日々・ひび・ひひっ!

五行歌(一呼吸で読める長さを一行とした五行の歌)に関する話題を中心とした、稲田準子(いなだっち)の日々のこと。

持ち主が、見つかりました。

2006年12月18日 | その他の日々
試食魔が来た時の、
仕事の終わり間際、
見たこともない、電話番号から、
ケータイに電話をもらっていた。

後片付けを優先して、
あえてケータイには出なかった。

その電話番号は、
自宅の電話にも、
電話をかけていた。

メッセージが入っていたので、
聞いてみると、
以前、定期ケースを拾得して、
警察に届けていた
持ち主からのようだった。

しばらくしてから、
また、その持ち主から電話があり、
今日の夕方、
私が持っている書類を渡すため、
会うことになった。

     ★

約束の五時半に、
その方はきっちりと現れた。

50代後半ぐらいの方だろうか。
工場の制服に、ジャンバーを着た姿だった。

私のマンションのエントランスで立ち話をする。

お話を聞いたところによると、
紛失された後、もう一度、
スーパーへ戻ったり、
道を見直したりしに来たそうだ。

翌日、働いている工場でも探し、
やっぱりなく、
同じパート勤めの人に、
「そりゃ、無理やわ」と言われて、
半ばあきらめていたらしい。

が、念のため、
私が行ったところとは、
また違う交番へ行って、
届出がないか確認したけれど、
やっぱりなく、
がっくりしたその翌日
警察から、はがきをもらって、
拾得されていることを知ったそうだ。

「お金は諦めていたし、
スーパーのポイントカードや、
定期入れも、
よく一緒に洗ったりして、
ダメにするんで、
なくなっても、
気にしてなかったんですけれど、
ただ、そのミニカレンダーがねぇ。
もう、工場になくってね、
それだけは惜しくて、惜しくて」

と、持ち主さんはおっしゃった。

え!4千円はよかったの?と、
内心驚く。
が、4千円がなかったら、
どうなっていたか、わからない定期入れ。

何が幸・不幸を分けるか、わからないものだ。

     ★

さらにお話を聞くと、
具体的なことは聞かなかったが、
その工場内のお仕事のひとつに、
シンナーを扱う仕事があるのだそうだ。
からだのことがあるので、
毎日ではないけれど。

が、それでも、シンナーを扱った日は、
晩御飯の準備ができないほど、
頭がくらくらするのだそうだ。

定期入れを落とした日も、
頭のクラクラする日だったそうで、
いつもだったら、チャックのあるポケットに、
そういうのは直すところを、
うっかりと、
ジャンバーの落っことしやすいポケットに、
入れたのだそうで。

大変な仕事だなぁと、じっとただ聞いていた。

おうちの場所も、聞いたりした。
そんなに近くではないが、
買い物へ行くときに、
もしかしたら、会うかもな、という場所ではあった。

「あの、私、考え事していたら、
うっかり、ご挨拶するの、忘れるかもしれませんけど……」

と、持ち主さんは言った。

「あ、それは、お互い様ですよ。
私も見ているようで、見ていない感じで歩いていますから」

と、答える。

そこはサバっとしてなくっちゃね。

     ★

正味10分ぐらいだっただろうか。

そんな感じで、立ち話をして、
素直に菓子折りを頂いて、別れた。

が、家の中に入って、「しまった!」と思う。

いやしいので(笑)、
菓子折りの包装紙をすぐに開けたら、
「御礼」と書いてある封筒が。

中には、千円入っていた。

菓子折りを断るのは、
無粋かと思うので、受け取るべきかと思ってたけど、
お金は、ちょっとな……と思う。

家の電話番号は知っているけれど、
だからといって、わざわざお返しするのも、
またこれ、スマートじゃないよなぁ、と、
苦々しく思う。

給料日前で、ちょっと苦しくて(笑)
ちょっとゆれたりしたけれど、
お財布には入れず、
結局、夫には秘密の、
ポストの貯金箱に折りたたんで落とす(内緒だよ!)

こんなことがあったということさえ
忘れたある日に、
小銭がたまって、貯金箱を開けたとき、
「あれ?お札なんか入れたっけ!?」と、
ラッキーを拾うために(笑)

最新の画像もっと見る