功夫電影専科

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『ザ・セブン・グランド・マスター(虎豹龍蛇鷹)』

2018-02-18 23:30:16 | カンフー映画:傑作
「ザ・セブン・グランド・マスター」
原題:虎豹龍蛇鷹/虎豹龍蛇鷹絶拳
英題:The 7 Grandmasters
製作:1978年

▼今回も引き続き郭南宏(ジョセフ・クオ)作品の紹介ですが、こちらはコメディ功夫片ではありません。主人公のルックスや明朗な性格も、『酔拳』というよりは『蔡李佛小子』や『洪拳小子』などからの影響を感じます。
作品としては実にオーソドックスな功夫片であり、郭南宏らしいサプライズ展開も用意されていますが、注目すべきは武術指導に元奎(コーリー・ユエン)&袁祥仁(ユエン・チョンヤン)の両名がクレジットされている点です。
この2人は当時の袁家班における中心的存在で、彼らは同年に郭南宏の『ドラゴン太極拳』へ参加したばかり。キャストも一部が共通しており、いわば本作は『ドラゴン太極拳』の姉妹作といっても過言ではありません。

■正義門と呼ばれる道場を主宰し、高名な拳法家でもある龍世家(ジャック・ロン)は人々から慕われていた。彼はある祝祭で看板を授与されるが、そこで何者かに挑戦状?を叩き付けられる。
これを重く見た龍世家は、旅に出て各地の達人たちと戦うことを決意。龍冠武(マーク・ロン)を筆頭とした3人の高弟、娘の燕南希(ナンシー・イェン)を連れ、まずは龍飛(ロン・フェイ)と雌雄を決した。
 が、龍飛は勝負の直後に不審な死を遂げ、残された門下生たちは龍世家を怪しむが…。一方、当の龍世家はさまざまな達人と戦っていたが、そこに奇妙な青年・李藝民(サイモン・リー)が付いて回るようになる。
彼は何度も弟子入りを志願し、ドジを踏んでは突っぱねられ続けた。しかし、卑怯な武器の達人・元奎が放った刺客から龍世家を守ろうとしたことで、ようやく正式に弟子入りを認められるのだった。
 なにかと龍冠武から嫌がらせを受ける李藝民であったが、向上心の強い彼はメキメキと腕を上げ、いつしか高弟たちをも追い抜いていく。そして、弟子を動員した対抗戦に勝利した龍世家は、足かけ二年に及んだ旅を終え、ようやく正義門へと帰郷した。
ところが物語は急転直下の事態を見せる。実は李藝民は父親の仇討ちを誓っており、彼の父親こそ序盤で死んだ龍飛だったのである。李藝民は父殺しの容疑者・龍世家を倒すため、あえて彼に弟子入りして拳法を学んでいたのだ。
「待て、龍飛を殺したのは割って入った別の男だ!」「問答無用!いざ尋常に勝負だ!」 かくして、ここに望まざる師弟対決が始まるのだが…。

▲この作品は李藝民が主人公とされていますが、本格的に彼が登場するのは序盤を過ぎてから。全編に渡ってアクションシーンを牽引するのは龍世家であり、見方を変えれば彼こそが主役と言ってもいいでしょう。
龍世家といえば、台湾功夫片おなじみの顔であり、郭南宏の常連俳優としても知られた存在です。素面ではいかにもチンピラ風のルックス(爆)ですが、老けメイクをすると一転して温和な表情となり、温かみのある師匠役を得意としてきました。
 本作は、そんな彼が初めて師匠役を演じた作品のひとつで(同年の『四兩搏千斤』も師匠役ですが、主人公を導くキャラクターではありません)、郭南宏も彼を猛プッシュしている様子が窺えます。
龍世家自身も、時に厳しく、時に優しい師匠役を好演。アクションスターとしては自分よりも大きい役を演じ、ショウ・ブラザースで活躍してきた李藝民に負けじと、迫真の立ち回りを見せていました。

 アクションの出来も素晴らしく、袁家班タッチのスピーディーなバトルが楽しめます。主役サイド以外では、猿拳の達人を演じた錢月笙(チェン・ユーサン)、対抗戦で龍冠武を完封した馬金谷、多様な武器を操る元奎の動きに目を引かれます。
もちろん、彼らに対抗する李藝民たちの動作もキビキビとしており、大胆かつ流れるようなファイトシーンは『ドラゴン太極拳』にも勝るとも劣りません。不満らしい不満といえば、女ドラゴンの燕南希があまり目立ってない事ぐらいでしょうか。
 ラストの師弟対決では、ちゃんと両者が同じ拳法を使用し、続くVS徐忠信(アラン・ツィー)でもスタイルが統一されています。功夫片の中には、場当たり的な殺陣でお茶を濁すような作品もありますが、本作は殺陣への配慮が行き届いた逸品と断言できます。
ダイナミックなアクションと意外なストーリーで楽しませる台湾功夫片の傑作。『ドラゴン太極拳』が好きな人はもちろん、私のように師匠役の龍世家に安心感が持てる人には、是非ともオススメの作品です!(笑

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんばんは。 (ひろき)
2018-03-07 20:10:26
龍争こ門さん、こんばんは。
いつもお世話になります。
よろしくお願い致します。

ジョセフ・くオ監督作品で、ジャック・ロン&サイモン・リーがコンビを組んだ作品なので、アクションのレベルが実に、高いですね。
龍争こ門さんの仰る通り、袁家班タッチのスピーディーなバトルでしたね。
ジャック・ロン、サイモン・リー共に、拳技も、アクロバットも、どちらも、上手くて、感心しました。
特に、印象に残ったのが、二人が手を繋いだまま宙返りしながら、前方に進んで行く動きなんて、正に神技ですね。その他にも、跳ね起き、連続バク転、前宙、側宙、バタフライツイストなどの多彩なアクロバットを絡めながらのリズミカルなカンフーバトルは、正に、肉体アート!で、魅了されてしまいました。
78年、79年のカンフー映画って、アクションのレベルが高い作品が多いですよね。
少し、作品のテイストが、以前、龍争こ門さんに質問させて頂いて、教えて頂いた、「ミステリーオブ将棋拳」に似ていて、アクロバット色の強い作品で、僕好みでした。ご紹介ありがとうございます。
「ドラゴン太極拳」も、設定やストーリーも、魅力的ですが、アクションも、武術指導をユエン・ウーピンが担当されているだけあって、アクロバティックで、カッコいいですからね。
ジョセフ・くオ監督作品は、本当に、面白い作品が多いですね♪
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追記。 (ひろき)
2018-03-07 20:29:19
先程、書き忘れてしまいましたが、
「ミステリーオブ将棋拳」のラスボスと「ドランクマスター・酔仙拳」のサイモン・リーとタッグを組んだカンフーバトルが終了した後の年老いた、ジャック・ロンの前に現れた的(ラストバトルのラスボスが登場する前に現れた敵)は同一人物ですか?もし同一人物だとしたら、もしかして、「ドラゴン太極拳」の花如剣を演じた武打星でしょうか?
顔が似ているような気がしたので、以前から、気になっていました。
質問ばかりで、申し訳ありません。
もし、ご存知でしたら、よろしくお願い致します。
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返信。 (龍争こ門)
2018-03-11 03:57:43
ひろきさんこんばんは、お返事たいへんお待たせ致しました。

>ジョセフ・くオ監督作品で、ジャック・ロン&サイモン・リーがコンビを組んだ作品なので、アクションのレベルが実に、高いですね。
 当時の李藝民は張徹作品に参加しつつ、スターとして一本立ちするために台湾で戦っていましたが、中でも郭南宏の手掛けた主演作は上質なものが多かったですね。
残念なことに、コメディカンフーブームが終わると活躍の場が無くなり、徐々に映画界からフェードアウトしてしまいましたが、私としてはもっと活躍して欲しかった思いがあります。

>「ミステリーオブ将棋拳」のラスボスと「ドランクマスター・酔仙拳」のサイモン・リーとタッグを組んだカンフーバトルが終了した後の年老いた、ジャック・ロンの前に現れた的(ラストバトルのラスボスが登場する前に現れた敵)は同一人物ですか?もし同一人物だとしたら、もしかして、「ドラゴン太極拳」の花如剣を演じた武打星でしょうか?
 ご指摘の通り、これらの作品で挙げていただいたキャラクターに扮したのは、すべて龍冠武(マーク・ロン)という功夫俳優です。
この『虎豹龍蛇鷹』でも、李藝民にイジワルをする一番強い高弟に扮していますが、その功夫スキルはなかなかのもの。後年はニンジャ映画などに出演していたようです。
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