私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

Settler Colonialism(セトラー・コロニアリズム)(3)

2018-07-01 00:20:10 | 日記・エッセイ・コラム
 今の世界地図でイスラエル国とそれに接するヨルダン川西岸地区(ウエストバンク)とガザ地区を合わせた地域で、イスラエルによる苛酷なセトラー・コロニアリズム政策が強行されています。聖書的過去はともかくとして、この地域の全体にはパレスチナ人と呼ばれるアラブ系先住民が過去千年以上にわたって住んでいたのです。現在では、100万余がイスラエル国内に、約300万がウェストバンクとガザに住んでいます。ウェストバンクとガザは今パレスチナ自治区と呼ばれていますが、ウェストバンク地区の半分はイスラエルによって占領され、「屋根なしの監獄」の異名をとる面積360平方キロのガザ地区では200万以上に人口が増加しつつあります。
 2018年6月2日付けのブログ記事Settler Colonialism(セトラー・コロニアリズム)(1)では、アーシュラ・K・ル=グウィンの「ナチによるユダヤ人大量殺戮に等しいインディアン撲滅」という言葉を引用した後、
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そうです、パレスチナの土地で、ユダヤ人はセトラー・コロニアリズムを実行しているのです。それを達成するには、一人でも多くの原住民パレスチナ人を殺さなければなりません。できれば、カリフォルニアの白人たちが成し遂げたように原住民を皆殺しにしたいのです。これがパレスチナ問題の核心です。私たちは、その事態の進行を、西部劇映画ではなく、リアルタイムで見ているのです。米国がガザ地区でイスラエルのやっている大量虐殺を非難しない、いや、出来ないのは、自分が同じ罪業をなすことで国の繁栄を勝ち取ってきたからです。
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と書きました。Counterpunchというウェブサイトに出た記事(6月4日付け)

https://www.counterpunch.org/2018/06/04/sacrificing-gaza-the-great-march-of-zionist-hypocrisy/

によると、この数週間に、イスラエルはガザのパレスチナ人たちの非暴力抗議運動行為を実弾で弾圧して、少なくとも112人の死者、13000人以上の負傷者(瀕死の重傷者332人)を出しました。これはアフリカの南ア連邦の人種分離(アパルトヘイト)政策に対する抗議運動を弾圧した有名なシャープビル虐殺(死者69、負傷者186)を凌駕する虐殺事件です。シャープビル虐殺が起こった3月30日(1960年)は、現在の南アフリカ國で「人権の日」として祝われていますが、ガザの弾圧で61人の死者を出した5月14日(2018年)がパレスチナの「人権の日」の祝日となる可能性は希少でしょう。パレスチナの地にユダヤ国家を確立しようとするユダヤ人の執念はあくまで強固かつ残忍極まるものであるからです。近頃、複数の場所で、イスラエル政府の顧問を務めたことのある人口統計の専門家アーノン・ソファ(Arnon Soffer)の次のような発言が引用されているのに出会いました:
“When 2.5 million people live in a closed off Gaza,” Soffer predicted, “it’s going to be a human catastrophe. Those people will be even bigger animals than they are today, with the aid of an insane fundamentalist Islam. The pressure at the border will be awful. It’s going to be a terrible war. So, if we want to remain alive, we will have to kill and kill and kill. All day, every day.” “If we don’t kill, we will cease to exist,” he said.
私は、この発言を読みながら、米国の児童文学の古典『オズの魔法使い』の著者ライマン・フランク・ボームがアメリカ・インディアンの完全抹殺の必要を説いた新聞社説を思い出していました。
 1890年12月29日、サウス・ダコタのウンデド・ニーで女子供多数を含む300人のスー・インディアンが虐殺され、酷寒の下で凍てついた死体はやがて大きな溝に放り込まれました。大虐殺の5日後の地方新聞『パイオニア』の社説にボームは次のように書きました:
「『パイオニア』紙は、以前、我々の安全はただただインディアンの完全抹殺に依存すると宣言した。これまで何世紀もの間、彼らに対して悪行を重ねてきた我々は、我が文明を守るために、もう一つだけ悪行を重ねて、これらの、馴化せず、馴化不可能な生き物たちを地球の表面から拭い消してしまった方が良かったのだ。・・・」(引用終わり。 このライマン・フランク・ボームについての話は拙著『アメリカン・ドリームという悪夢』の156頁以降に書いてあります)
 私にとっては、しかし、この70年間にパレスチナの地で繰り広げられてきた惨劇はセトラー・コロニアリズムの問題を超えます。「ユダヤ人とは、私にとって、何か」という問題です。

藤永茂(2018年7月1日)
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1 コメント

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わ た し の や み の お く (よい/ノラや)
2018-07-05 18:19:45
「私の『闇の奥』」か「『私の闇』の奥」か
乾坤の一 投を心待ちにしてます

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