夾竹桃
例年になく凌ぎやすい平和公園に
蝉がせわしなく鳴き
赤く
白く
夾竹桃の花が咲いている
一九九一年八月六日のそのとき
五万五千の会衆は
静かに頭を垂れ
思いを込めながら
身まかりし人々に
声もなく 言葉もなく
語りかけていた
四六年前の あの一閃
人の世に
人として生まれた人が
瞬時にして
一吹きの空気になり
一塊の肉になり
一個の物になり
時を経て
熱さにあえぎ
痛さにうめき
放射能に冒されて
いのちに別れを告げていく
その数 十数万
広島の透きとおった青い空の下で
いま 夾竹桃は
平和都市の
尊い犠牲者の
忘るべからざる象徴として
美しく咲いている
一九九一年八月 悠山人
*旧稿、広島市平和祈念式典参列、後日献詩。きょうは第71回平和祈念日。
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