私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

なぜエリトリアだけを(3)

2015-06-17 20:21:25 | 日記・エッセイ・コラム
 ある意味で、米国の対エリトリア政策の目的は実に単純明快です。現在のアフェウェルキ政権を打倒して、米国の言いなりになる国にしたい。その為には、どんな嘘をつくことも平気です。オバマ大統領は稀代の嘘つきですが、誰にしても、語るに落ちるということはあります。私が嫌悪するクリントン財団が主宰するクリントン・グローバルイニシアティブ(CGI)の会合で、オバマ大統領は、2012年9月25日、エリトリアをめぐるhuman trafficking (国境を越える人身売買)について、次のような発言をしました。:
I recently renewed sanctions on some of the worst abusers, including North Korea and Eritrea. We’re partnering with groups that help women and children escape from the grip of their abusers.
「私は最近、北朝鮮、エリトリアを含む最悪の虐待行使國の幾つかに対する制裁を更新しました。虐待を受ける女性や子供たちがそれらの国から脱出するのを援助する諸団体と我々は協力関係を結んでいます。」
よく気を落ち着けてオバマ大統領が言っていることを読み取ってください。女子供(women and children)という彼の言葉遣いも気に入りませんが、エリトリアの場合は十代の子供たちを意味しています。米国は、あらゆる手段を動員してエリトリアの有為な若者たちを国外に吸い出して、エリトリアの国力、特に軍事戦闘力を弱体化しようとしているのです。そのためには、極めて悪質の人身売買仲介者のパートナーになって憚るところがありません。エリトリアの人々は、エチオピアからの独立をめざす激烈な独立武力闘争の末、1993年4月の国民投票で99%を越える支持率で独立を表明し、5月24日にエチオピアからの独立を宣言、5月28日には正式に国連への加入も承認されました。エリトリアの人口は約500万、エチオピアは人口約1億、アフリカで第2の大国、今は米国に操られる国の一つで、武器も十分供与されています。独立心が極めて旺盛で米国の言いなりに全くならないエリトリアのアフェウェルキ政権の打倒を企てる米国は、エチオピアを使ってエリトリアに軍事的圧力を加えることでエリトリアに常時国民皆兵的な緊張状態を強い、同時に過酷な兵役や国家奉仕の労働を嫌うエリトリアの若者のエチオピア側への越境を誘致しています。上掲のオバマ大統領の言葉の意味がここに露呈しています。エリトリアに対する制裁については、2009年、エリトリアがソマリアの反政府武装勢力に支援を行っているという大嘘をでっち上げて国連(つまり米国)が制裁を議決し、2011年には更なる制裁が追加されましたが、昨年2014年になって、流石の米国もエリトリアのソマリア援助が事実無根であったことを認めました。しかし、エリトリアに対する諸々の制裁措置はまだ取り消してはいません。しかも、前の大嘘に替わって、今度は、「凶悪な独裁者アフェウェルキによって痛めつけられているエリトリアの国民を救ってあげなければ」という真にR2P的お題目のもとにエリトリア潰しの野望を実現しようとしているのです。
 エリトリア国民に対するアフェウェルキ政権の恐怖政治に関する今回の国連報告書(500頁)の内容は文字通り“読むに堪えない”ものですが、具体的な内容よりも、このようなものを押し出してくる真の悪(evil)とそれに魂を売った人たち、それに寄り添う人権擁護団体の面々、この悪の曼荼羅こそ我々が凝視すべきものでしょう。
 幸いにも、この悪のlitanyの毒消しをしてくれる文書が存在します。デンマークの入国管理当局によるエリトリア国内事情の調査報告書(79頁、2014年)です。:

Eritrea – Drivers and Root Causes of Emigration, National Service and the Possibility of Return

http://www.nyidanmark.dk/NR/rdonlyres/B28905F5-5C3F-409B-8A22-0DF0DACBDAEF/0/EritreareportEndeligversion.pdf

デンマークがこの調査を始めた原因は、エリトリアからの亡命希望者数が2014年の7月に飛躍的に増加したことでした。それまで、月平均10人ほどだったのに、7月には突然510人に飛び上がったのです。
 冒頭に調査報告書の目的が書いてあります。「2014年の夏を通して、デンマークはエリトリアからの亡命希望者数の突然の目覚しい増加を経験した。他のヨーロッパ諸国も同様の増加を経験した。エリトリア市民は、それ以来、ヨーロッパ全体の亡命希望者数の大きな部分をなしている。・・・・」この異常事態に直面したデンマークの当局は、エリトリア人のデンマークへの亡命希望者の受け入れ政策を立てる為の判断材料として今回のエリトリア人大量国外脱出の背景事情を自分たちの手で調査することにしたのでした。あとは以下の原文を読んでください。:
During the summer of 2014, Denmark experienced a sudden and significant increase in the number of asylum seekers from Eritrea. Other European countries also experienced a similar increase. Eritrean citizens have since constituted a substantial part of the overall number of asylum seekers in Europe.
The majority of Eritreans seeking asylum in Denmark state as reasons for leaving Eritrea the National Service, the condition and duration thereof, and the fact that they have left Eritrea illegally. Therefore, they fear reprisals from the Eritrean government upon return to Eritrea.
The available country of origin information relevant for the Danish caseload was published by stakeholders with no or little direct access to Eritrea. Consequently, the hitherto available reporting on the conditions in Eritrea to a large extend seems to be based on information obtained from sources that were not present in Eritrea or on interviews with Eritrean refugees abroad. In addition, some of the available information appears not to be obtained recently.
Therefore, the need for more updated and first-hand description of the conditions on the ground in Eritrea arose.
2014年の夏からの突然の顕著な増加は、勿論、人為的、つまり米国のなせる技です。上掲のオバマ大統領の話の通りです。あれこれ策を弄して、次代のエリトリアの国家的戦力を担う若者たちを誘惑して国外に脱出させてエリトリアを弱体化し、同時に、その数の急激な増加がアフェウェルキ政権の恐怖による支配の一段の悪化を示すかのように宣伝するという、一石二鳥の効果を狙ったものであります。
 米国は今回のエリトリアに関する国連報告書を振りかざしてアフェウェルキ政権潰しを正当化しようとするでしょうが、国連の報告書とデンマーク政府の報告書を合わせ読む労を取りさえすれば、真実がどのあたりにあるかを看破することは決して難しくありません。多くの方々がそうして下さることを祈っています。
 独裁的にエリトリアを統治するイサイアス・アフェウェルキ(1946年生まれ)という男、これは注目に値する人物です。もし暗殺による死や、NATO/米国の空爆による死を免れ、目指す政治的目的(エリトリアという紅海南岸の小国の独立を守り通す)を何とか果たすことが出来れば、アフリカの歴史、いや、世界の歴史に名を残すことになること必定です。
 
藤永 茂 (2015年6月17日)
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