかりと密着するので、愛を注ぐには父親よりいい環境にあります。父親は外に出て、衣食住のための資金を稼ぐために、我が子と密着する時間が乏しくなります。だから子供との絆の種類が変わって当然と云えます。母親の「愛情」とは違い、父親の責務は「生き方」を背中で我が子に教えることだと私は思っています。

 先日「トヨタカップ」で優勝し、世界No.1のクラブチームとなったFCバルセロナ。
バルサでは、「クラブ以上の存在」がクラブのスローガン、「攻撃的でスペクタクルなフットボール」をアイデンティティーとしています。サポーターにも誇りがあり、試合に勝ったとしても内容が伴わなければ容赦ないブーイングが浴びせることは有名です。(12/18のトヨタカップ優勝戦の試合内容には全世界のサポーターがきっと満足したでしょう)
 バルサのクラブ運営上の特徴として一般市民などから会員を募り、その会費でチームを運営している点が挙げられます。これを<ソシオ>といい、<ソシオ>の会員は現在世界中で14万に達しており、日本でも2004年6月より会員の募集が行われています。「カンテラ」と呼ばれる下部組織が非常に発達しており、現チームの選手も含め幾多の名選手を輩出してきました。このカンテラ出身選手は生え抜きとしてサポーターから特に絶大な声援を受けることになります。

               

 私が注目するのはカンテラという下部組織から育ったメンバーが先日の試合でも数多く占めている点です。ペップ・グァルディオラ監督はバルサのカンテラ(下部組織)出身です。メッシはそのカンテラの生え抜きではありませんでしたが、13歳の時にFCバルセロナの入団テストに合格しました。当然、その後、カンテラで経験を積んだでしょう。当時の監督カルロス・レシャックは彼のプレーを一目見ただけでその小さな身体(143cm)に驚くべき才能と将来性が宿っていることに気づき、すぐさま合格を決めたと云います。FCバルサは家族揃ってのバルセロナへの移住を条件に治療費(成長ホルモンの分泌異常の症状:低身長)を全額負担することを約束し、家族もこれを快諾します。2001年3月1日正式契約を結びスペインでの新たな生活を始めることになりました。この家族も抱え込んでしまおうというクラブ姿勢が凄い。現在のメッシの活躍は、そんなFCバルセロナのクラブ姿勢のお陰だと言えます。リオネル・メッシは今後もその恩に報いているのでしょう。これからの数年間は彼のサッカー人生の黄金期となるに違いありません。

               

 幼い頃からカンテラのメンバーは徹底して「攻撃的でスペクタクルなフットボール」を刷り込まれてきたはずです。間違いなく父親以上の刷り込みがあったに違いありません。サッカー技術だけなく、挨拶や礼儀、尊敬心や忠誠心といった事も含まれるはずです。対する相手がどんなチームでも、FCバルセロナのサッカーをするだけだという単純なストーリーを選手たちは組み立てられるに違いありません。その戦略を理解する選手にもブレはないはず。監督の指示も優先順位も的確に選手に伝わるでしょう。ここにFCバルセロナの最大の強みがあるように思います。レアルや野球の巨人のように大金でスター選手を沢山連れてきて、にわかチームを作っても、尊大になってしまったスター選手たちにはスローガンや戦略の徹底は難しくなるのではないか。レアルにも下部組織がありますが、大金を積んでの移籍が頻繁になりチームに生え抜き選手が少なくなれば、巨人のように周囲の選手のモチベーションが上がらなくなります。きっと監督の指導力にも影響するでしょう。

 バルサの宿敵であるレアルの監督ジョゼ・モウリーニョは、かつてバルサで通訳兼助監督を経験したことがあります。父親は元ポルトガル代表のゴールキーパーで、裕福な家庭に生まれましたが、彼自身プロサッカー選手としてのキャリアはありません。モウリーニョは、スコットランドで語学を勉強後、FCポルト、FCバルセロナといった名門クラブで通訳を務めます。その後、監督に就いたルイス・ファン・ハールのアシスタントコーチも経験しました。つまりバルサを熟知していると云っていいのではないでしょうか。現在はクラシコ(バルサ対レアルの試合)ではバルサが圧倒していますが、今後のメッシの活躍、そして、モウリーニョ監督の巻き返し、そんな展開をじっくりと楽しみたいと思います。

               

 話を戻します。父と子の絆には母とは違うものがあります。サッカーのように幼い頃から始められ易いスポーツでは、その時出会った指導者のすり込みが将来に多大の影響を与えると思います。またメッシが成長した時期の出会い(ロナウジーニョ2003~2008)も大きな影響を与えたと想像します。
 ボクシングのカシカス・クレイ(後のモハメド・アリ)は、幼い頃自転車を盗まれ、警察にいった際、この時出会った警官がボクシングジムのトレーナーをしていたことがきっかけとなりました。王さんの場合は、中学生の時、偶然巨人の荒川コーチとの出会いです。その後、二人で一本足打法を作り上げることになります。イチロー選手の場合は仰木彬監督との出会いでしょう。それまでの土井監督やコーチと意見が合わず、一軍に定着できませんでした。しかし、新しく指揮を執った仰木監督は、彼の類い希ない才能を見抜きイチローとして世に送り出したのです。城島や小久保選手の場合は、王さんとの出会いです。クレイにボクシングを教えた警官や荒川コーチ、仰木監督、王さんも、彼らの才能を見出し、まるで父親のような気持ちになって純粋に彼らを愛したのではないでしょうか。

 後に恩師と呼べる人との出会い、その時二人ともそんな意識など微塵もなかったに違いありません。だからこそ、人との出会いは常に誠実になるべきだと思います。出会いと別れは必然です。クラブや会社、他の組織や集まりでも同じです。いい別れ方を出来る接し方をし続けること、これがとても大切なような気がしています。いい出会いはそのあとから向こうから訪れてくるような気がします。
 最初に入社したD社とは1年かけて、いい別れ方をしたお陰で、現在の会社から声がかかりました。学生時代、大恋愛(?)した相手とも悔いのない付き合い方ができたお陰で、今の連れ添いと出会いました。最も充実した店長時代、私の部下だった女性との再会が高校の大先輩との再会に繋がりました。どこかで人と人が繋がっているように思います。
 母とはいい別れが出来たように思っていますが、父とは出来かねています。それを自覚しながら父との関係を修復できるよう、これから努めたいと思っています。皆様もいい別れ方ができるかどうか、日頃のつきあい方を振り返って見て下さい。


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