功夫電影専科

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王羽十選(5)『極東黒社会』

2017-12-15 23:23:47 | 王羽(ジミー・ウォング)
「極東黒社会」
「極東黒社会 Drug Connection」
英題:Drug Connection
製作:1993年

●バブル崩壊に見舞われ、混迷を極めていた経済大国日本。中でも新宿歌舞伎町は人種の坩堝(るつぼ)と化し、これに目を付けたイタリアン・マフィアが麻薬市場の進出を目論んでいた。
一方、歌舞伎町では新興の香港マフィアが台頭し、台湾マフィア(ボスの補佐役は『力王』で四天王を演じた杉崎浩一)と血で血を洗う抗争を展開。この衝突に、フリーの麻薬密売人であった役所広司と近藤真彦も巻き込まれていく事となる。
 激化するマフィアの抗争に対し、警視庁はNYから潜入捜査官のショー・コスギを招き入れ、一匹狼の刑事・中条きよしと共に捜査へ当たらせた。ひょんな事からショーは役所と出会い、奇妙な縁で結ばれるのだが…。
やがて役所の仲間だった売人が香港マフィアの刺客・林偕文に殺され、彼らとマフィアの龍頭・王羽(ジミー・ウォング)の対立は決定的なものに。その過程で北原佐知子がジミー先生に暴行されるが、たまたま居合わせた近藤によって助け出された。
 役所もまた、ショーと因縁のあるジェシカ・ランスロットと出会い、襲いかかって来た林偕文をショーと共に撃破。意を決してジミー先生の麻薬工場に殴り込むが、敵の逆襲によって近藤と北原が犠牲となってしまう。
怒りに燃える役所は、弱腰の警察に見切りを付けたショーや中条、ジェシカたちと共同戦線を組んだ。かくして、彼らは香港マフィアと軍門に下った地元ヤクザ、そして提携を目論むイタリアン・マフィアを一掃すべく、最後の戦いに挑む!

 本作は日本・アメリカ・香港・台湾から国際色豊かなキャストを迎え、過剰なバイオレンスとドンパチで彩ってみたら、思いっきり収拾がつかなくなった作品です(苦笑
ストーリーとしては、武闘派の香港マフィアが好き勝手やりまくり、対抗馬の台湾マフィアは困り顔。そこに日本とイタリアの悪党が乗っかってくるという構図なんですが、次々と人が死んでいく上に新勢力が乱立するので、話が無駄にややこしくなっています。
 キャラクターの設定も荒唐無稽で、いくらなんでも役所が外人部隊出身というのは無理ありすぎ(爆)。売人なのに知り合いがヤク中になったら動揺しまくる近藤、決戦に参加するには動機が薄いジェシカなど、こちらもムチャ振りだらけでした。
中条が死んだ事に誰も触れないまま向かえる最終決戦も、唐突な伏線回収やメインキャラの壮絶な死が相次ぎ、まさに混沌の極みと化しています。最後の役所とショーのやり取りも抽象的すぎて(伏線はあるけど)、誰しも呆気に取られる事は間違いないでしょう。

 そんな中、我らがジミー先生は香港マフィアの元締めとして登場し、モノホンの迫力でスクリーンを席巻。本作で唯一リアリティを感じさせるキャラクターを演じていますが、彼が立ち回るシーンは一切ありません。
私が本作を視聴したのは、『片腕カンフー対空とぶギロチン』でジミー先生を知って間もない頃でした。彼に加えてニンジャスターのショー・コスギまで参加していると知り、夢の共演やアクションに随分と期待しました。
 しかし本作のアクションは銃撃戦がメインで、ショーの格闘戦もほんの僅か。対戦相手もジミー先生や林偕文(彼は『ドラゴン特攻隊』でジャッキーとの対戦経験アリ)ではなく、非・アクション俳優の役所広司という選出にはガッカリしてしまいました。
当時の私は銃撃戦より肉弾戦を好んでいたため、ラストバトルはとても退屈だったと記憶しています。終盤でジェシカを人質に取られる展開になった際は、「やっと素手の勝負が!」と浮き足立ったものです(←直後に期待は裏切られますが)。

 ところで本作には欧陽龍という中国系の俳優が出演しています。彼はショーの相棒として登場し、ラストバトルでは永倉大輔(当時は長倉大介名義)とともに自爆するんですが、ネットで検索しても出演作が見当たりません。
調べたところ、彼の正体は歌手の欧陽菲菲の弟にしてチェリストであるNana(欧陽娜娜)の父親。現在は台北で市会議員に就任しているそうで、私はてっきり王建軍(本作に出演しているそうですが詳細は不明)の変名かと思っていました(汗
 結局、作品としては地雷級の失敗作ではありますが、ジミー先生の存在感だけは特筆すべき珍品。これ以後、ジミー先生は映画界から距離を置き、しばらく本作が最後の映画出演作として扱われていました。
しかし、長年の沈黙を破ってついに天皇巨星が復活を果たす時が訪れます。宇宙最強の男を相手に、伝説の女ドラゴンを従えたジミー先生が見せる“恐怖”とは…詳細は次回にて!

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