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黒木瞳第一詩集・・・長袖の秋

2019年02月15日 16時31分02秒 | 

女優黒木瞳さんの第一詩集「長袖の秋」を読み返す。平成2年2月に角川文庫から刊行されたもので、女優としか見ていなかった黒木さんが、小学6年生からずっと詩を書き続けているなんて、今更ながら驚きである。

小学生で谷川俊太郎さんの詩集「愛について」に出会って、衝撃を受けて詩作が始まったようであるが、いま読み返してみて改めてとてつもない詩人だと気付かされる。多くの人は女優黒木瞳としか知らないだろう。

彼女の詩集から、私の気に入ったものを幾つか紹介したい。

「真心」

あなたのために

心をみがいている

ほんとうの私を

あなたに知ってもらいたいから

一点の曇りもないほどに

私の心をみがいている

嘘がつまった体を捨てて

ほんとうの私に戻ったら

あなたに伝える 私の真心

「体温」

悲しみを咬み砕いて皿に盛る

涙の味が少し残っているけれど

僕は箸をつける

悲しみはとてもつるつるしているので

箸の間から滑り落ちてしまった 

挟んでも挟んでも

挟みきれない

僕は諦めて箸を捨てる

親指とひとさし指で

悲しみをつまみあげると

体温で溶けた

僕の悲しみ

「長袖の秋」

太陽をちぎって

僕は日光浴をする

心が火傷しないように

僕は君以外のことを考える

太陽のかけらが重なって

黒いしみができていく

君しか知らない

僕の白い肌

思い出の残骸

長袖のシャツで隠す

僕の秋

 

 

 

 



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