あそこのスーパーで仕事をしたのは、
過去2回あった。
1回目は、パンの試食販売で、
2回目は、パンの品出し・陳列で。
2回とも、マネキン業に復帰して、
まだ回数をこなしていない時期にした仕事だった。
1回目のパンの試食は、
間違えて食パンをコゲコゲにしてしまい、
焦げ臭い匂いをスーパー内に漂わせたりした。
そのことを申し訳なく思い、
そんなに日を空けず、もう一度、
そこでの仕事を引き受けて。
だが、2回目の仕事は、
その時が初めての
品出し・陳列の仕事で、
失敗ばかりが多くって、
決して名誉挽回とはいかなかった内容で。
その失敗のどれもこれもを、
「まだこの仕事に戻って、日が浅いしな」とか、
「品出しの仕事はこれが初めてなんだから、
先方さんに、申し訳なかったな」
ってところで気持ちをオトして。
だがしかし。経験値が上がっていくと。
あっちこっちのスーパーで、
品出し・陳列の仕事し、要領がわかってくると、
ふつふつと、
「あれは、自分の不慣れさのせいばかりではなかった!」というのが、
わかり、
「あそこのスーパーでの品出しは、避けよう!」と、
いつしか思うようになっていた。
その「不慣れさばかりではない」と言える根拠は、
あそこは、他と比べ、
限界を超えるほどの、
品出ししなければならない品物の量があり、
そして、スーパーの建物のつくり
(狭いだとか、在庫は3Fにあって、エレベーターを
使わなければならないとか)に対する
強い印象の部分からきていた。
その記憶を証明するように、
同じ系列ではあっても違うスーパーで、
あるパートさんと親しくなった時、
「え?○○店でもしたことあるの?
あそこはね、うちのチェーンの中でも、
1、2を争うほど、忙しいところよ~」
と教えてもらったことがあったから。
なのでこの前の、
3月のある日の水曜日の朝に、
「急に申し訳ないんですけど……」
と、
もう二度と行かないと決めた
あそこのスーパーの名を聞いたとき、
最初に脳裏によぎったのは、
その膨大に積み上げられたパン箱の量と、
なかなか来ないエレベーターにイライラした時の感じだった。
★
その水曜日の朝は、ゆっくりと起きていて、
電話を貰った朝9:00前後ですら、
まだパジャマ姿で、
TVなんてつけた直後だった。
派遣元の契約社員のY本君に、
「今日は開いていませんか?」と、
急に聞かれた時は、
「え?いきなり今日ですか!?今からですか?」と驚いたものの、
『ええところやったら、仕事しまっせ~』ぐらいの、
色気づいた気持ちは持っていた。
だが、そのお店の名を聞いた瞬間、気持ちは萎えた。
色気づいていた声が、一気にネバネバとした、
拒絶反応の声色に変わる。
Y本君は、かなり粘って、説得してくる。
あぁ、弱い。弱いからやめてくれ~。
「そもそもね、前日ならともかく、
なんでこんな朝になって、ふってくるんですか?
……ひょっとして、チェンジを言われたんですか?」
苦し紛れに聞いてみる。
「まぁ、そんなところです……」
あんまり触れて欲しくなさそうな口調のY本君。
チェンジというのは、
派遣されたマネキンさんが、
お店の人、または駆けつけていたメーカーさんに、
何らかの理由で嫌われて(?)、
「他の人と交代してください」と、要求されることだ。
どうやらそれが起きたようで。
大体、私は、水曜日は、
お給料を取りに行って、
先の仕事を決めたり、
次の仕事のインストを受けたりするようにしている。
そんなことは、Y本君が、一番知っていることだ。
そのY本君が、私に電話してきているということは、
ある程度の経験値のある人に頼まなければならないこととはいえ、
(なんせ、めったにない、当日チェンジやからねぇ……)
ことごとく、いろんな人に断られてきたんだってことだと、
大よその検討はつく。
やはり、ベテランさんでも、
あそこのスーパーでの仕事は、
決していいものではないんだろうなぁ……。
だからこそ、最後の最後は、心を鬼にすることが出来た。
「すいません……。ぶっちゃけ、全然朝の身支度すら出来てないんですよ。
そやから、今から準備したって、かなり遅く行くことになります。
あんまり遅くなっても、先方さんに悪いでしょ?
お願いですから、他をあたってください」
ってことで、押し通し、Y本君にはあきらめてもらった。
ほっ……と同時に、微かな罪悪感。
★
午後になって、
お給料を取りに行って、Y本君に、
「朝はごめんなさい」と謝った。
Y本君から、結局、
派遣元の女性の社員さんが行ったということを、聞いた。
マネキンさんは、誰も行かなかったんだ……。
「あそこのスーパーって、行ったことありますか?
どんなところですか?」と、Y本君に聞かれ、
いろいろと話す。
「おそらく、普通の顔して引き受ける人は、
品出しの仕事を数回、他のスーパーでしたことがあって、
まだあそこのスーパーでやったことがない人だけだと思いますよ。
多分、『1回したら、もうええわ』って気持ちにさせるスーパーです」
なんて答えたりして。
そのくらい熟知してたのになぁ~と、
その数日後、私は結局、後悔することになる。
仕事がなく、家でダラダラとしていたら、
社員であるK林さんから、電話を貰って、
「あそこのスーパー、絶対行ってちょーだい!!」
と、ものすごい強さで説得され、おれてしまったからだ。
派遣元は派遣元で、
チェンジがあった直後の仕事なだけに、
人選にナーバスだったのだろう。
次の失敗は許されない、とでもいうような。
心を鬼にして、モノゴトを貫いた後って、
例えそれが、後悔しないものだったとしても、
反動って、きたりしませんか?
私はきます。それも、数秒後。
そして、そのほろ苦さを忘れるのにも、
時間がかかるタイプで。
反動の余韻が残っている時に、突かれちゃったという感じで、
引き受けてしまった。
いや、もうひとつ原因はあるな。
品出しの仕事は、お客さんにあまり話しかけなくて済むし、
どこも大概、忙しいので、時間があっという間に過ぎるから、
からだは痛くなるけど、決して嫌いな仕事ではないし、
要領を覚えて、
ある程度自信もあったりするもんだから、
あそこのスーパーの大量のパンの品出しを、
今の私は、どれだけこなすことが出来るんだろうという好奇心が、
決してなかったとはいえない。
また、時間も、16:30あがりだし、
2名での作業だということも、
心を鬼にしきれなかった原因でもある。
そして、引き受けたとたん、その反動で、
憂鬱で暗ーい気分で、数日間を過ごしたんだけど
(ホント、右へ左へと、心は揺れるよなぁ~)。
いよいよ、今日、その、あそこのスーパーへ出陣した。
ホント、気合を入れて、
時給とは関係なく早めに行って。
だがその気合は、パン担当のパートさんを見るなり、
ナーバスさに切り替わった。
すっかり忘れていた記憶が、一気に甦った。
仕事の量や、建物ではなく、
一番のここでの仕事の嫌な原因は、
このパートさん自身だったことが、
ムカムカとした感情と共に思い出されてきたからだ。
その思いは、
「じゃ、品出しして。
○○のパン箱あるでしょ?あの分全部。
置き場所?テキトーでいいよ。値札とか気にしなくていいから。
後で、移動させたらいいんだから。
あぁ、△△シリーズのパンだけは、多めに場所を使って、
目立つところにして」
という、
その鋭角な命令口調と、大雑把な指示を聞いているときから、
顔に滲み出ていたと思う。
この時点では、まだ相手には、
なんとか伝わらずに済んでたようだけど。
……ようやく、今日の出来事としての、
入り口を書き始めましたが、つづく。
(思い出したら、腹が立ってきて、
細かいところから書き始めちゃったよーん!!)
過去2回あった。
1回目は、パンの試食販売で、
2回目は、パンの品出し・陳列で。
2回とも、マネキン業に復帰して、
まだ回数をこなしていない時期にした仕事だった。
1回目のパンの試食は、
間違えて食パンをコゲコゲにしてしまい、
焦げ臭い匂いをスーパー内に漂わせたりした。
そのことを申し訳なく思い、
そんなに日を空けず、もう一度、
そこでの仕事を引き受けて。
だが、2回目の仕事は、
その時が初めての
品出し・陳列の仕事で、
失敗ばかりが多くって、
決して名誉挽回とはいかなかった内容で。
その失敗のどれもこれもを、
「まだこの仕事に戻って、日が浅いしな」とか、
「品出しの仕事はこれが初めてなんだから、
先方さんに、申し訳なかったな」
ってところで気持ちをオトして。
だがしかし。経験値が上がっていくと。
あっちこっちのスーパーで、
品出し・陳列の仕事し、要領がわかってくると、
ふつふつと、
「あれは、自分の不慣れさのせいばかりではなかった!」というのが、
わかり、
「あそこのスーパーでの品出しは、避けよう!」と、
いつしか思うようになっていた。
その「不慣れさばかりではない」と言える根拠は、
あそこは、他と比べ、
限界を超えるほどの、
品出ししなければならない品物の量があり、
そして、スーパーの建物のつくり
(狭いだとか、在庫は3Fにあって、エレベーターを
使わなければならないとか)に対する
強い印象の部分からきていた。
その記憶を証明するように、
同じ系列ではあっても違うスーパーで、
あるパートさんと親しくなった時、
「え?○○店でもしたことあるの?
あそこはね、うちのチェーンの中でも、
1、2を争うほど、忙しいところよ~」
と教えてもらったことがあったから。
なのでこの前の、
3月のある日の水曜日の朝に、
「急に申し訳ないんですけど……」
と、
もう二度と行かないと決めた
あそこのスーパーの名を聞いたとき、
最初に脳裏によぎったのは、
その膨大に積み上げられたパン箱の量と、
なかなか来ないエレベーターにイライラした時の感じだった。
★
その水曜日の朝は、ゆっくりと起きていて、
電話を貰った朝9:00前後ですら、
まだパジャマ姿で、
TVなんてつけた直後だった。
派遣元の契約社員のY本君に、
「今日は開いていませんか?」と、
急に聞かれた時は、
「え?いきなり今日ですか!?今からですか?」と驚いたものの、
『ええところやったら、仕事しまっせ~』ぐらいの、
色気づいた気持ちは持っていた。
だが、そのお店の名を聞いた瞬間、気持ちは萎えた。
色気づいていた声が、一気にネバネバとした、
拒絶反応の声色に変わる。
Y本君は、かなり粘って、説得してくる。
あぁ、弱い。弱いからやめてくれ~。
「そもそもね、前日ならともかく、
なんでこんな朝になって、ふってくるんですか?
……ひょっとして、チェンジを言われたんですか?」
苦し紛れに聞いてみる。
「まぁ、そんなところです……」
あんまり触れて欲しくなさそうな口調のY本君。
チェンジというのは、
派遣されたマネキンさんが、
お店の人、または駆けつけていたメーカーさんに、
何らかの理由で嫌われて(?)、
「他の人と交代してください」と、要求されることだ。
どうやらそれが起きたようで。
大体、私は、水曜日は、
お給料を取りに行って、
先の仕事を決めたり、
次の仕事のインストを受けたりするようにしている。
そんなことは、Y本君が、一番知っていることだ。
そのY本君が、私に電話してきているということは、
ある程度の経験値のある人に頼まなければならないこととはいえ、
(なんせ、めったにない、当日チェンジやからねぇ……)
ことごとく、いろんな人に断られてきたんだってことだと、
大よその検討はつく。
やはり、ベテランさんでも、
あそこのスーパーでの仕事は、
決していいものではないんだろうなぁ……。
だからこそ、最後の最後は、心を鬼にすることが出来た。
「すいません……。ぶっちゃけ、全然朝の身支度すら出来てないんですよ。
そやから、今から準備したって、かなり遅く行くことになります。
あんまり遅くなっても、先方さんに悪いでしょ?
お願いですから、他をあたってください」
ってことで、押し通し、Y本君にはあきらめてもらった。
ほっ……と同時に、微かな罪悪感。
★
午後になって、
お給料を取りに行って、Y本君に、
「朝はごめんなさい」と謝った。
Y本君から、結局、
派遣元の女性の社員さんが行ったということを、聞いた。
マネキンさんは、誰も行かなかったんだ……。
「あそこのスーパーって、行ったことありますか?
どんなところですか?」と、Y本君に聞かれ、
いろいろと話す。
「おそらく、普通の顔して引き受ける人は、
品出しの仕事を数回、他のスーパーでしたことがあって、
まだあそこのスーパーでやったことがない人だけだと思いますよ。
多分、『1回したら、もうええわ』って気持ちにさせるスーパーです」
なんて答えたりして。
そのくらい熟知してたのになぁ~と、
その数日後、私は結局、後悔することになる。
仕事がなく、家でダラダラとしていたら、
社員であるK林さんから、電話を貰って、
「あそこのスーパー、絶対行ってちょーだい!!」
と、ものすごい強さで説得され、おれてしまったからだ。
派遣元は派遣元で、
チェンジがあった直後の仕事なだけに、
人選にナーバスだったのだろう。
次の失敗は許されない、とでもいうような。
心を鬼にして、モノゴトを貫いた後って、
例えそれが、後悔しないものだったとしても、
反動って、きたりしませんか?
私はきます。それも、数秒後。
そして、そのほろ苦さを忘れるのにも、
時間がかかるタイプで。
反動の余韻が残っている時に、突かれちゃったという感じで、
引き受けてしまった。
いや、もうひとつ原因はあるな。
品出しの仕事は、お客さんにあまり話しかけなくて済むし、
どこも大概、忙しいので、時間があっという間に過ぎるから、
からだは痛くなるけど、決して嫌いな仕事ではないし、
要領を覚えて、
ある程度自信もあったりするもんだから、
あそこのスーパーの大量のパンの品出しを、
今の私は、どれだけこなすことが出来るんだろうという好奇心が、
決してなかったとはいえない。
また、時間も、16:30あがりだし、
2名での作業だということも、
心を鬼にしきれなかった原因でもある。
そして、引き受けたとたん、その反動で、
憂鬱で暗ーい気分で、数日間を過ごしたんだけど
(ホント、右へ左へと、心は揺れるよなぁ~)。
いよいよ、今日、その、あそこのスーパーへ出陣した。
ホント、気合を入れて、
時給とは関係なく早めに行って。
だがその気合は、パン担当のパートさんを見るなり、
ナーバスさに切り替わった。
すっかり忘れていた記憶が、一気に甦った。
仕事の量や、建物ではなく、
一番のここでの仕事の嫌な原因は、
このパートさん自身だったことが、
ムカムカとした感情と共に思い出されてきたからだ。
その思いは、
「じゃ、品出しして。
○○のパン箱あるでしょ?あの分全部。
置き場所?テキトーでいいよ。値札とか気にしなくていいから。
後で、移動させたらいいんだから。
あぁ、△△シリーズのパンだけは、多めに場所を使って、
目立つところにして」
という、
その鋭角な命令口調と、大雑把な指示を聞いているときから、
顔に滲み出ていたと思う。
この時点では、まだ相手には、
なんとか伝わらずに済んでたようだけど。
……ようやく、今日の出来事としての、
入り口を書き始めましたが、つづく。
(思い出したら、腹が立ってきて、
細かいところから書き始めちゃったよーん!!)