ブログ「教育の広場」(第2マキペディア)

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教育の広場、第75号、思想運動の含む矛盾

2006年01月09日 | サ行
 社民党の辻元清美議員が秘書の名義借りか何かで議員辞職に追い込まれました。社民党の党首も関係しているのではないかと噂されています。私は思想運動の宿命ということを考えました。

 思想運動には本質的に「思想」と「運動」との2つの面があり、それが矛盾することが多いのではないかと思うのです。

 思想運動は思想から出発します。何かの思想があって、その思想を広めたい、権力を握ってその思想を実現したい、といった事を目的にしています。そこには必然的に「広める」という要素があると思います。

 そして、ここから様々な問題が出てくるのだと思います。「広める」ということは「他者を仲間に獲得する」ということです。つまり「オルグ」ということです。つまり、思想運動にはオルグということが本質的な付き物だということです。

 それは商売にとっての販売ととてもよく似ています。売れなければどんなに好い商品にも何の意味もないのです。そこから、広告・宣伝ということが出てきます。それはとかく誇大広告になりがちです。

 その販売方法としては時には不法な方法が採られることがあります。押し売りとか詐欺商法とかぼったくりとかネズミ講とかいったものです。

 思想運動も同じだと思います。宣伝も広告も必要です。強引な勧誘もありがちです。かつて創価学会の強引な折伏(しゃくぶく)が問題になったことがありました。

 思想運動に関係したことのある人でこの「強引な方法によるオルグ」の誘惑に捕らわれなかった人はいないのではないでしょうか。私にも思い当たる節があります。

 断っておきますが、宣伝・広告自体やオルグ自体が悪いと言うのではありません。正当なそれの範囲を逸脱して不法行為になりがちだ、と言っているのです。

 第2の問題はこれと関係するのですが、お金の問題です。思想運動もこの社会の中に生きている人が推進するのですから、当然お金を必要とします。しかも、特に現在の社会のあり方に多少とも批判的な思想運動は、このお金の問題で困難を伴います。

 辻元議員も「自民党の人はお金が沢山あっていいな」と漏らしていた、と伝えられています。社民党の議席が大幅に減ったために、議員秘書の職の問題があったとも伝えられています。

 これとは反対に、共産党の資金の豊かさは有名です。共産党は宮本顕治氏がトップになってから財政基盤を確立したようです。

 宮本氏の前妻は小説家の宮本百合子氏でした。その死後も宮本氏には印税収入があったようです。ですから、氏は共産党のトップになる前、干されていた時もお金には困らなかったようです。逆に、お金に困ったために転落していく仲間たちの姿を沢山見てきたようです。

 ですから、氏は共産党の実権を握ると、党勢拡大運動を始めました。その才能もあったようです。そして、今日の共産党となったのです。それまでは、中国などに招待されて行った人達は、「お土産」を大分もらってきたようです。もらった人から直接、聞いた話です。

 周知のように、日本共産党はその後、ソ連の党とも中国の党ともけんかをしました。これが出来たのは、財政的に自立していたからです。

 しかし、宮本氏について言うならば、氏は「運動」の方面では才能のある人で、その経営手腕と組織運営の巧さで共産党を大きくしましたが、「思想」の面では大したものを持っていませんでした。氏の作った共産党が「代々木商店」と揶揄される所以です。

 いまでは共産党も完全に行き詰まってしまいました。運動として成功して組織なり運動なりが大きくなると、思想のレベルは低下するのが普通です。共産党もこの例に漏れなかったようです。

 元に戻って、社民党は財政基盤が弱いようです。それが今回の事件の背景だったようです。では、社民党はなぜ財政基盤が弱いのでしょうか。支持者が寄付をしないからだと思います。

 つまり、日本では、共産党や公明党のような宗教団体(共産党は宗教団体の一つです。これは宗教を正しく定義すれば簡単に説明がつきます)でない党は、寄付をする人が少ないのです。

 先に私は本メルマガ第72号の中で、日本ではNGOなどの会員になったり寄付をしたりする人が少ないということを書きましたが、政党でも同じだと思います。日本人には、自分たちの力で社会運動を支えて世の中を変えていこうという習慣がまだ十分には根づいていないのだと思います。

 国民は自分に相応しい政治しか持てないという説があるようです。私も本当にそう思います。

 もちろん社民党や辻元氏個人の拙劣さもあると思います。議員歳費と秘書給与と政党助成金の範囲内で着実にやっていくことはできなかったのでしょうか。

 これで終わりにするつもりだったのですが、ここまで書いてきて思い出した事があります。それは仏教伝道協会のことです。この協会は、欧米のホテルに聖書が置いてあるように日本のホテルにも仏教聖典を置きたいと思った沼田恵範氏が始めたようです。事業を起こしてその利益で仏教の伝導を支えたようです。

 こういうやり方も思想運動の一つのあり方だと思います。

(2002年04月13日発行)