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美術手帖2001年10月号で横浜トリエンナーレ(ヨコトリ)の原点振り返る:7

2016年01月02日 23時39分14秒 | ヨコハマトリエンナーレ横浜トリエンナーレ

■タイプ別スーパー鑑賞ガイド
7)音の芸術で鼓膜をシビレさせたいー≪可視的なるもの≫と≪可聴的なるもの≫、二つが互いに交錯し、共振し、ついには、どちらがどちらか分らなくなるーそんな混乱状態に飛び込む事ができるだろうか?
:芸術と≪音≫との関わりは、とりわけデジタル技術の発展と共に日々、大胆な変容を遂げつつあるともいえるし、はるか昔から、基本的な構図は殆ど変わっていないともいえる。媒体や方法論が変換されても、それはつまる所≪可視的なるもの≫と≪可聴的なるもの≫の領域設定と、両者の交通/共振/融合/共闘の可能性(あるいは不可能性?)をどう考えるのか、という問題に還元されるからだ。
 音は目では見えないし、絵画や彫刻を聴く事はできない。これは自明の事であり、そのような事を可能にするのは、ただ個別的で恣意的な想像力だけだ。ならば、その想像力を喚起=操作するような仕組みを造ったらいいという考え方はもちろんあって、それらは音響芸術や媒体芸術の一つの流れになってもいる。しかし、それは要するに、一種の幻想なのだという事は認めておかなくてはならない。
 あるいはもっと単純に、我々は世界や事物に対峙する際に目と耳を同時に使っているのだから、片方しかないのがそもそもおかしいのだ、という主張もあり、見て聴いて感じる事の足し算で成立する試みも多々存在している訳だが、これはしかし、だとすればいわゆる五感の内でこの二つだけを優遇しすぎてやいまいか?という素朴な疑問も生じてくる。
 しかるに、音響視覚などという、いかにもあいまいな宣伝文句に惑わされる事もなく、≪可視的なるもの≫が≪可聴的なるもの≫を、是が非でも必要としていく過程や、それらへと一気に突破していく契機、あるいはその二つが互いに反転し合い、遂にはどちらかどちらなのかさえ分からなくなる(しかも幻想抜きで!)ような魅惑的な混乱を、しかと見据え=聴き入っていく必要がある。両者の出会いは、実のところ、そんなに簡単な事ではないのだから。
【音楽の歴史性/非歴史性 メタ・メディアの意味論】
 今回のヨコトリにおいて、日本から≪音≫に関わる作品を出品する芸術家は4名ー問題意識を照し合せてみるから、たった4名でありながら、この組み合わせによって極めて広範かつ多方面的な、≪可視的なるもの≫と≪可聴的なるもの≫の交錯への問いかけが為されている事に気付かされる。
8)分野を横断する複合世代に注目したいー服装やアニメ/映画/インテリア・・・ファイン芸術と若者文化の領域を行き来する新世代の発想は新しい刺激が一杯だ。
:「パリでは服装編集の世代交代より、学芸員の方が回転が速いと思うわ。新しいの時代の芸術を読み解く感性と世代は、切り離せないものとして取られているのよね」と語ったのは、服装や芸術を縦横無尽に扱う≪パープル≫誌の編集長であり、学芸員としても活躍するエレン・フライスだ。学芸員として彼女が頭角を現したのは、パリ市近代美術館で1994年春に行った≪イベール・ダムール≫点だった。美術館に入ってすぐ、デュフィの壁画の大広間には写真家ヴォルフガンク・ティルマンスが選曲したテクノ音楽が鳴り響き、ヴィクトール&ロルフの服やマルタン・マルジュラを現代美術と同列に配置する。雑誌のように編集されたカタログが美術館で売られた事自体も、新鮮だった。 
 確かに、フランスでは、30代前半の学芸員の活躍が華やかに目をひき、良くも悪くも議論を呼ぶ力を持つ。
 それでは、ヨコトリに参加する作家たちを一望する時にも、分野という縦軸を捨て、世代という横軸をあえて持ち出してみてはどうか。ここに集まった60年代半ば~70年代前半生まれの作家たちは、内容に差はあれ、そうした試みー一つの分野におさまりきらず、あえて柔軟に、縦横無尽に横断するーを≪言われるまでもなく、当然の事として≫行っている。この世代の人間なら当然、興味を抱く対象と素直に向き合う姿勢は、我々の生活感覚の基調をなすものだ。
 ドミニク・ゴンザレス=フェルステルは、映画/旅/室内意匠/音楽など芸術の外へと飛翔する自らの好奇心を、最終的に自らの芸術空間へと見事に還元させる展示を行なう。服装界の異端児ヴィクトール&ロルフは、≪芸術と服装のつながり≫が喧々諤々の90年代後半の全てに先駆けて、誰より早く95年、パリコレ週間中、ショーではなく画廊での展示を行っていた。
 こうして振り返れば、芸術にしろ服装にしろ≪初めて≫はいつまでも新鮮で、どこまでも古びない。 



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