私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

サパタとオジャラン

2019-04-17 23:03:18 | 日記・エッセイ・コラム
 ロジャバ革命の命運が心配でならない私はANFNEWSというサイトを日に2回以上訪れます。ロジャバ革命を推進しているシリアのクルド人たちは、今の時点では、すっかり米国の地上代理軍の役割を押し付けられて、米国、トルコ、ロシアの政治的駆け引きの渦中でもがき苦しんでいますが、このANFNEWSに現れる記事を注意深く読むことで、彼らの真意が読み取れるように思われます。
 4月14日には
Kurdish Women's Movement paid tribute to Emiliano Zapata
と題する記事が出ました:
https://anfenglish.com/features/kurdish-women-s-movement-paid-tribute-to-emiliano-zapata-34290
 ご存知のメキシコの革命家エミリアーノ・サパタは、1919年4月10日、裏切り者によって暗殺されました。今年はその100周年記念の年というわけです。上の記事を、少し不分明な点もありますが、訳出します:
**********
 クルド人女性運動:エミリアーノ・サパタの暗殺から100年、人民たちの革命は一致団結して前進する
 1919年4月10日、革命家エミリアーノ・サパタはメキシコのモレロス州チナメカで暗殺された。サパタはサパチスタ運動の立ち上げやあらゆる形の搾取に反対する社会運動を鼓舞することになった。
 今年の4月9日と10日の二日間にわたって、サパタの熱い志が抑圧に反抗する世界中の人民たちの熱望を代表することを想起して、国際的、国内的動員が行われ、クルド女性運動(Kurdish Women Movement)からの公式声明が、メキシコのアミルシンゴでの全国原住民会議総会とチナメカの町で行われた大行進で読み上げられた。
 以下はその声明の全文である。
「親愛なる女性たち、同志たち、闘争に参加する姉妹、兄弟たちへ、
本日、我々クルド女性運動は、世界中の人民の自由、女性の自由の歴史によって進展されてきた自治的な倫理的また政治的価値を脅かすあらゆる不正行為に対して我らの社会を守ることと、居住の土地と自由を愛することにおいて、団結し参加する。この祖先の歴史の共有はエミリアーノ・サパタが遂行した終わりなき闘争を我々にとってより身近なものにする。それは現在も続いている。国家的、人種差別的、資本主義的、家長主義的搾取のない世界、そこでは女性が、生活の全ての面で、変革の原動力となるような世界を建設するすべての手立てを我々が獲得するまで、今の強度のままで闘争は続き、終わることはないであろう。
 あらゆる植民地化、資本主義、国家組織の前線で、女性は最初の最高に搾取される植民地であることを、これまで我々は何度も言ってきた:我々は極めて根源的な判断を下したのだ。
 今日、我々は言う、この判断はそれに対する解答を掘り起こし、より根源的な解決法を見出した。それは資本主義的近代性のルーツにまで戻って、女性の奴隷化のない別の生活様式を創造し、その結果として、社会全体の生活様式を創造する方法だ。 
 我々は、多くの世界が移行できる、もう一つの別の世界が可能であることの証を、今日、ロジャバで示している。
 今や、イスラム国の広域的資本主義システムが生み出した聖戦勢力は、デラゾール地域で、我らの女性人民防衛軍によって決定的に打ち負かされた。この勝利は、多種多様の人々の自由な思考のおかげで、北クルディスタン、ロジヘラ(注:イラク北部クルド人地域)、そして北シリアの民主的連邦革命プロジェクト地域に現在存在する数百万の女性と男性の自主的組織体の異文化間勢力のおかげで、獲得された。
 モレロスからクルディスタンへ、我々は、民主的現代性の流れの中で一体となる。体の皮膚の下に闘争を感じつつ我々は横に並んで行進する。市街から森林へ、監獄から山々へ、サミール・フロレスのような、革命に命を捧げた全ての人々の思いを感じながら。我々の希求を結び、諸大陸を結ぶ橋を架けてくれた、サキネ・ジャンシス、ベルタ・カセレス、マリエル・フランコ、バティ・カリニョ、アルゼンチン革命家アリナ・サンチェスたちの精神を携えて、我々は、その数をいやまし、より強力になって、行進を続けている。
 エミリアーノ・サパタ暗殺100周年記念にあたり、彼の生涯、彼の功績に対する然るべき賛辞を超えて、我々は今日発言する:我々はこの地球という惑星の至る所の最前線で、大地の守護者、我々が毎日呼吸する大気の守護者、河川の守護者として戦う原住民、原住民女性たちに対する我々の歴史的な負債を、今こそ世界の全女性が家長制的ファシスト的資本主義の打倒に立ち上がることによって支払いたい、と。
 これらの夢と同様の想いに駆られて、この権力世界組織とトルコ国家独裁政権に反抗し、レイラ・ギュヴェンは、世界中からの数千の政治犯活動家とともに、ハンガーストライキを開始して、今まで150日を超えて続いている。その行為は、普遍的自由の概念に連なり、20年以上も厳重警備の監獄に完全隔離されている民主的連邦主義の革命的哲学者アブドゥラ・オジャランの隔離状態を打ち破ることを目的としている。
 今日、レイラ・ギュヴェンの先駆的行動を通して、クルド人たちが実行している抵抗は歴史的な高さにある。
 トルコ国によって占領されたクルド人のアフリン市の解放は抵抗運動の次のステップであるべきであり、アフリンの解放は、日々に強大になる女性革命の力により、ファシズムとの決別に我々を導くであろう。
 エミリアーノ・サパタとアブドゥラ・オジャランが我々に示したように、彼らの抱いた理念は阻止できない。 それらの理念は各世代を鼓舞し、生活共同体を強靭にする。我々はサパチスタの姉妹たちが我々に与えてくれた光を消すことはなかった。その光は、抑圧されている世界のあらゆる場所で、今までにも増して、我々の挑戦と我々の夢を輝かせ、それらを希望と自由の炎に、現在のシステムを代替する炎に変えるであろう。女性のグローバルな民主的連邦主義に基づいた自治政府の形で、個別多数が力を合わせ、もっと美しく公正な、もう一つ別の人間の生き方を発展させるのだ。
 この鮮明な約束とともに、我々はこの祝典と今日の会合に敬礼を捧げる。
サパタ万歳! 戦いを続けよう!」
**********
 何と胸がすくような宣言ではありませんか。これを、現在、悲劇的な苦境に追い込まれたロジャバのクルド人女性たちの現実逃れの、強がりの叫び声として冷笑する向きもあるかもしれません。私は、ここに、希望の光を見ます。今は米国の狂人政治家たちに引き摺り回されていても、クルドの女性たちは、自らの理想を堅持して、じっと耐えているのです。上の声明文の前半に、数名の女性の名前があげられています。原文を写しておきますので、時間をお持ちの方々は、ネットで調べてみてください:
With the spirit of Sakine Cansiz, of Berta Caceres, of Marielle Franco, of Baty Cariño, of our revolutionary Argentina Alina Sanchez, who built bridges between our desires and continents, we continue to walk, multiplied and stronger.

 次回は、ロジャバ革命運動とサパチスタ革命運動の関係などを考えます。

藤永茂(2019年4月17日)
コメント (2)   この記事についてブログを書く
« リビアでの戦闘は内戦ではない | トップ | サパティスタは強くなり大き... »
最近の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (文雄)
2019-04-18 22:34:47
疑問なのは、この人達にイスラム教を廃棄する意思が有るのか、ということです。

中東アラブ世界に於いて真に革命的と言えるのはイスラム廃棄運動だけであって、それなくしては結局、イスラム教は創成期への回帰傾向があることから、どんな人達も仕舞いには最も正統なイスラム教徒集団であるISの様な存在に至り、社会崩壊するしかなくなります。
テクムセ (私は黙らない)
2019-04-25 04:05:28
藤永先生、大国の駒として翻弄される少数民族クルド、私にはどうしても「インディアン悲史」のインディアン、私が昔住んでいた東南アジアの例えばラオスのモン族の姿が重なって見えます。
原住民や少数民族を駒として利用するのは、イギリスの十八番であることは、アメリカ独立戦争の昔から今に至るまで全く変わっていない、そしてこの姑息な方法をアメリカが見事に踏襲しているということです。
インディアンやモン族の闘争の結末がどうなったか、クルドが同じ轍を踏まないためにはどうすればよいのでしょう。
肝に銘じておかなくてはいけないのは、こうした大国は、不要になれば容赦なく捨てる、利用価値があるかないか、その一点あるのみということです。
それにしても、クルド女性の勇気、勇敢さはどこからくるのでしょうか。女性の権利が制限されがちなイスラムの教えとは相反するように思うのですが。クルド社会における女性の在り方が、ユニークなのでしょうか。

コメントを投稿

日記・エッセイ・コラム」カテゴリの最新記事