萩生田光一の「歯舞・色丹の2島プラスアルファでも前進させるべき」は安倍晋三の意図を反映させた二島返還幕引き論

2018-12-21 11:26:45 | 政治

 自民党幹事長代行、安倍晋三の側近を名乗らせて憚らない、腰巾着萩生田光一が2018年12月19日に都内で講演。「NHK NEWS WEB」(2018年12月19日 17時48分)

 萩生田光一「択捉島や国後島を諦めるつもりはないが、フェーズは変わってきた。ロシアから小さな島をまず返してもらい、平和条約を結ぶことを急ぐべきだ。

 これまで70年間1ミリも動かなかった。歯舞・色丹の面積は全体の7%だが、周辺海域も返ってくれば自由に漁業ができる。例え『2島プラスアルファ』でも前に進んで
行かないといけない」――

 萩生田光一は「択捉島や国後島を諦めるつもりはないが」と言っているが、安倍晋三は2018年11月26日の衆院予算委で無所属の会幹事長大串博志の「北方四島は現在ロシアに不法占拠された状態にある、こういう認識でいいのか」との質問に対して「政府の法的立場には変わりはない」と答弁、さらに念押しを求められる形で問われると、「北方領土は我が国の主権を有する島々であります。この立場に変わりはない」と答えている。

 つまり直接的な言及ではないが、北方四島はロシアに不法占拠された状態にあり、四島共に主権は日本にあると断っている。前者と後者は相互対応した関係にあるから、不法占拠だとあからさまに言っていいはずだが、ロシアを刺激したくない気持ちから、このような遠回しな言い方になったのかもしれない。

 だとしたら、萩生田光一が「ロシアから小さな島をまず返してもらい、平和条約を結ぶことを急ぐべきだ」と発言していることは四島の帰属を解決してから平和条約を締結するとしている日本の基本的姿勢とも矛盾するし、安倍晋三が四島共に主権は日本にあると断っていることとも矛盾することになる。

 萩生田光一がこれを矛盾ではない、整合性ある主張だとするためには返還交渉の対象を四島全てとしなければならないはずだが、発言の一つ一つを眺めても、そうはなっていない。

 「択捉島や国後島を諦めるつもりはないが、フェーズ(局面)は変わってきた」とする物言いは前段で「諦めるつもりはない」と否定を匂わしておきながら、反転の意を含む接続詞「が」を付けて「フェーズ(局面)は変わってきた」と言うことで否定の反転を用いて後段の"局面変化"により強い正当性を与えていることになり、その分、「諦めるつもりはない」を弱めていることと、「例え『2島プラスアルファ』でも前に進んで行かないといけない」と一つの確たる目標を示していることから考えると、択捉と国後からの日本の主権の放棄の可能性を示唆している、あるいはロシアの不法占拠とした日本の領有権正当性の択捉と国後に限った撤回の可能性を示唆していると解釈しない訳にはいかない。

 いわば歯舞・色丹の二島返還での幕引きを謀る発言と見ることができる。

 そもそもからして「プラスアルファ」なる和製英語は「もとになる数量にいくらかつけ加えること」(goo国語辞書)を意味していて、メインとなる出来事や対象物に対してほんの僅かに付け足されるモノ、あるいは付け足されたモノについて言う。

 だが、歯舞・色丹は北方四島に於いて決してメインではない。本人が言っているように「全体の7%」に過ぎないとなると、メインは誰が見ても、択捉・国後となる。メインではない歯舞・色丹にほんの付け足しの「プラスアルファ」で良しとするのは余りにもスケールの小さいところに目標を置いていることになる。

 このことは日本政府が従来から四島返還を目標していたことと余りにも矛盾する。

 そしてこのスケールの小ささは択捉と国後からの日本の主権の放棄の可能性の示唆とロシアの不法占拠とした日本の領有権正当性の両島からの撤回の可能性の示唆――言い換えると、歯舞・色丹二島返還の幕引きの狙いとものの見事に合致する。

 とは言え、萩生田光一は安倍晋三の側近中の側近であり、自民党総裁をも兼ねる安倍晋三が自民党幹事長代行の任命者でもあるゆえに安倍晋三の意図を代弁する者としての役割を徹頭徹尾貫かなければならない。安倍晋三の意図に反する発言は腰巾着であることに反するし、自民党幹事長代行としても越権行為となって跳ね返ってくる。

 要するに萩生田光一の発言が意図していることは安倍晋三の意図を反映させた二島返還幕引き論としなければならない。

 「プラスアルファ」がスケールの小さいところを目指した目標であることは間違いないが、具体的に何を指すのか、2018年12月2日付「毎日新聞」記事が示唆している。

 この記事は有料ゆえ、無料箇所のみしか参考引用できない。

 〈安倍晋三首相は(2018年12月)1日午後(日本時間2日未明)、アルゼンチンのブエノスアイレスで、ロシアのプーチン大統領と約45分間会談した。両首脳は、北方領土問題を含む平和条約締結交渉の責任者を河野太郎外相とラブロフ外相とする新たな枠組みを設けることで合意。来年1月の首相訪露前に外相会談を開く方針で一致した。日本は、歯舞群島と色丹島の2島返還に国後、択捉両島での共同経済活動などを組み合わせた「2島返還プラスアルファ(+α)」案を軸に交渉に臨む構えだ。〉・・・・・・
 
 有料記事箇所に「2島返還プラスアルファ(+α)」案の情報源が記載されているのかもしれない。だが、国会とか記者会見とかの公の場で安倍晋三も河野太郎も、この案について触れていない。特に安倍晋三がプーチンと通算23回目となる首脳会談を行ったASEAN首脳会議のシンガポールからAPEC首脳会議が行われるパプアニューギニアへの移動の途中、オーストラリア・ダーウィンに立ち寄って11月16日に行った内外記者会見で次のように発言していることは無視できない。

 安倍晋三「従来から政府が説明してきているとおり、日本側は、ここにいう平和条約交渉の対象は、四島の帰属の問題であるとの立場であります。従って今回の1956年宣言を基礎として平和条約交渉を加速させるとの合意は、領土問題を解決して平和条約を締結するという従来の我が国の方針と何ら矛盾するものではありません」

 かくこのように安倍晋三は国民に対して四島を交渉対象として二島先行返還交渉・他二島継続返還交渉を謳っている。だが、「2島返還プラスアルファ(+α)」案が歯舞・色丹二島に択捉・国後をあとから加える返還を目標としているのではなく、両島での共同経済活動が「プラスアルファ」だとは、択捉・国後の返還そのものを対象とすることから比較した場合、まさに"付け足し"に過ぎない。

 択捉・国後は差し上げます。そのかわり共同経済活動で日本にも利益を与えてくださいと願い出るようなものである。それとも共同経済活動でロシア住民の生活が豊かになれば、住民の間から自ずと日本への返還の機運が高まってきて、ロシア政府もその機運に呼応するとでも思っているのだらうか。

 ロシア住民は余程の困窮した状況に追い込まれない限り、ロシアのままであることを望む。こういった人間の自然から見ると、安倍晋三が「日本側は、ここにいう平和条約交渉の対象は、四島の帰属の問題であるとの立場であります」と公言していることに反する萩生田光一指摘の、安倍晋三の隠された意図でもある「2島返還プラスアルファ(+α)」案は国民の目を欺く落としどころであって、歯舞・色丹二島返還幕引き論であることから免れることはできない。


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