日々・ひび・ひひっ!

五行歌(一呼吸で読める長さを一行とした五行の歌)に関する話題を中心とした、稲田準子(いなだっち)の日々のこと。

ギリギリの良心

2006年02月24日 | その他の日々
駅から大型量販店にかかる高架橋を渡っていたら、女性が突っ立っていた。

本当に、手提げの紙袋をもって、
なにをするでもなく、端っこに突っ立っていた。

何人かの人が、その人の前を行き過ぎる。

その中のひとりとして、
私も通り過ぎようとする。

が、その女性は、
私に近づいて、「よろしくおねがいします」と、
広告が書いてあるほうを裏にして、
ティッシュを渡してきた。

「?」と思って、ティッシュを裏返し、
なんの広告かを確かめると、風俗嬢の応募の広告だった。

「何故にあたしに……」と、
シブイ気持ちになる以上に、
これを配っていた、女性を痛々しく思った。

まるで、ギリギリの良心を、
必死に守りながら、
染まらざるを得ない現実を
象徴しているかのごとく。

「生きる」という苦渋の味が、口の中に広がる。

人がダメになる時って、
何をしているのか、ということではなくて、
一見ではよくわからない、
その人が持つ、ギリギリの良心を、
踏み潰した時だよな、と考え込む。

その女性からだいぶ離れたところで、
広告の紙を丸めて捨てた。

ギリギリではない良心の呵責から、
なんとなくそうした。

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