私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

リビアでの戦闘は内戦ではない

2019-04-10 22:17:28 | 日記・エッセイ・コラム
 リビアで始まった戦闘は内戦ではありません。国の外からリビアをコントロールし続けようとする勢力と、それと戦って、リビアを自分たちのものとして奪還しようとするシリア国民の意志との戦いです。  
 Alexandra Valiente という名前に憶えがありますか? 前に2度書いたことがあります:
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/28204ac13fe4c6c7b8b0d3a9d58f4978
世界情勢についての発言者として、私が最も頼りにしている女性の一人です。4月7日、アレクサンドラ・バリエンテさんは「トリポリを解放する(Liberating Toripoli)」という声明を発表したので訳出します:
「国連とメディアは現在のリビア情勢を、相争う派閥勢力の間の紛争であり、外交的駆け引き、平和的交渉、そして、外部からの、外交的あるいは軍事的介入を含む各種の干渉を必要とする情勢だとして描いている。
彼らの関心事はリビアの一般市民の擁護ではなく、彼ら自身の搾取的な地域政治的利益だ。真実は、トリポリの戦いはリビア人の間の戦いではなく、リビアの人民とリビアの正規軍が外国からの侵略者に立ち向かっているのである。
リビアの情勢はシリアの情勢に平行している。シリアでは正当な政府軍が、US-EU-NATO の占領軍と、その代理軍として、“ダエッシュ”という上部組織の下で戦っているIS軍からの攻撃に対して、祖国の軍事的防衛に従事している。リビアでは、“ダエッシュ”はLIFG(Libyan Islamic Fighting Group) を含んでいる。
この理由で、人民運動や諸部族とその報道機関からの声明は、事態の真実を世界に告げる闘争において、信頼すべき参照文献なのである。
テロリズムと外国による占領からのトリポリとリビア全土の解放は国際的な支持と連帯に値する。   アレクサンドラ・バリエンテ」
 このバリエンテさんの発言の前々日、4月5日付で
Statement of the Libyan People’s National Movement
https://libya360.wordpress.com/2019/04/06/statement-of-the-libyan-people-s-national-movement-in-support-of-the-libyan-armys-advance-in-tripoli/
と題する声明がリビア東部の都市ベンガジで発表され、4月6日には、その英訳がlibya360のウェブサイトに掲載されましたので、下にコピーします:
UNOFFICIAL TRANSLATION
Statement of the Libyan People’s National Movement
Proud of the progress of the Libyan Arab armed Forces towards
the capital of Tripoli and its liberation

In these crucial hours, the Libyan Arab armed forces, with their loyal officers and soldiers, are advancing to liberate the bride of the sea and the river, Tripoli, the flower of the cities, which is bound by terrorist militias, gangs of prostitutes, criminals and foreign political actors.
Thousands of Libyan cities and tribes from all over the country are taking part in this battle. They have no faith but the homeland, no purpose but sovereignty and security, and the hope of saving Libya from the void of falsehood.
The forces of evil are uniting against the efforts of the Libyan armed forces, from the Muslim Brotherhood terrorist movement to the LIFG militias and the political gangs subordinate to the West. Therefore, the movement affirms that the correct position in history is only with full support of our courageous officers and soldiers, laying aside political and social classes in order to provide civil, social and media coverage of the movement of our heroic army.
The Libyan People’s National Movement affirms to the international community that the will of the armed forces is an authentic expression of the will of the Libyan people and that standing against them is an outright violation of the right of the Libyans to defend their sovereignty, wealth and future from terrorism and takfiri criminality.
The liberation of Tripoli, the capital of the country, is a historic opportunity to build a new, independent, stable and secure Libya by the efforts of all its people, in which justice and equality among its citizens will be achieved. The sovereignty and wealth of the people will be found in a popular democratic political system with no monopoly in the name of religion.
The movement calls upon all its supporters deployed throughout Libya and all the supporters of the homeland to exert every effort to achieve lasting victory and reiterates the call for all soldiers, non-commissioned officers to join their brothers and comrades in the armed forces to answer the call of duty in response to the calls of the sons the Libyan people to rid them of the futility of militias and criminal gangs.
May Allah have mercy on the martyrs of the armed forces, and Libya live as a free and secure nation.
Libyan People’s National Movement
Released in Benghazi
5 April, 2019
  
 この声明を出した「Libyan People’s National Movement(LPNM, リビア人民国家運動?)」は旧カダフィ政権支持の心情を持つ人々が立ち上げた政党的集団の名称で、Libyan Popular National Movement あるいは Libyan National Popular Movement とも英訳されています。2011年2月、いわゆるリビア内戦が勃発し、米欧の大規模軍事介入によって、8月にはリビア政府は事実上崩壊、カダフィ少佐は10月に惨殺されました。LPNMは2012年2月15日には早くも結成されましたが、同年7月の米欧主導の総選挙には参加を禁じられました。しかし、その後、次第にその力を増して今日に至っています。この政党的集団の意図するところは、例えば、次の声明を読めば明らかに理解できます:
https://www.pambazuka.org/democracy-governance/statement-libyan-national-popular-movement-seventh-anniversary-february
 このところリビアでの武力衝突激化が急にマスコミを賑わしています。朝日新聞を例にとれば、4月9日の朝刊には
「国家が東西に分裂した状態にある北アフリカのリビアで、対立する政治勢力同士の衝突が激化している。2011年にカダフィ政権が崩壊して以来、不安定だった治安はさらに悪化しており、新たな内戦に発展する事態も懸念されている。発端は4日、リビア東部トブルクを拠点とする武装勢力「リビアと国民軍」(LNA)のハフタル司令官が、暫定政府が支配する首都トリポリへの進軍を命じたことだ。」と報じられています。国連が支持するトリポリの暫定政府を率いるシラージュ暫定首相もハフタルも元はカダフィ政権に仕えた人物で、ハフタルはアメリカの支援を受けてカダフィに反旗を翻し、その後アメリカに亡命して市民権を取り、CIAの要員となった人物です。そのハフタルが率いる軍事勢力のトリポリ占領の動きを、アレクサンドラ・バリエンテさんが、そして、LPNM が全面的に支持するという構図を我々はどう理解すれば良いのか?
ハフタルという有能なリビアの軍人が自分の配下に入ったかなり強力な軍隊(リビア国民軍)を使って一国の主となる野心に燃えている、ということかもしれません。しかし、ハフタルという男が個人としてCIAを裏切ったかどうかは、いわば、小さな問題です。今、リビアで繰り広げられている戦いの真実は、バリエンテが言うように、
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真実は、トリポリの戦いはリビア人の間の戦いではなく、リビアの人民とリビアの正規軍が外国からの侵略者に立ち向かっているのである。
リビアの情勢はシリアの情勢に平行している。シリアでは正当な政府軍が、US-EU-NATO の占領軍と、その代理軍として、“ダエッシュ”という上部組織の下で戦っているIS軍からの攻撃に対して、祖国の軍事的防衛に従事している。
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のです。リビアでの戦いの構図は、シリアでの戦い、ベネズエラでの戦いの構図と同じになりつつあるのです。これが、今から展開されようとしているリビアの“内戦でない内戦”の実相です。

藤永茂(2019年4月10日)
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