ブログ「教育の広場」(第2マキペディア)

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教育の広場、第 135号、英会話教育の方法

2005年10月13日 | ア行
 先日、NHKラジオで「最近の」英会話ブームを取り上げていました。ゲストには立教大学教授の鳥飼久美子さん(多分、同時通訳者)とスポーツキャスターの荻原次晴さんを迎えていました。

 荻原さんはかつてスキーの複合競技の選手として外国での試合などで英語の必要性を感じたと話していました。鳥飼さんは、「戦後ずっと英会話ブームだったのではないか」とか言って、その口調からして日本の英語の勉強のあり方に批判的のようでした。

 高校で英語を特別重視する学校が認められているとか。どこかの高校の様子が紹介されていました。聞くと、高校1年で数学と化学の授業をそれぞれ週1回英語でするそうです。しかし、その内容は事前に日本語で教えてあるそうです。

 スクラップブックを見てみますと、2002年04月28日に「スーパーハイスクール」の指定がなされたとの記事がありました。理数か英語を特別重視した授業をしていいそうです。全国で44の高校がこれに指定されたそうです。

しかし、こんな週1~2回の英語での授業で「使える英語」が身につくのでしょうか。更に、その記事には教育評論家の尾木直樹さんの話も引用されていましたが、そこには「才能豊かな子どもの力を伸ばすのはいいとしても、そうでない子どもへの支援がなおざりにされるとしたら問題だ」とありました。

私の知っている範囲ではドイツなどでは大学生はほとんど皆英語が話せます。いや、大学生でなくても英語の使える人はたくさんいます。なぜでしょうか。中学高校で「ダイレクトメソッド」で英語の授業がなされているからです。そして、その前提として少人数学級が実行されているからです。

私の考えは以下の通りです。

「使える英語」などというものは大したものではないが、必要ではあります。それを教えるには中学と高校の英語の授業(だけでも)を少人数学級(1クラス10~15人)にして、「ダイレクトメソッド」で教えればよいのです。文法などを日本語で説明する時間は中学2年頃からせいぜい週1時間やれば十分だと思います。

私の見学したドイツの高校1年にあたるクラスの英語の授業は、辞書など誰も持っていませんでした。英語のテキストのプリントでやっていました。新しい単語の説明はプリントの最後についていました。もちろん英語での説明です。

授業は完全に英語でした。先生が英語で説明し、質問し、生徒は英語で答えていました。私語への注意も英語でした。なお、この高校は特別の高校ではありません。ただし、人数は15人くらいでした。

「スーパーハイスクール」などと名前だけおおげさな事をしないでも、すべての英語の授業をこのように改革すれば、「使える英語」は簡単に身につくはずです。

こう考えると日本に欠けているのは、少人数学級という前提であり、英語で授業の出来る先生だということが分かります。

英語の先生の実力アップについては動きだしているようでもあります。2002年07月12日の朝日新聞は「英語教員6万人に研修」という見出しの記事を載せました。

その記事によりますと、文部科学省は2003年から5年間かけて現職教員6万人に研修をほどこすそうです。これで高校卒業時に皆が英検準2級以上、通常の会話ができるようにするそうです。

この教員の能力アップは大切です。先のラジオ番組でも韓国や中国で英語をどう捕らえているか、またどのような対策を立てているかも紹介されていましたが、中国では教員の研修がすごいそうです。

教員のレベルアップには賛成ですが、方法には必ずしも賛成できません。こんな事は英語の資格試験の点数を決めて、「いつまでに自分で勉強してくるように」と言うのが正しいと思います。それに合格しない人は「不適格教員」として別の仕事についてもらえばいいことです。こんな研修に大金を使う必要はないと思います。

それ以上に、この案には先に述べました少人数学級という大前提が欠けています。この案は「有識者懇談会」を設けてまとめたそうですが、大した有識者たちだなと感心しました。

最後に、大学でも「使える英語」とやらが求められていますが、情けない話です。「使える英語」は大学に入るための前提条件です。大学でやることではありません。

大学は学問の府です。そこでは言葉の本質を考え、英語(個別言語)を科学的に理解するとはどういうことかを研究し教えるべきだと思います。

(2003年08月15日発行)



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