私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

誰がアマゾンの森に火を放っているのか?

2019-09-13 23:18:59 | 日記・エッセイ・コラム

 カリフォルニアの豪邸地帯の森林火災とアマゾンの熱帯雨林の火災とは根本的に違います。アマゾンを焼き払って、広大な農地を、牧場を開拓し、合わせて、熱帯木材の伐採を狙う農林畜産資本、また、地下に眠る膨大な資源の発掘を目指す鉱業資本がその主犯です。extractive industry という語があります。採取産業とか抽出産業とか訳されますが、企業利潤の最大化を駆動力としてあくまで自然を搾取する人間の所業を意味する言葉です。

 昔、1970年代に、北米で流行った成句があります:

WE HAVE MET THE ENEMY AND HE IS US (我等は敵に出会った、敵は我等だ)

この成句は、一説によると、1970年の「地球の日(Earth Day)」のポスターに用いられ、米国の漫画家Walt Kellyが続き漫画『Pogo』の主人公オッポッサム(大きなネズミのような動物)のポゴ(Pogo)にこの台詞を言わせてから有名になったようです:

https://humorinamerica.wordpress.com/2014/05/19/the-morphology-of-a-humorous-phrase/

地球環境を破壊しているのは、消費文明にどっぷり浸って、ひたすら消費生活を享楽している我々自身だという自覚を促す警句です。しかし、この言い回しには大きな危険性が潜んでいます。敵、HE or THEY, は確かに我等なのでしょうか?

 アマゾンの先住民たちが“THEY ARE KILLING US”と叫んで、彼らに襲いかかる暴力に必死に抵抗する状況を目の前にして、私たちはきっぱりとした選択をしなければなりません。選択を求められているのです。ポゴの意識のレベルを超えて、殺している側から、いま殺されている側に自覚的に身を移さなければなりません。「アマゾンの先住民たちが気の毒だから、できるだけ守ってやらなければ」と生ぬるい同情心を抱くことだけで済むことではないのです。

 アマゾンの大火を前にして、中南米の多くの人々の心に、27年前のフィデル・カストロの警告が生々しく蘇っているようです。1992年6月12日のこと、ブラジルのリオデジャネイロで開催された環境と開発に関する国連会議で、キューバの首相フィデル・カストロは、このまま環境破壊の開発を続ければ人類は滅亡するという強烈な講演を行いました。その全文は、例えば、下の記事に含まれています:

https://libya360.wordpress.com/2019/08/26/when-the-amazon-is-burning-return-to-fidel/

カストロの発言の英訳文を断片的に和訳します。(原語はスペイン語):

#It is necessary to point out that consumer societies are fundamentally responsible for the brutal destruction of the environment. They arose from the old colonial powers and from imperialist policies which in turn engendered the backwardness and poverty which today afflicts the vast majority of mankind. (消費者社会というものが環境の凄まじい破壊に基本的に責任があることを指摘する必要がある。それは古い植民地体制から立ち上がり、帝国主義的政策が、引き続き、後進性と貧困を生み出して、それが、今日、人類の大多数を苦しめている。)

#Population pressures and poverty trigger frenzied efforts to survive even when it is at the expense of the environment. It is not possible to blame the Third World countries for this. Yesterday, they were colonies; today, they are nations exploited and pillaged by an unjust international economic order.  (人口膨張の圧力と貧困は、環境を犠牲にしてでも、生き残るための凶暴なまでの努力を引き起こしている。このことに対して第三世界の国々を責めることは出来ない。以前には、それらの国々は植民地だった;今日では、不公平な国際的経済体制によって搾取され、略奪されている。)

#If we want to save mankind from this self-destruction, we have to better distribute the wealth and technologies available in the world. Less luxury and less waste by a few countries is needed so there is less poverty and less hunger on a large part of the Earth. We do not need any more transferring to the Third World of lifestyles and consumption habits that ruin the environment. (もし我々がこの自己破壊から人類を救いたければ、世界で入手可能の富と技術をもっと公平に配分すべきである。少数の国々が奢侈と浪費の度を減らすことで、この地球の大部分での貧困と飢餓を今より減らすことが必要である。環境を荒廃させるライフスタイルと消費の習慣を、これ以上、第三世界に移植する必要はない。)

この発言に続くカストロの講演の締めくくりの部分の英語トランスクリプトを以下にコピーします。けだし、歴史的至言です。今回のアマゾン熱帯雨林火災に関しての現ブラジル大統領 ボルソナーロの言動と比べてみて下さい。

# Let human life become more rational. Let us implement a just international economic order. Let us use all the science necessary for pollution-free, sustained development. Let us pay the ecological debt, and not the foreign debt. Let hunger disappear, and not mankind.

Now that the alleged threat of communism has disappeared and there are no longer any more excuses for cold wars, arms races, and military spending, what is blocking the immediate use of these resources to promote the development of the Third World and fight the threat of the ecological destruction of the planet?

Let selfishness end. Let hegemonies end. Let insensitivity, irresponsibility, and deceit end.

Tomorrow it will be too late to do what we should have done a long time ago.

Thank you. (終わり)

 今の米国に残存するほんの僅かな数の真のジャーナリストの一人であるクリス・ヘッジズは2014年6月に『我等は全てサパティスタスにならなければならない』と題する名記事を書きました:

https://www.truthdig.com/articles/we-all-must-become-zapatistas/

この呼びかけを今のアマゾンの大火について適用すれば、アマゾンに火を放っているのは誰なのか、つまり、真の敵は誰であるかを見据えて、その“彼等”に対して戦いを挑むことが“我等”に要請されているのです。この呼びかけは前回のブログ『THEY ARE KILLING US(彼等は我等を殺しに殺す)』の末尾に掲げたアルンダティ・ロイの呼びかけと同じです:

「企業の目指す革命は、彼等の売っているもの、つまり、彼等の考え方、彼等が捏造した歴史、彼等の戦争、彼等の武器、彼等が不可避だと考えること、などなどを買うことを、もし、我等がきっぱり拒否したら、崩壊するだろう。・・・肝に銘じておこう:我等が多勢で、彼等は無勢なのだ。我等が彼等を必要とする以上に、彼等には我等が必要だ。・・・もう一つの別の世界は可能であるだけではない、もうそこまでやってきている。静かな日には、彼女の息吹が私の耳には聞こえる。」

「The corporate revolution will collapse if we refuse to buy what they are selling – their ideas, their version of history, their wars, their weapons, their notion of inevitability… Remember this: We be many and they be few. They need us more than we need them…Another world is not only possible, she is on her way. On a quiet day, I can hear her breathing.」

 

藤永茂(2019年9月13日)

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