晴走雨読

晴耕雨読ではないが、晴れたらランニング、雨が降れば読書、きままな毎日

『いい加減にしろよ(笑)』

2006-10-01 21:06:59 | Weblog
 『いい加減にしろよ(笑)』(日垣隆 文芸春秋 2006)を読みました。

 日垣隆の著作は、これまで、『偽善系』『敢闘言』『エースを出せ』・・などを読んできて、違和感を抱えながらも気になる書き手である。

 この著作でも、ターゲットは刑法第39条、精神障害者が犯罪を免罪されることについて、また、少年法でも少年に同様の配慮が行なわれる点についてである。

 彼は、いつも被害者の視点を持ち出し、犯罪被害者にとっては絶対許せないとする。これに、異議を唱える者には、人権派、戦後民主主義者、はては、日教組、共産主義者として、定義も概念も無い言葉で攻撃する。また、警察の捜査を批判するが、それはもっと取り締まりを強化すべきという視点からである。

 この著書では触れられていないが、彼の弟が中学生の時、同級生に殺され、その同級生は翌日からも登校していたと。それが原因なのか兄や父が精神病で長期に療養し、家族が崩壊したという、彼自身が犯罪被害者の当事者という事情が語られている。

 現行の法体系を重罰主義に、警察力権力の強化、それが犯罪を抑止し、犯罪被害者の悲しみを救うという。

 法治国家が、仇討ちや報復の論理で運営されてはたまらない。長い人生の時間を持っている少年には、更生の機会を(アベの再チャレンジとは違う)、精神障害者は、犯意を有しているのではなく、病気で正常な判断が出来ないことを理解しなければいけない。

 日垣の論理は、精神障害者を社会から隔離し、犯罪予備軍としてしまえという暴論に繋がる危険性がある。社会にとって有害と見なされた者は、精神障害者というレッテルを貼って排除する、一方的価値観の社会となってしまう。

 絶対許せないが、しかし、つい読んでしまう物書きなのだ。



 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする