戦国時代 貧しい農民のせがれから天下人に上りつめた豊臣秀吉
世界史をひもといても彼ほどの立身出世した人物は決して数多くはいない
朝鮮半島では、秀吉は極悪人と思われているに違いない
国が変われば英雄も極悪人になる
すべてを手にしたはずの秀吉 こんな辞世の句を詠んでいる
「露とおち 露と消えにし わが身かな 難波のことも 夢のまた夢」
貧しかった為に金や地位や権力を追い続けた秀吉
残したものがあまりにも大きかったために
彼は穏やかな最後の旅路ができなかったのかもしれない
未練が残こる それがこの世の常
だったら未練があることを素直に喜ぼうと思う
未練が残るようなことがこの世に残せたのだから
未練が残るような人と出逢えたのだから
未練が残るような想い出を残せたのだから
未練が残るような今を生きているのだから
人やモノは最後の旅路に持っていけない
ただ未練や想い出だけを持っていける
それこそが生きてきた価値ではないか
そのことを素直に喜びたい
これが<今を生きる>の本当の意味ではないか
『あの頃』
人を信ずることは人を救ふ。
かなり不良性のあつたわたくしを
智恵子は頭から信じてかかつた。
いきなり内懐(うちふところ)に飛びこまれて
わたくしは自分の不良性を失つた。
わたくし自身も知らない何ものかが
こんな自分の中にあることを知らされて
わたくしはたじろいだ。
少しめんくらつて立ちなほり、
智恵子のまじめな純粋な
息をもつかない肉薄に
或日はつと気がついた。
わたくしの眼から珍しい涙がながれ、
わたくしはあらためて智恵子に向つた。
智恵子はにこやかにわたくしを迎へ、
その清浄な甘い香りでわたくしを包んだ。
わたくしはその甘美に酔つて一切を忘れた。
わたくしの猛獣性をさへ物ともしない
この天の族なる一女性の不可思議力に
無頼のわたくしは初めて自己の位置を知つた
(「智恵子抄」より)
世界史をひもといても彼ほどの立身出世した人物は決して数多くはいない
朝鮮半島では、秀吉は極悪人と思われているに違いない
国が変われば英雄も極悪人になる
すべてを手にしたはずの秀吉 こんな辞世の句を詠んでいる
「露とおち 露と消えにし わが身かな 難波のことも 夢のまた夢」
貧しかった為に金や地位や権力を追い続けた秀吉
残したものがあまりにも大きかったために
彼は穏やかな最後の旅路ができなかったのかもしれない
未練が残こる それがこの世の常
だったら未練があることを素直に喜ぼうと思う
未練が残るようなことがこの世に残せたのだから
未練が残るような人と出逢えたのだから
未練が残るような想い出を残せたのだから
未練が残るような今を生きているのだから
人やモノは最後の旅路に持っていけない
ただ未練や想い出だけを持っていける
それこそが生きてきた価値ではないか
そのことを素直に喜びたい
これが<今を生きる>の本当の意味ではないか
『あの頃』
人を信ずることは人を救ふ。
かなり不良性のあつたわたくしを
智恵子は頭から信じてかかつた。
いきなり内懐(うちふところ)に飛びこまれて
わたくしは自分の不良性を失つた。
わたくし自身も知らない何ものかが
こんな自分の中にあることを知らされて
わたくしはたじろいだ。
少しめんくらつて立ちなほり、
智恵子のまじめな純粋な
息をもつかない肉薄に
或日はつと気がついた。
わたくしの眼から珍しい涙がながれ、
わたくしはあらためて智恵子に向つた。
智恵子はにこやかにわたくしを迎へ、
その清浄な甘い香りでわたくしを包んだ。
わたくしはその甘美に酔つて一切を忘れた。
わたくしの猛獣性をさへ物ともしない
この天の族なる一女性の不可思議力に
無頼のわたくしは初めて自己の位置を知つた
(「智恵子抄」より)