ブログ「教育の広場」(第2マキペディア)

 2008年10月から「第2マキペディア」として続けることにしました。

投書(40人学級裏話)とお返事

2005年10月01日 | カ行
01、投書  40人学級裏話(U・T)

 牧野様

 いつも面白く拝見しています。今日のメルマガに40人クラスの辞が出ていましたね。それに
関して面白い実話があります。

 有名進学校の卒業である私は、同校の卒業生で、教員を経験している方々の会に時折出席していました。その席上、授業崩壊などの話が出て、どのようにしたらそのようなことが無くな
るのかという話題になった時、ある先生が、1クラスの生徒数を減らすべきであるという意見を言いました。

 他の先生方も、それには賛成であったようです。要するに40人学級を実現して欲しいというものでした。その席には、東京都の教育委員会幹部も来ていました。私達の先輩に当たる方で
す。

 40人学級の話が出るやいなや、ある最も年配のOBで、幼稚園から大学まで経営する私立学校の理事長が、その話をした教員を怒鳴りつけたのです。「40人学級など困るんだよ!!」

 たしかそう怒鳴ったと思います。その場にいた後輩の先生方は驚いて口もきけませんでした。その凄まじい迫力に、全員が圧倒されたのです。

 すると、教育委員会の幹部を務めている方が、「何も40人学級にしなくても複数教員で1クラスを見ることも出来る──」などということを言ったのです。

 私は、本当に驚きました。私立校の理事長の、40人学級絶対反対を、都の教育委員会幹部が後押ししたのです。

 これでは、40人学級など実現するはずがありません。私立校と教育委員会がグルだったのだと直感しました。

 それ以来、40人学級の話は、その会では出なくなったそうです。私もしらけて、もうその会には出ていません。

 色々な学校現場を歩いてきた私ですが、私立学校ほど、玉石混淆の教育機関も少ないでしょう。

 個人的印象では、教員の実力はさほど無く、休みが多く給料も高い、教育のための設備は悪い、と言ったところです。要するに、教師や経営者のための教育組織が、私立学校だと言うこ
とです。


02、返事・発言権は実績に比例する(牧野 紀之)

 投書をありがとうございます。面白いお話だと思いますが、少し考えるべき点もあると思いますので、箇条書き的に感想をまとめておきます。

 最初に確認しておきたいことはこの話の背景ですが、或る有名進学校の卒業生で教育関係の仕事をしている人達だけの集まりがあるということですが、どのような集まりなのでしょうか
。多分、私的なもので、不定期に開かれ、親睦をかねて情報や意見を交換するものなのだと思います。

 集まりの形式はどうなっているのでしょうか。毎回、誰かがその日の話題になるような話なり報告なりをしてから自由に話し合うというのでしょうか。それとも、そういう中心的話題提
供者はなくて、初めから自由に話し合うのでしょうか。司会者は一応いるのでしょうか。

 酒も出るのでしょうが、初めから出るのでしょうか。こういった事が分かりませんので、少し考えにくい点もありますが、本質的な違いはないでしょう。そう考えて以下の感想を書きま
す。

 第1に、私学経営者が40人学級という話を聞いて怒りだしたのは絶対に悪い、ということです。これでは集まりを持つ意味がないと思います。40人学級が経営的に不可能なら、それを丁
寧に説明すればよかったと思います。そのための集まりでもあったはずです。

第2に、しかし、その人が怒りだしたということは、やはりその人の経営にかなり無理があるからだと思います。そもそも私学で幼稚園から大学までの大きな組織を作るのは、何から始
めたのか知りませんが、やはりもうけ主義があったと考えられます。

第3に、そうすると、もうけ主義を排して良心的な経営をしていたら私学は拡大できないということになります。いや、私はそう前提して今の推定をしたのです。この前提は正しいと思
いますが、なぜ良心的経営では私学はもうからず、拡大できないのでしょうか。

それは私学の経営の大部分が生徒(保護者)の納付金で賄われているからです。又、経費の大部分を占める教職員の給与をそれなりの水準に保たなければならないからだと思います。

従って、良心的な私学経営が成り立つためには、保護者からの納付金以外の収入があるか、教職員の給与を一般的な水準より低くするかしかないことになります。

前にも書いたと思いますが、ドイツの私学は設備等については修道会が金を出し、給与は公共団体が出しています。

そういう事の出来ない、あるいは少ない日本では先のような事になります。上智大学はローマの法王庁からお金が来ているのではないかという話をそこの卒業生のカトリック信者から聞
いたことがあります。それに、上智大学の教員の給与はかなり低いようです。

ICU(国際キリスト教大学)の英語の授業は18人学級だと聞いたことがあります。この大学の財政はどうなっているのでしょうか。

給与が低すぎるという話は、山形県か秋田県にあるキリスト教独立学園高校について聞いたことがあります。そのために若い教師が辞めていくそうです。

第2に、U・Tさんは「私立校と教育委員会がグルだ」と書いていますが、聞くところによると、私立学校は教育委員会の管轄下にはないようです。しかし、社会の支配層にいる人達は
かばい合っていると言うことはできると思います。

第3に、U・Tさんは「私立学校ほど玉石混淆の教育機関も少ない」と言いながら、その後では、その「石」の方を念頭において、「教師や経営者のための教育機関が私立学校だ」と書
いていますが、「玉」の方も調べて、玉と石とはどこがどう違うのか、それを書いてほしかったと思います。

第4に、40人学級を願望しているだけの教師もあまり褒められたものではないと思います。世界とまではいかなくても日本を広く見渡して、40人学級を実現していくために自分には何が
出来るかを考えるくらいの事はしてほしいと思います。

世の中は批判だけではよくならないと思います。日本には自由がかなりありますから、それを利用して自分の考えを行動で示していく必要があると思います。

経営者側の人達の方がこれをしていると思います。前にも書きました松下政経塾がその例です。最近もトヨタと中部電力とJR東海とが中高一貫校を作ることになったようです。

自由な教育を提唱する人達でも、例えば自由の森学園とか、木のくに子供むら(?)とかを作った人がいると思います。シュタイナー学校もあります。最近は、アメリカのチャータース
クールみたいなものを作ろうという運動もあるようです。

このように自分の考えを行動で主張していくのが正しいやり方だと思います。批判もいいのですが、行動と実績に立ったものでないと力にならないと思います。

(メルマガ「教育の広場」、2003年11月04日発行)